言の葉 -latent word- -3ページ目

負けないよう

負けないよう。

しっかりと立って。


負けないよう。

真っ直ぐ前を見て。


負けないよう。

一歩を踏みしめて。


負けないよう。

時々、後ろを振り向く。


負けないようにと。

頑張っている昨日の自分を見て。

無駄にしないよ、してたまるか、と。

唇を噛み締め、誓い。

今日も今日を進む。


明日は。

今日の自分を見て。

明日を進む。


明後日の私も、その先の私も。

きっと、ずっと。

海へ。

深く深く潜る。


いつもと見え方の違う視界の中、潜り続け。

地面に触れた所で、身体ごと空を見上げる。


キラキラと反射する水面を、水の中から見上げ。

浮力に任せて、そこへと進む。


息苦しいと感じるのに。

身体は軽く、気持ちもいい。


…ああ、いつかこんな風に浮上出来るだろうか。


潜って、潜って。

底に触れたら。

私は空を見上げられるだろうか。


苦しくても、どんなに苦しくても。

貴方を忘れていけば。

重い気持ちを抱えていた身体は軽くなってくれるだろうか。


水面から顔を出した瞬間。

いつもの空気を新しく感じながら。

そんなことを考えた。


何でも恋に結びつく自分に苦笑いしながら。

貴方のもの

爪も。

指も。

髪も。

腕も。

息も。

唇も。

声も。


見える所全て。


貴方のものだったらいいのに。


生きている理由も。


貴方のものだったら。

いいのに。

チャンス

貴方に会えるチャンスを。

他の人に奪われた時。


…叶わない恋なら、会えないままでいい。


そう思う私が、ホッと息を零した。


会いたいと切に願う私の横で。

愛して

愛して。

愛して。

愛して。


…愛して。


頭の中で繰り返している内に。


愛して”いる”のか。

愛して”欲しい”のか。


一瞬、判らなくなってしまった。

聞いてくれる?

話したいことがたくさんあるの。

言いたいことがたくさんあるの。


ねぇ、聞いてくれる?


聞くだけでいいから。

何も答えはいらないの。


私の中に在る たくさんのたくさんの言葉を。

聞いてくれる?


そして。

貴方のことが好きだと気付いてくれる?


全ての言葉が「好き」に繋がっていることに。

気付いてくれる?

花火

細く。

だけど、途切れることなく。

一直線に昇り。


暗闇に咲く。


無数の小さな光が照らしても、闇でしかなかったそこに。

痺れるような音を立てて。

眩い花を咲かす。


数回の瞬きの間だけ。


流れるように消えてしまった後に残る闇は、一層暗く。


恋は打ち上げ花火のようだと。

誰かがそう例えたのを思い出し。


貴方の声が聞きたいと。

次の光を待たずに、目を閉じた。


どうか、どうぞ。

私の中に花火を打ち上げて下さい。

何度でも、何回でも。


暗闇なんて怖くないから。

身勝手な

貴方の幸せを願っているくせに。

今、貴方が幸せであることを許せない。


ああ、何て身勝手な。


だけど。

貴方の不幸は願えない。

口が裂けても、声にも言葉にも出来ない。

寄り道

貴方以外の男の人を見て。

「カッコイー」とか 「優しそう」とか 「頼り甲斐あるな」とか。

よろめくような感情が沸き起こる時があって。


でも。


「貴方なら良かったのに」と。

目の前にいる人に貴方を重ねている自分がいる。


寄り道をして。

このまま貴方へと進む道を途切れさせてしまえばいいのに、と。

思うのに。


寄り道も出来ない。

覚えてしまった

なぞる。

ゆっくりと。


…平坦で無機質でしかない貴方の顔を。


指先はそんな貴方の顔をはっきりと覚えてしまった。


立体ではないそれを。

温もりなんてないそれを。


写真でしかないそれを。


貴方なんかじゃないのに。

覚えてしまった。