言の葉 -latent word- -18ページ目

夢の中

貴方の夢を見た。


私と貴方の間に距離はなく。
友人でも、恋人でもなく。


ただ、普通に喋って、笑って。


それが当たり前だというような一時を過ごしていた。


…正しく夢のような一時。


ああ、これは夢だと自覚した瞬間。
その背中に抱き付いて泣いた。


私に笑い掛ける顔も。
私に話し掛ける声も。
抱き付いた背中の感触も。


全部、偽物。


だって、私はそんな貴方を知らない。


…勝手な想像で出来上がった夢。


「どうしたの?」
そう聞いてくれた貴方の声が忘れられない。

「大丈夫?」

想像でしかない貴方が忘れられない。


私だけの貴方が…、忘れられない。


何て酷く、甘く、残酷な夢だろうか。

ねぇ

ねぇ、一言でいいから。

ねぇ、何か言って。

ねぇ、お願いだから。

ねぇ、私がみっともなく泣き出す前に。


ねぇ、聞こえてる?


声の届かない距離にいる貴方に。


ねぇ。

頑張って

片想いの理なんてなくて。
みんな同じのようで。
みんな違う。

側に行く術がある人。
側に行く術がない人。
話す術がある人。
話す術がない人。

”ない”人は、”ある”人が羨ましくて、妬ましくて。
それで十分じゃないかと。
それはそれで幸せじゃないかと。
自分と比べて卑屈になる時があって。

交わす視線や交わせる言葉に、愛の意味はなくとも。
やはり羨ましくて、妬ましくて。

…だけど。

交わす視線や交わせる言葉に、愛の意味がないということが。
どんなに苦しいことか。
どれだけ苦しめられることか。

”ある”人のその苦しさは、”ない”人には判らない。

”ある”人も、”ない”人も、両方に当てはまらない人も。
つい、自分を重ね合わせたり、比べてしまったりするけれど。

本人がしている片想いの苦しさは。
本人じゃないと絶対に判らない。

例え、状況が似ていても、恋心まで全く同じわけはなく。
似ていると思っても、本当はどこにも似ている所なんてなく。

貴方がしている恋は、貴方にしか出来ない恋。
貴方だから出来る恋。

…だから。

貴方の恋は私には判らない。

貴方の恋に涙が出ても。
悲しいかな。
私には貴方の恋の苦しみ全部は判らない。

判らないけれど。
頑張って、と、声が出た。


頑張っていることも。

頑張ってもどうしようもないことも。

知った上で。

無責任な言葉だと知っているのに。
他の言葉が見付からなくて。

…頑張って。

繰り返し、繰り返し、そればかりが声になった。


…頑張って。


貴方に励まされた分、僅かでも貴方に返せますように、と。


…頑張って。

私も頑張ると胸で囁いて。


いつか。

いつか。


お互いの恋に穏やかな終止符が打たれますよう。

昔の人

私をめちゃくちゃにした人。

私の人生をめちゃくちゃにした人。


思い出すのはそればかり。


愛してる、も。

気持ちいい、も。

イク、も。


全部、一気に教えてくれた人。


人を心底憎むことも。

教えてくれた人。


…未だ綺麗な思い出にはなれない人。

私だけが

不器用な貴方がいた。


言葉を選別するのが下手。

伝えたいことの半分しか伝わらない。


そんな不器用さ。


私は。

私だけは。

言いたいことが判るよ、と。

伝えてあげたい気持ちで一杯になって。

愛しくて愛しくて、堪らなくなって。


…自己嫌悪に涙が出た。


何を自惚れているのかと。

私だけが判っているわけじゃないと。


彼の友達も。

彼の家族も。

みんなみんな、彼の言いたいことは判ってる。

判ってるから、側にいる。


そんな当然のことさえも見失ってしまう今の自分が、イヤ。

ココにいます

貴方を好きな人がココにいます。


見えていないと思うけれど。

聞こえていないと思うけれど。


私を知らないと思うけれど。


貴方を好きな人が。

貴方を想って泣く人が。


ココにいます。

会える

まずはダイエット。

その次に新しい服を買いに行って。

マスカラも口紅も全部新しくして。

可愛い色のマニュキュアも買って。

美容室に行って。


最後に貴方に渡す言葉を捜す。


今度こそ。

今度こそ。


私の声で、貴方に伝えられますように。

メール

一文字。

また一文字。


キーボードを叩く度に増えていく文字。


何が言いたいのかも。

何を書こうとしたのかも。

既に判らなくなっている文字たち。


モニターの中で渋滞する文字にフと笑って。


最後に「貴方が好きです」と書いて。


…全文削除した。


送り先にメールアドレスのないメール。

送信を押してもどうせ届かない。


どんなに書いても。

何度書いても。

送る勇気なんて、ない。


渋滞するほどに書かれる文字たちは。

その役目を果たすことなく。

今日もまた殺される。


濡れた目を擦りながら笑う臆病者に。

好きな所

顔が好き。

身体が好き。

声が好き。


見えている所は全部好き。


努力家な所が好き。

考え方が好き。

物の捉え方が好き。


見えない所も全部好き。

本当は嫌いな所もあるけれど。

それは一生誰にも言わない。


…貴方の全部が好き。


それが今の私の真実だから。

冷めていると

当たり前の毎日が過ぎていって。

その中に貴方はいなくて。


新しい出来事があって。

古い出来事も交差して。

やっぱり貴方はその中にいなくて。


もう冷めたのではないかと。

もう貴方への気持ちは自分の中にはないのではないかと。


思っていたのに。


たった一つの繋がりに呼び戻される。


気持ちが、一気に。

貴方に引き戻される。


冷めたと錯覚したままで良かったのに。