ある秋の夜長に | ラフラフ日記

ラフラフ日記

主に音楽について書いてます。

宮本浩次が太田裕美の「木綿のハンカチーフ」をカバーした。

宮本浩次は男と女どちらの気持ちに共感、感情移入するんだろうと思いながら聴いていたが、最後までどちらかわからなかった。宮本浩次は凄い歌手なんだなぁと思った。

でも、どちらかと言えば、女性寄りに聞こえたかも知れない。それは、私が女性だからなのか、オリジナルが女性歌手だからなのか、わからないけれど、結構驚きのことなんじゃないか。
だって、宮本浩次がカバーするとしたら、男側の心情に比重が来るんじゃないかと思いそうだから。

そこでふと思ったのが、これがエレファントカシマシでカバーしたなら、もっと男っぽいカバーになっていたかも知れないってこと。
ただ、エレカシでも近年、女性っぽいと言ったら良いのか、それまでにない感じの「わたし」の歌が増えてきてると感じていた。
そこにもソロへの発露があったのか。

凄いな。最近は特に「多様性」と言われるけれど、それならば、それと同じくらいかそれ以上に、ひとりの人間の中にもいろいろな面があることを認めなければ一歩も動けないんじゃないか。
「いろんな人がいる」という多様性ではなく、「ひとりの人間の中にいろんな面がある」という多面性こそ、今の時代に必要なんじゃないか?そこに乗り越える鍵があるんじゃないか?と身をもって訴えかけてくる宮本浩次の音楽。

「木綿のハンカチーフ」のカバーは最新シングル『P.S. I love you』に収録されていて、いくつかのテレビ番組に宮本浩次は出たのだけど、ソロでも出て、バンド(エレファントカシマシ)でも出て、バンドでは代表曲、ソロでは新曲を歌い、さらには、カバー曲も歌う。そういう人面白いなぁって思ったし、音楽や人間の多面性を見せてくれる。

この「木綿のハンカチーフ」のカバーを、エレカシからソロへと旅立つ心情に重ねている人もいたけど、ソロからエレカシへと旅立つ心情にも重なるんじゃないか? それは過去か未来か。凄いな、音楽は時空も越える。

******

横山健が「宮本浩次」についてのコラムを書いてくれた。

『横山健の別に危なくないコラム』 Vol.104
https://www.pizzaofdeath.com/column-ken/vol-104/

「ブルーハーツに夢を見させられて、エレカシに首を絞め殺された」という横山健の印象的で象徴的な言葉。

エレカシ30周年のころのインタビューで、デビュー当時ヘヴィでハードな音を目指していたのに「パンク」と言われることが意外だったと宮本浩次は語っていた。

確かに、パンクとハードロックは相容れないイメージが私の中にもあって、私はエレカシは好きだったけど Hi-STANDARD は聴いていなかった。
セックス・ピストルズとかのパンクを好きな人はディープ・パープルとかのハードロックをバカにして、またその逆も…というようなイメージ。
でも、キンクスにはそのどちらもあるぞ?さらには「ローラ」もあるぞ?というようなことを前にも書いたけど。→ 清らかな水は流れ続ける

そして 30年経ってはじめて明かされた? エレカシは、ブルーハーツや Hi-STANDARD、グリーン・デイのような形式を封印していたと。そして、「Easy Go」(2018年)でその封印を解いたと。

相容れないと思っていたけど、宮本浩次はブルーハーツや Hi-STANDARD を意識していたし、横山健もエレカシを聴いていたんだ。

そこから宮本と横山が出会い一緒に音を鳴らすってすごいし、やっぱりそこにロックの爆発があるんだなぁ。
(それはだから、私が「浜崎あゆみを好きになってしまった」というのと同じなわけなんだけど)

それにしても、尊敬や畏怖を込めて、エレカシのメンバーになるのは無理!「ソッコーで辞めます」と言っていた横山健を「またあの人の隣で、ギターを弾きたい」と言わせちゃうんだから、ソロって(あるいはエレカシって)凄いなぁ。

そして、横山健のコラムを読みながら、エレカシは「抗う」と「観念する」を繰り返しながら大きくなってきたんじゃないかって思った。(それこそ「地元のダンナ」の歌詞のように)
それで言えば、私に足りないのは「観念する」なのかも知れないとふと思う今日このごろ。っと、これは余談だ。

******

10月2日、浜崎あゆみの配信ライブがあった。

この日はあゆの誕生日。月が奇麗で嬉しくて私も写真を撮ったりしていた。

そしたら宮本浩次も同じ日にこんなインスタをあげていてさらに嬉しくなった。

この投稿をInstagramで見る

#宮本浩次 #宮本独歩

宮本浩次 hiroji miyamoto(@miyamoto_doppo)がシェアした投稿 -



そして配信ライブ。
これは、埼玉 2公演を開催した後、中止になってしまったツアー “サイゴノトラブル” であり、また、2018年10月からスタートした「TROUBLE TOUR」の最終章、完結編としてのライブ。

ayumi hamasaki TROUBLE TOUR 2020 A ~サイゴノトラブル~
https://ameblo.jp/laugh-rough-blog/entry-12598704430.html

“強く強く願うことで
全ては始まって行くんだ
信じる事それが
願いそのものさ

何を待っているの
期待かける事と
願いかける事は
似てるようでまるで
違うもの”


この時世、「WE WISH」がとんでもなく響いてきた。

でもその前にちゃんと「凍えそうな心」とか「心がもうもたない」だとか「この長い夜は明ける事はない」だとか歌われているからかな。

「Tell All」はいつだって個人的な心に響いてくる。

そして、最後の「winding road」。
2月の埼玉公演ではあゆはこの曲を自分のために歌っていると感じたし、それに胸を打たれた。
でも、このときの「winding road」は自分のためだけじゃなく、みんなのためにも歌っているように聴こえた。これからも胸を張ってこの道を行くのは私だけじゃない。あなたもなんだと。
最後、ダンサーがそれぞれの方向を見つめながら、飛び立って行く鳥を一羽一羽見守っているようだった。「これが僕の選んだ道」というのは、あゆだけじゃなく、みんなそれぞれ、あなたにも、わたしにも言えるはずなんだと。

そこからの「MY ALL」。

“ひとりじゃない” という全力のメッセージを感じた。言葉だけじゃなく、実感を伴って。

凄いね。今まで歩んで来た道(winding road)があるからそれを伝えられ、伝わってきたんだ。

******

10月4日、エレカシ野音。

まず、お客さんが入っていることに感動してしまった。(自分はチケットが取れず、配信で観ていた)

そして、

こんなエレファントカシマシを待ってたー!

と叫びたくなってしまった。

「DEAD OR ALIVE」(うわ!今このときにぴったり!)や「地元のダンナ」(全人類のテーマ曲!)で心を掴まれ、「何も無き一夜」に泣きそうになり、「無事なる男」に一度ほどけ、「晩秋の一夜」「月の夜」に涙し、胸が詰まるほどのその美しさに果て、「so many people」のダイナミックさ、そして、「男は行く」で昇天、「待つ男」で炎上。まさに待つ男を待っていた。溢れる熱い涙。

配信で観てたのに、まるでライブを観た後のような余韻が体にあるのは、そこにお客さんがいたからなんだろう。宮本の叫びは、そこにお客さんがいなければ出なかった叫びなんじゃないか?というシーンが何度かあった。最初に出てきて、にこっとなった宮本の笑顔。あれはお客さんの姿を見たからなんじゃないかなぁ。

そしてこれは、あゆの配信ライブを観たすぐ後だったからなのもあって、いや、あゆが二人目を妊娠していると知ったからだろう、エレカシの宮本を観ながら、「ああ、これは敵わない」と思ってしまった。羨ましいと思ってしまった。体の全部を歌にかけることができる。

いや、それは凄いことだし、誰にでもできることじゃない。それだけ諦めてきたり犠牲にしてきていることもあるだろう。でも、この日はそんなことを思ってしまった。

もちろん、あゆだって全てを歌にかけてきたし、かけていると言えるのだけど、まぁこんなことは言いたくないけど、「男と女の違い」みたいなものを感じてしまったんだよね。

でも、それをネガティブに受け止めたのではなくて、そんなことを感じられるほどに、宮本浩次も浜崎あゆみも凄い、凄い景色を見せてくれるってことで。この日はエレカシを観て「敵わない」と思ったけど、それは、ああ、あゆにはあゆにしか表現できないことがあるんだなと発見することでもあったから。

なんて言うのかなぁ、宮本浩次を見ながら、この人、もしかしたら、あゆより孤独なんじゃないか? 実は、あゆよりプライベートは謎に包まれてるんじゃないか?なんてことを思ったの。
(あれ?本人の望み通り、宮本浩次がスーパースターになる日も近い? いやいやもともと私にとってはとっくにスーパーヒーローなんだけど!)

いやいや、もともと宮本浩次の方が浜崎あゆみよりよっぽど孤高だよ!とエレカシファンは言うかも知れないが(それは私もわかる!あゆを好きになる前からエレカシ好きだったし!だからこんなこと言う自分に驚くし!)、あゆファンなら、あゆより孤独な人なんていないんじゃないか?ってそんな気持ち、わかってもらえると思うから! 孤独っていうか、戦ってる?

そして、あゆが二人目を妊娠したと書いたけど、あゆがこんなインスタを投稿した。

この投稿をInstagramで見る

もう20年以上の付き合いになる大家族が集まってお誕生日を祝ってくれました🎉✨このメンバーでいる時だけは、肩書きとかそーゆーの全部忘れてただの歩に戻れる☺️いつも息子ちゃんと2人でちょこんと座ってるから、最近はみんなに「おチビ2人」ってまとめて呼ばれてる笑  今回の私の妊娠について、お会いした事もありませんが、ご丁寧にオリジナルな意見を下さったり、産まれてくる子供の事を心配して下さったり、ありがとうございました。  私はこれからもプライベートに関しては自分の物差しで生きていきます。幸せの基準も形も、自分と家族で決めて選んで生きていきます。 それがその他多くの方々とは違ったとしても構わないと思っています。 幸せの形は人それぞれでしかなく、当の本人達にしかわからないもの。  いつも支え、応援して下さる皆様の期待に応えられるアーティストであり続けられるよう、これからも歩みを止めずに進み続けたいと思っていますので、改めて‼️よろしくお願いします‼️‼️‼️

ayumi hamasaki(@a.you)がシェアした投稿 -



こんなの読んだらさ、5年前にこんなことを書いてた自分を誉めたくなっちゃうじゃんか!

Shape of love ~愛の不確かさと確かな想い~
https://ameblo.jp/laugh-rough-blog/entry-12075012443.html

何度でも、「愛の形」を発明し続ける。

「愛の形」の欠落から超越へ。



(2020年、秋)