ワン・フォー・ザ・ロード [DVD]/キンクス
キンクスのDVD『ワン・フォー・ザ・ロード』を見た。「動くキンクス」を初めてちゃんと見たと思う。
レイ・デイヴィスってこんなに激しく動くんだ!
カッコ良いー!
私勝手に、おとなしくて、あまり動かない印象を持っていたんだけど、こんなに激しく動くとは。
でもまぁ、そんなことに驚いてる暇もないくらいに、カッコ良い。
もう冒頭の
「数多くのバンドが現れ、去っていく。でも、ロックンロールは永遠に不滅だぜ!」
からメチャクチャかっこ良い。飛ばしまくり。
パンクじゃん!
正直今まで、キンクスに対して「パンクの兄貴的存在」と言われてもピンと来なかったんだけど、これ見たら納得せざるを得ませんでした。すみませんでした。
勝手になんか、牧歌的なイメージを持っていたよ。
もう根底に、ど真ん中に、ロックンロールがある。うねってる。渦巻いてる。
これだよ、これ!
って叫びたくなる。
ああ、このリフのカッコ良さ!!
ロックの “永遠に解けない謎” だわ!!
キンクスがこんなにロック、いや、ロックンロールだったとは。
でも、考えてみりゃあ、当然のことなんだよね。私は何を聴いていたんだか。
そりゃあ、フーもデヴィッド・ボウイも XTC もブラーもリスペクトするわ。
これぞ、イギリスのロックじゃ!って感じだわぁ。
「人生と音楽って、結局同じことだよ。楽しんでいたいなら、前進して成長していかなくちゃ。流れの止まった水は臭うんだ。清らかな水は流れ続けるだろ」
という、ジョン・パワー(キャスト、ラーズ)の粋な言葉を思い出した。
キンクスのロックの水は流れ続けている。キャリアの長いバンドだけど、少なくとも、ここに収められているキンクス(の水)は、凄い勢いで流れてる。ロックではなくロックンロールっていうのは、こういうことを言うんだろうなぁって、カッコつけたことを思ってみた。
だけど、だけど、なんて言ったら良いのかな、「カッコ良すぎないところ」が良いんだよね。
さっき「パンク」って書いたけど、DVD についてた座談会で、「パンクの兄貴的なキンクスがいる一方で、ヴァン・ヘイレンに代表される新世代のハード・ロック、ヘヴィ・メタルの兄貴としてのキンクスもビデオにいる」って言及されてて、なるほどぉって思った。
ヴァン・ヘイレンがカヴァーした「ユー・リアリー・ガット・ミー」って有名なんだよね? 私まだ聴いたことないかも。後で探してみよう。
確かに、レイ・デイヴィスが “パンクの兄貴” って感じだとすれば、そのレイの弟のデイヴ・デイヴィスはギター野郎、“ハード・ロックの兄貴” って感じ。
もちろんそれはイメージでしかないんだけど、例えば、セックス・ピストルズとかクラッシュとかのパンクと、ディープ・パープルとかのハード・ロックって、相容れない感じがするというか、パンク好きの人は、「ハードロックなんてだせえよ!パンクの方がリアルだぜ!」とか言ってそうなイメージがあって。で、ハード・ロック好きの人は、「パンクなんて下手くそだし、つまらない!」とか言ってそうというか。いや、あくまで私の勝手なイメージなんだけど、そういうのがあって。
今となってはそういう偏見みたいなものもなくなってきてるのかも知れないけど、私は別に、そういう対立関係みたいなものを否定的に捉えているわけではない。だって、そういうのも含めて音楽が生み出すうねりなわけで、楽しいんじゃないかなって。もちろん、それを乗り越えるような音楽が現れなくなったらつまらなくなるけど、そういうものがあるからこそ、乗り越える喜びも生まれるって思うから。そしてまた、そこから摩擦が生まれてっていう。
キンクスの話に戻すと、そういう、対立するような要素が普通に同居しちゃってるのが面白い。
これもまた座談会で語られてるんだけど、「さらにエライのは、パンクだヘビメタだ、その一方ではちゃ~んと『ローラ』なんかもやってるとこ」って言ってて、そうなのよ、ぐいぐいロックンロールしてるくせに、「ローラ」のイントロでじらす小芝居があったり(お馴染みみたい)、ベタ~なコール&レスポンスがあったり。
そういった、いろ~んな要素がありつつ、それがごくごく自然に行われてて、パンクだのヘビメタだのといった雰囲気に負けてないんだよね。負けてないっていうか、そういった雰囲気的なものを寄せつけない、なぎ払ってしまう感じ。だから全然、スタイリッシュじゃないんだと思う。でもそこに、「流れ続ける清らかな水」を感じるんだよなぁ。だから、“臭わない”。
きっと、いろんな要素が同居してるけど、それが目的ではないんだね。
ま、何しろ、「曲が良い」から。
前にも書いたと思うけど、曲が “美しい” んだよなぁ。
ストーンズみたいに大規模な存在じゃないかも知れないけど、どこにいたって、清らかな水は流れ続ける。
はぁ、キンクスのライヴ、観てみたいよーーーっ!