ポントルソンの駅の改札を出ると2人組みの東洋人のカップルがバス停にいた。
モン・サン・ミッシェル行きのバスの時間を見ると、最後の出発から一時間近く過ぎていた。日本人ではない東洋人の女は携帯電話を取り出し英語で
「ちょっと待ってね、そこに書いてあるタクシーに電話してみるわ」
とユンソナ似の彼女は連れの男性に韓国語らしき数字を聞きながら番号を押した・・・
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「繋がらないみたい・・」
美しい弧を描く眉をひそめながら困った顔をした。
「私たちが探してくるわ」
と礼が韓国語で言うと俺の手を引っぱった。
在日韓国人である彼女は、韓国語や中国語を母国語のように話し英語はまあまあ、フランス語は日常会話程度くらいはこなす女だった。両親は神奈川県内に13店舗を持つパチンコ屋のチェーン店を経営して財を得た成金の娘。小さい頃から写真が好きで愛用のキャノンのF-1を首から提げたちょっと気の強い礼・・・
駅の近くのカフェに入ると彼女はなにやらフランス語で店のマダムにタクシーを頼んでくれた。マダムが赤い壁掛け式の電話のダイヤルを回しウインクをすると礼が顔をちょっとだけ赤らめる。
「10分後にお店の前にきてくれるらしいわ」
マダムにお礼を言い、店を出て韓国人カップルを呼びに行く
「礼、君も行き当たりばったり?」
「そうよ、それも神の思召しよ」
と言うと腕を絡めてきた。
ユンソナ似の女とヨン様を意識した冴えない男にあいのりを申し出ると、二人は握手を求めながら英語で言った。
「僕の妻のチェ・ジウ、僕はヨン様と呼んでください」
ユンソナ似のチェ・ジウが眉をしかめて笑うと、スラップスティックなソープオペラ“冬のソナタ~モン・サン・ミッシェル編”の幕が開いた・・・・