裁判官も「いい忖度」してくれますか? | 法律税務研究会ブログ

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2017年の流行語大賞に「忖度(そんたく)」が選ばれました。国有地を不当に安く売ったのではないか、という問題が国会で議論される中で出てきた言葉です。本来の意味は、「他人の気持ちをおしはかること。推察。」というものであり、いい意味でも悪い意味でもないと思いますが、上記議論の中でマイナスの意味合いで用いられていたことから、忖度という言葉自体にマイナスイメージが付いてしまっているようです。この問題で悪い忖度があったのであればその責任追及、再発防止は図られないといけません。

会社員だった時代に海外で仕事をしていたことがありますが、こちらがこうしてほしいと思っている仕事について、日本人は何も言わなくてもあるいは一から十まで言わなくても先回りしてやってくれていることが珍しくなかったですが、外国人の方だとそうもいかないことがありました。これは、文化の違いや仕事に対する意識の違いなど様々な理由があるとは思いますが、日本人はいい意味で忖度して動いてくれることも多いと思います。

ただ、裁判になるとそうもいきません。例えば、契約トラブルの場合、当事者がどういう趣旨でその契約を結んだのか、ある契約条項はどういう意図で盛り込まれたのか、ということが問題になることがあります。そこで、「自分はこう思っていたんだ、こういう意図で条項を盛り込んだんだ」、と後から主張しても、その主張をそのまま裁判官が認定してくれるとは限りません。まずは、契約書にどう書いてあるかが重要です。書いていないことを主張した場合は、契約書に書いてある内容、契約前後の状況などさまざまな事情を考慮して、その主張が認められるかが判断されます。裁判官が自分に有利に推察してくれれば、いわば忖度してくれればいいですが、必ずしも有利な判断がなされるとは限りません。

ですから、契約後のリスクや紛争を防止するために、重要な内容は契約書に分かりやすく記載しておく必要があります。信頼できる相手だから大丈夫だろうと楽観視していると大きなトラブルにつながるかもしれません。そのために、契約を結ぶ前に弁護士に相談することをおすすめします。世の中「いい忖度」ばかりではないですから・・・

(山津 源和:弁護士)