事業承継税制拡充 | 法律税務研究会ブログ

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 平成30年税制改正で事業承継税制がかなり拡充されました。事業承継税制とはざっくりいうと中小企業の後継者が相続等により会社の株式を取得した場合にはその株式に対応する部分の税金をはらわなくてもよくする制度です。以前からもあったのですが、平成30年改正で手続きの簡略化・要件の緩和・減税額の拡大と大サービスです。

 理由として中小企業のトップの高齢化がすすんでおり、今後10年内に70歳を超える中小の経営者が245万人いるにもかかわらず半数以上が後継者への引継ができていないので、このままでは地域経済に深刻な打撃を与える恐れがあるなどと中小企業庁のパンフには書かれています。

そもそも我が国の企業のうち大企業とよばれる企業は全体の1%以下で99%が中小企業です。さらに87%が小規模企業です。小規模企業とはざっくり言うと製造業等で従業員20人以下、サービス業等で5人以下の企業を言います。

 事業承継税制はこのような中小・小規模事業の継続をスムーズにするという目的の為の制度とされています。

 この制度は平成21年に創設されました。改正・改正で拡充されていますが、その理由の一つとして利用するケースが少なかったことが挙げられます。手続きがややこしい、要件が厳しいなど色々意見はあるのですが、個人的にはこの制度を適用する意味のある企業は結構すくないだけなのではと思っています。

 多くの場合、後継者候補はだいたい身内です。今回の改正で身内以外にも適用できるようになりましたが、他人に事業を譲る社長が少ないのも事実でしょう。仕事柄世代交代の相談を受けますが、事業承継を考えるにあたっては、その会社は継ぐ価値がある会社なのか、引き継ぐ身内に能力があるのか、本当に継ぐ意思があるのかを検討してからで、税金のことは後回しです。

 税金が安くなる制度があるから無理に事業を継続するひとはいないでしょうし、小規模企業で業績があまりよくなければそもそも株に価値がなく、この制度を利用する必要はありません。またそのような状況なら引き継がされるほうもいい迷惑です。

 この制度を有効活用できるのは業績がいい優良な中小企業に限定されるのではないでしょうか。

気になる方は決算書で一株当たりの純資産額をご確認ください。

(山岡 大祐:税理士)