午前10:38に目が覚めた。
ゴロワーズに火をつけて、礼の肌理細かい肌を擦る。
つけっぱなしのラップトップでFree TEMPOのDreamingをかけて、彼女のキュートな鼾と一緒に聴く・・・



艶やかな皮膚の感触に浸っていると、肉欲に踏ん張ることの出来ない我が放蕩息子は旅立ちの時を迎えていた。

まだ眠っているオレンジに狂喜の接吻と陶酔の乱舞を・・・
・・・放蕩息子は約束の地へ・・・


afe系のハウスを聴きながら、二人は互いの体で旅をした。

五感のガイドブックを頼りに、いろんな土地を・・・いろんな手段で・・・



狂っていたのは時計だけだった
礼はバスローブ姿でシャンパンを手酌で注いだ。
彼女は、マダム・クリコによって美しく完成された液体を一気に飲み干すとGainsbourgのJe t’aim...moi non plusをかける。



そしてオレンジピールのチョコレートを口の中に入れ、それをゆっくり噛み砕くとキスをした。

シャンパンで口を潤しながら何度も何度も、俺の硬くなった男根を擦りながら・・・

・・俺は、礼の女陰から溢れ出る蜜で左手を汚しながら・・・

いつのまにかSnoop Doggのアルバムに変わっていた。

そして、DOGGYSTYLEは朝まで・・

・・・鳥肌が立つほど下品で淫らな・・・

$心貧しきくそったれの足跡


Le Sudで食事を済ませ、ローヌ川沿いを小一時間ほど散歩してホテルに戻った。

先にシャワーを浴びてRALPH LAURENのパジャマに着替える。バスルームを出て頼んでおいたVeuve Cliquot La Grande Dameで喉を潤す。

「じゃあ、私入ってくるね」

礼はFred Astaireばりの軽快なステップでバスルームに消えていった・・・



やるべきか、やらざるべきか、それが問題だ。
どちらが気高い心にふさわしいのか。
非道な運命の矢弾をじっと耐え忍ぶか、それともシルクのような肌に斬りかかり、
戦って相果てるか。やらぬこと・・・眠ること、それだけだ。
眠りによって、心の痛みも、これからあるであろう数限りない苦しみも終わりを告げる。
それこそ願ってもない最上の結末だ。
やらない、眠る。
眠る、おそらく夢を見る・・・そう、そこでひっかかる。
一体、禁欲という眠りの中でどんな夢を見るのか?
ようやく性欲のしがらみを振り切ったというのに?
だから、ためらう・・・そして、苦い後悔をおめおめと続けてしまうのだ。
さもなければ、誰が我慢するものか、世間の誹謗中傷、キャンディとの約束、
サンドラへの裏切り、そんなものに耐えずとも、
肉棒の一突きで性欲にけりをつけられるのに?
誰が不満を抱え、つらい後悔という重荷に耐えるものか、
失恋の世界の恐怖さえなければ。
いけば帰らぬ不実の国・・・それを恐れて、
意思はゆらぎ、想像もつかぬ苦しみに身を任せるよりは、
今の苦しみに耐えるほうがましだと思ってしまう。
こうして、物思う心は、男たちを臆病にしてしまう。
こうして、決意本来の色合いは、青ざめた思考の色に染まり、
崇高で偉大なる浮気も、色褪せて、流れがそれて、行動という名前を失うのだ。
美しいサンドラ!妖精よ、君の祈りにわが罪の赦しも加えておくれ。

シャンパンを立て続けに2杯飲む

・・・沈黙は金なり・・・まぁ、なんとかなるさ~・・・

バスルームの扉が開き振り返ると、薄い桃色の肌をした礼が恥ずかしそうに立っていた。
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バジリカ教会前のレストランに入ると窓側の席に案内された。
チキンのランチセットを2つそれと俺はホットワイン、礼はサングリアを頼んだ。

・・この娘、どこまでもオレンジだな・・CLINIQUEのhappy使っているし・・・・

メインのお皿の付け合わせはクスクスが乗っていた。

「チキンの野郎も笑えだってさ」

他愛もないおやじギャグに彼女は爆笑した・・・周りの老人たちが何事かという視線を浴びせてきたが、礼は気にもしていない様子・・・

ホテルに戻り、目を腫らしたあんみつ姫をベッドに寝かしつけると爺は、姫の為にBernachnにオレンジピールの入ったチョコレートを買いに出かけた。
・・みんなどこかへ行ってしまう・・・
・・・・・大好きなパパもママもAkiraも・・・
・・わたしはいつもひとりぼっち・・
・・わたしはいともひとりぼっち・・・



ママ、このバッジを外しておくれ
もう俺には用なしだ
目の前が暗くなって、何も見えなくなってきた
どうやら俺は天国の扉を叩いてるようだね

コツ、コツ、コツと、天国の扉を叩いている
コツ、コツ、コツと、天国の扉を叩いている
コツ、コツ、コツと、天国の扉を叩いている
コツ、コツ、コツと、天国の扉を叩いているんだ

ママ、俺の銃を地面に置いておくれ
俺はもう撃てないよ
大きな暗雲がたちこめてきている
どうやら俺は天国の扉を叩いてるようだね

コツ、コツ、コツと、天国の扉を叩いている
コツ、コツ、コツと、天国の扉を叩いている
コツ、コツ、コツと、天国の扉を叩いている
コツ、コツ、コツと、天国の扉を叩いているんだ
$心貧しきくそったれの足跡


俺たちは、バジリカ教会前の広場でBob DylanのBlowin’ in the windを聴いた。



どれだけたくさんの道を歩き回れば
人は一人前だと呼ばれるようになるのだろう?
どれだけ多くの海を越えていけば
白い鳩は砂浜で羽根を休めることができるのだろう?
どれだけ大砲の弾が撃たれれば
もう二度と撃たれないよう禁止されることになるのだろう?
その答えは、友よ、風に吹かれている
その答えは風の中に舞っている

どれだけ長い歳月が経てば
山は海に削り取られてしまうのだろう?
どれだけ長く生き続ければ
虐げられた人たちは晴れて自由の身になれるのだろう?
どれだけ人は顔をそむけ続けるのだろう?
何も見なかったふりをして
その答えは、友よ、風に吹かれている
その答えは風の中に舞っている

何度見上げたら
人はほんとうの空を見られるようになるのだろう?
人々が泣き叫ぶ声を聞くには
二つの耳では足りないのだろうか?
どれだけ人が死んだら
あまりにも多くの人たちが死んでしまっていることに気づくのだろう?
その答えは、友よ、風に吹かれている
その答えは風の中に舞っている


フルヴィエールの丘から見えるリヨンの赤茶けた屋根を見下ろしながら・・・風はとても厳しかったけど何処か優しかった・・・
$心貧しきくそったれの足跡


ホテルに荷物を置きベルクール広場に向かう途中、L'information de la patisserieでマカロンを買い、ポール・ボキューズのビストロLe sudで午後7:00に予約を取った。
礼は、広場にあるサン・テグジュペリと星の王子さま像の前で記念写真が撮りたいと言い出し、渋々了承した。彼女の愛用のcanon F-1を使えそうなツイードのハンチングを被った紳士に撮影を頼むと、王子さまとサンテックスの構図で撮ってもらった。

大切なものは、目に見えない・・・か・・

ノートルダム・ド・フルヴィエール・バジリカ教会へ向かうケーブルカーの中でフランボワーズのマカロンを二人で頬張っていると、アンティークゴールドの髪のかわいい姉妹が指をくわえながら見ていたので礼は袋ごとあげた。

Mininesでケーブルカーを降りると紀元前に建てられた古代ローマ劇場に立ち寄る。
礼は古のステージらしき場所に誇らしげに立つと

「そこの三段目に座って」

と言い、きつねと王子さまのくだりを朗唱し始めた

「もしきみがおれを飼い慣らしてくれれば、おれの暮らしに日が当たるわけさ。おれは他の誰とも違う足音を覚える。誰かの足音が聞こえたら、おれは急いで地面の下に潜る。でもきみの足音はきっと音楽みたいにおれを穴から誘い出す。あそこを見ろよ!あれは小麦畑だろ?おれはパンを食べない。小麦なんかおれには無用だ。小麦の畑はおれには何も訴えない。これって悲しいことだよ!でもきみは金色の髪をしている。きみがおれを飼い慣らしてくれたらどんなに素晴らしいだろう!小麦は金色だから、おれは小麦を見るときみを思い出すようになる。小麦畑を渡る風を聞くのが好きになる・・・」

礼は真っ赤になった頬で、瞳を濡らしながら大声で

「お願いだ・・・おれを飼い慣らしてくれ!」

と言うと、俺の世界がひっくり返るくらいの大声で泣き出した。

俺は彼女を精一杯の思いで抱きしめた。
礼が落ち着くとFairground AttractionのA smile in a whisperを聴かせてあげた・・・

リヨン行のTGVの車内で彼女は、フランスに入国してからのハプニングを関西人のように擬音を混ぜ、指揮者のような大袈裟で繊細な手振りを交えながら話し続けた。
俺との偶然の出会いは彼女にとって必然であるらしく、宿命論を熱く語る姿があまりにも喜劇的だったので、イヤフォンを渡しDuke EllingtonのCaravanをかけた。



リヨン・ペラージュ駅に到着し、ベルクール広場の“i”で

「フォースターのホテルをシングル2つお願いできるかな?」

と言うと可愛いじゃじゃ馬は、なにやらフランス語でしゃしゃり出てきた。
予約が終わりアウトプットされた用紙を見てみると“DOUBLE”と出ている・・・

「知らない土地で一人じゃ怖いの~」

まぁ、いいか・・・

Boscolo Grand Hotelで清らかな俺の男根は、何処に潜るのだろう?

$心貧しきくそったれの足跡
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午前6:30に目が覚めるとゴロワースに火をつけてルームサービスに電話する。
煙草が1/4ほど減ったところで受話器が外れる音がすると、7:30にクロワッサンとカフェオレを頼んだ。バスタブにお湯を張り、昨日の後悔と安酒を抜く・・・

風呂から上がりラップトップを立ち上げていると、7:30ぴったりにチャイムが鳴った。
ルームサービスを部屋に入れると、香ばしいバターの匂いが漂ってくる。
愛想はいいが朝にはあまり相応しくない若造にチップを渡し、iTunesでHerbie HancockのSpeak like a childをかける。



カフェオレとクロワッサンで心を落ち着かせ、サンドラに電話を掛ける。
呼び出し音を5回鳴らすと、留守番電話サービスの声に正直ほっとした。
リヨンに行く旨、それと愛してると伝え朝のカルマを終える

$心貧しきくそったれの足跡


チェックアウトを済ませメトロでパリ・リヨン駅に到着すると、エルメス風のオレンジ色のコートを纏い眠そうな顔をした礼がチケット売り場の前で待っていた。
俺が彼女に近づくと極めつけの笑顔で

「昨日は眠れなかったの、おなか空いちゃった」

と甘えてきた。

これって浮気???
でも、そんなの関係ねぇ~!!!

オーシャン・パシフィック・ピース
モンパルナス駅にTGVが到着すると礼が

「ねぇ、ガレット食べに行かない?私のおごりで」

と誘ってきた。
早くホテルに帰ってサンドラに電話したかったのだが、彼女の好意を断る言い訳を考えるのもめんどくさかったのでOKした。

$心貧しきくそったれの足跡


Ty Breizという店に入り、礼は不慣れなフランス語でコンプレを2つとハウスワインをフルボトルで注文すると、桜色に染まった頬を左手で隠しながら

「でも、私もちょっとは役に立つでしょう?でも、フランス語って“パ”って言葉で話の内容が変わってくるの、その“パ”を聞き逃すと訳がわららなくなっちゃう、こっちの人早口だし・・・」



店内にはAhmad’s bluesが小気味よく流れていて、安ワインとコンプレとアーマッドのピアノが彼女を饒舌にさせていく・・・

勘定は結局俺が払い、マレ地区にある友達のアパートメントに帰るためのタクシー代を渡すとホテルまで歩いて帰った。

部屋に入りラップトップを立ち上げたが、サンドラからのメールは入ってなかった・・・

備え付けの電話機から受話器を外し、ミニバーのMontalのミニボトルで口を湿らせると、もう一口飲んで受話器を戻した・・・