浜崎あゆみの、音楽にコトバを載せるセンス | ラフラフ日記

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主に音楽について書いてます。

近田春夫の『考えるヒット』を読み返してたら、浜崎あゆみの『M』についてこう書いてあった。

とにかく、こうしたミディアムテンポのキック四つ打ちは、本来、日本語での歌唱となかなか折り合いの悪いのが相場なのに、自然に自然に時間が流れてゆく。浜崎あゆみの、音楽にコトバを載せるセンス、そして抜きん出たタイム感。流して聴いていると気付かないが、ちょっとシビアにチェックすると、その表現者としての「本物」ぶりにおどろかされる。
(近田春夫『考えるヒット』 2001/1/18)

“浜崎あゆみの、音楽にコトバを載せるセンス”

これもうずっと前から、もっと評価されて良いのではないか!?とか思いながらも、十分に語ることができずにいたことじゃないか。
これを読んで、そうだよ!これだよ!もっとこれを語らなければ!私は何をやってるんだ!……と思った(笑)。

歌詞が何を語っているかとか、その内容や意味よりも、「音楽にコトバを載せるセンス」
浜崎あゆみはこれがまず、抜きん出ているのではないかと。

近田春夫はミディアムテンポ~と書いているが、確かに、勢いでごまかせないし、音に間(ま)がある分、ゆったりした曲の方が「音楽にコトバを載せるセンス」、特に日本語は、それが問われるかも知れない。

「M」だけでなく、「YOU」、「TO BE」、「Moments」・・・・・・どれも注意深く聴いてみるともうそれしかないというか、発音したときの感触とメロディーの織り成すそれが、最初からその言葉を持って生まれてきたような、かつ、そこには意味も含まれ、「音楽にコトバを載せるセンス」と同時に「コトバに音楽を与えるセンス」も感じる。
「CAROLS」の “しっろい~” は、もうそれしかありえない、「雪が~」とかじゃダメなのだ。

亀田誠治は「Voyage」をこう評した。

いつもながら日本語の語感を大切にした彼女の詞のスタイルは今回も健在で、サビの一行目の「僕たちは幸せになるため」の「シアワセ」の「ア」に最高音を当ててくるあたりの作詞のセンスは天下一品。自分の声の “オイシイ” 部分と、言葉とメロディーの “ツキ(=相性)” を知り尽くしているね。
(亀田誠治『ヒットの理由』)

しかし、近田春夫も書いているが、浜崎あゆみのこの「センス」は、意識して聴かないと気付かないところがあるように思う。一見(一聴)、奇抜な言葉や文学的な言葉を使っているわけでもなく、ごく普通のありふれた言葉で歌っているし、それこそ「自然に自然に時間が流れてゆく」からだ。その、気付かせないところにこそ、浜崎あゆみの「本物」ぶりがあると思う。

それでは、私が思う、浜崎あゆみの「音楽にコトバを載せるセンス」の細か~い部分を紹介したい!!

「my name's WOMEN」 (2004年) https://youtu.be/73c_CR17JyY

私達着飾っただけの
人形なんかじゃないから

私達夢ばかり見てる人形なんか
じゃないってば


この “から”“てば” の心地良さ。
これで私は天才!!と思いましたよ。

「crossroad」 (2010年) https://youtu.be/AhYrbwneixA

傷つかない様に強がる事だけで

変わって行く事変えて来た事


という部分が、最後に再び繰り返されるとき、少しだけ言葉が増えます。

傷つかない様に強がる事それだけで

変わって行く事とか変えて来た事とか


サビがもう一度繰り返されるとき、ほんのちょっとだけ文字が増える。この「ほんのちょっと」がすごく効いてる。想いが溢れ、まるで自然にそうなってしまったかのように聴こえるけれど、何かをキャッチしなければこれは書けない。

そして、ミディアムテンポの曲じゃなくても、例えば、「SURREAL」や「until that Day...」のように、早口(?)で歌うところでも、言葉が流れ去っていかないというか、力を失わない。

そして、遂に浜崎あゆみは、こんな曲にも “ど” 日本語を載せてしまう。

「Bold & Delicious」 (2005年)



これは、スウィートボックスの GEO 作曲だから、まぁ、音楽的にはいわゆる「洋楽」になるわけだよね。その「洋楽」に浜崎あゆみは、“思慮深く遠慮深く” とか “やらぬ悔いならやった悔い” とか “意味不明” とか載せちゃうわけですよ。(まぁ、“Bold & Delicious” は英語だけど)

ちなみに、これがスウィートボックス版。



GEO 提供曲はこんなのも。

「Ladies Night」 (2006年)



そして、スウィートボックス版。



どっちが自然なんだかわからなくなる。
もはや、どっちが優れてる劣ってるではない、と思ってしまう。

他にも GEO 提供曲はあるので、聴き比べてみると面白いと思う。

そして、『Rock'n'Roll Circus』(2010年)というアルバムに私は度胆抜かれる。

これ、どれもすごいんですけどね、「Lady Dynamite」「Sexy little things」

よくこんな言葉を歌にできたなのオンパレード。
(例: 「その武勇伝って尾ひれも背びれもついてもはや原型とどめてないとかなんでしょう」「そういうのって典型的な自己満足だとかって呼ぶものなんじゃない?」)

「Lady Dynamite」
http://www.uta-net.com/user/phplib/Link.php?ID=93409
「Sexy little things」
http://www.uta-net.com/user/phplib/Link.php?ID=93408

それもあんな曲とサウンドで。

でもちゃんと、“ほら昔から” とか “よって” とか “なのに” とか “坊や達” とか、“演説大会” って言葉にすら、音楽的な気持ち良さがある。



思えば、「Duty」とか物凄いよなぁ。あの曲にあの歌詞!!

そして、最新アルバム『Colours』(2014年)。

ずっと日本語で歌詞を書くセンスを発揮してきた浜崎あゆみですが、結構英語が出てきて。「XOXO」なんて半分くらい英語なんですが、そこでぽっと出てくる日本語にやはりセンスを感じてしまうのです。

“朝がくる頃にはリアルを受け止めなきゃね”

これがメロディーに載ったときのグルーヴね。(ころ~るを~)

「Lelio」なんて、ほとんど “lelio lelio leli lelio dj” しかいってませんが、大体その “Lelio” って響きがいいし、そこでもしれっと出てくる日本語、

“具体的になに”

にゾクゾクするものを感じます。

ちなみに、「XOXO」も「Lelio」も海外プロデューサーによる曲。

ああ、これについては、まだまだ書き足りない!!