俺の妹がこんなに可愛いわけがない(アニメ版) 考察 評価 レビュー | 概部記録送致

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Exmemory on wayjee l evin.

 

アニメ版のみですが、今更視聴しました。

実に面白かった。

なぜ8年前に騒がれてる時リアルタイムで見なかったのか俺・・・。

 

この作品の良い所は、とにかくキャラクター、特に桐乃の心情描写が細かい所ですね。

兄に対して素直になれない所から、怠惰な生活に対する汚物を見るような態度(実妹を持つ者なら分かるはず)まで、実に細かく丁寧に描写しているので、ツンデレを通り越してうざいクソガキレベルまで突破している桐乃も可愛く見えるわけですね。

 

作者は妹がいないとの事ですが、この汚物を見るような態度は実にリアリティに富みます・・・。

実際は実妹、実兄に恋する者などほとんどいないと思われますが、じゃあそんな態度を取っている妹が実は兄貴にラブラブだったら萌えるんじゃね?という発想が恐らくこの作品の根底になっているのではないかと思います。

そして、その根底を最後まで徹底的に貫き通しているので、キャラがぶれず安定して面白い作品となっているのではないでしょうか。

 

 

以降ネタバレありの考察とレビュー

(アニメ版のみの情報での考察となります)

 

 

まぁ、かくいう私も桐乃が心底かわいいと感じたのは二期からでしたが。

一期は優秀な妹が実は隠れオタクだったという設定のキャッチーさを大事にしていたと思われるので、京介と桐乃の関係はまだまだ兄妹の域を出ないものでした。

そのため、あやせや黒猫の方が圧倒的にかわいく思えたのです。

 

ヤバイのは二期ですね。

9話で黒猫の手引きで気持ちの一端が兄に伝わり、兄からの拒絶も無くむしろ自分を大切に思っている事がはっきりすると、10話以降は目に見えて態度が変わります。

 

まぁ、一期の最初でエロゲの兄役の名前を京介にしている時点でバレバレなわけですが、その後の態度がかわいくないので(笑)、視聴者も半信半疑になるわけです。

これは京介の心情が描写されないアニメで、原作の「京介は桐乃が自分を嫌っていると信じている」設定を表現するための演出でしょう。

 

そして、京介の方は9話の時点で心は決まっていたようです。

10~11話でフラグを立てまくり、12話であやせを振り、14話で黒猫を振り、13話で視聴者に桐乃がなぜ兄に冷たくなったか、エロゲにハマったのか(麻奈実から兄妹の恋愛はこの世界の禁忌であると言われ、その気持ちを抑える反動で妹物のエロゲにハマっていったと考えられる)、説明が入り、14話ラストで桐乃に告白、いやプロポーズします。

この時の桐乃の「・・・・・・はい」からのEDへの流れは神としか言えない。

 

しかし、実妹にプロポーズ・・・。

しかも実妹とのセッ〇スや近親〇姦をはっきりセリフに出すとは・・・。

恐れ入りました俺妹。

 

 

この俺妹という作品は、最初から兄妹で恋愛する事に微塵の疑いも無い作品とは違って、現実世界の常識、兄妹観に則って描かれています。

つまり、麻奈実の言うように現実に兄妹で恋愛、結婚、セッ〇スしている人がいたらまず気持ち悪いと思われるように、俺妹の世界においてもそれは同様なのです。

 

そんな世界において、「兄妹で恋愛なんて気持ち悪いだけ」と一期から事あるごとに桐乃が言っています。

実はこれこそが最初から最後まで桐乃が抱えていた闇だと思います。

桐乃は最初から兄に恋愛感情を抱いていたため、世間から向けられるであろう気持ち悪いという感情、絶対に認めてもらえないという絶望を小さい頃から一人で抱えていたのではないでしょうか。

「兄妹で恋愛なんて気持ち悪いだけ」は、桐乃が自分に言い聞かせている言葉だったのです。

 

その絶望を直球ストレートで砕いた京介に見せた「・・・・・・はい」の時の表情は、内面的には非常に理知的で自らの感情を隠す事に長けた桐乃が後にも先にも見せた事の無い物で、どれだけ深い物が彼女を縛っていたか伺い知ることが出来ます。

本当かわいいですね。

 

 

が!

話はここで終わりませんでした。

ここからが俺妹が物議を醸した本題になるのです。

 

15話は平穏な話と言えます。

前半は桐乃と京介のクリスマスデート、後半は恋人としてのイチャラブ話です。

 

問題は最終話である16話のラスト。

16話は麻奈実との問答などあるのですが、その後二人は二人だけの結婚式を開き、その後クリスマス時に桐乃が提案した通り、恋人から普通の兄妹に戻ります。

桐乃は「卒業まで(つまりクリスマスから3ヶ月あまりと思われる)恋人として過ごし、その後普通の兄妹に戻る」という提案をしていたのです。

そして、二人は秋葉原に遊びに来て、その中で京介は以前何でもお願いを一つ聞く約束をしていた事を桐乃に思い出させ、キスをして終わります。

 

これには私も度肝を抜かれました。

え?いやいやちょっと待て。

じゃあ今までの話はなんだったんだ?

近親相姦とか結婚とか言っていたのは?

あやせや黒猫が振られたのはなんだったんだ?

 

他の視聴者も困惑し、その後二人がどうなったのか、凄まじい論争が当時・・・というか今ですら巻き起こっております。

 

 

ただ、ここまでやって普通の兄妹に戻るというのは、あまりに虚無感が大きい結末で、絶対に作品としてそんな事はしないだろうという考えと、最後のキスから二人は今後も恋愛を続けていくと私は考えています。

 

この時、京介は「兄妹なんだから別にいいだろ?」と言ってキスしたのですが、「普通の兄妹」はキスしたりしません。

そして、キスの仕方が今までの淡白な京介からは考えられないほど積極的で意思がこもったものに見えたため、この描写には意味があると考えました。

 

つまり、京介はキスによって「普通の兄妹」そのものの定義を変える事で、恋愛を続ける事を桐乃に伝えたのではないでしょうか。

それを気付かせるために、あれだけ情熱的なキスをしたのではないかと思います。

 

 

他の考察サイトを読ませて頂いたところ、原作を読むとよりはっきり二人が恋愛を続ける描写がされているようです。

上記の考察はあくまでアニメのみを視聴した考察でした。

 

ただ、非常に残念だったのは、考察サイトで書かれていた「クリスマスの提案」が桐乃の一方通行であった点を見抜けなかった事です。

これはアニメの情報だけでも辿り着けた答えです。

確かにその通りで、京介は桐乃の提案を快諾するも、自分がどうするかは一言も話していません。

 

そう考えると、

「今までずっと、私のわがままを聞いてくれてありがとう」

提案によって恋人をやめる直前に桐乃が言った言葉の意味が分かります。

恐らくこれは、恋人をやめる事で、世間体や家族の事を考えた、京介に対する配慮から来るものでしょう。

 

京介は客観的に見れば、頭が良く容姿端麗な上に優しく行動力があり周囲の女子が片っ端から本気で告白を行うような超人です。

自分が身を引けば、兄は世間から断絶される事なく他の女性と幸せに人生を過ごせる。

桐乃はそう考えてあのような提案を行ったのだと思われます。

 

もう一つ、京介は麻奈実との問答中、「近親相姦上等」「実妹ENDやってやるぜ」と言っていた事を考察サイトに書かれていました。

確かに・・・これも気付けなかった。

京介の性格上、あそこまで啖呵を切ったのなら最後まで押し通すのは当然だと思います。

 

京介は麻奈実との対決後から、桐乃の提案に付き合っている間や最後のシーンまで、ずっとどこか達観した感じで描写されています。

麻奈実と話し終わった時点で、どうあっても自分は桐乃を愛し続けると決心していたのだと思います。

 

 

しかし、これらは原作を読んでいなければ中々気付けないと思います。

もう少し、アニメのみでも分かり易くして欲しかった。

二人が普通の兄妹に戻ったと考えられなくもないため、モヤモヤする人が続出するのも無理は無いでしょう・・・。

 

例えば、キスの後

「な、なにすんの!? 約束は!?」

「兄妹なんだから別にいいだろ?」

「いいわけあるかー! エロゲーじゃないんだっつーの!」

京介静かに微笑む

桐乃キスの真意を察する

「帰ったら、人生相談だからね!」

 

これぐらいのヒントがあっても良かったのではなかろうか。

 

原作では最後の人生相談の部分も深読みできるようになっているそうです。

うーん、深い・・・。

桐乃の人生相談から始まった物語は、最後に「二人の今後」の人生相談で終わる、と。

 

 

 

 

ラストに関して原作者本人のインタビューで以下のような答えがありました。

 

『最初の人生相談と同じように、兄妹は、二人だけの秘密を抱えて終わる』

 

いやこれ、凄い文章ですね。

短い文章に、桐乃と京介のその後と、二人の幸せ・悲哀の全てが込められている。

 

最初の人生相談で妹の秘密を共有したように、今度は二人で「恋人」という秘密を抱えて生きていく。

桐乃がこれまで抱えてきた絶望からすれば、十分ハッピーエンドと言えます。

決して世間から祝福されなくとも。

 

 

 

 

 

考察② 桐乃と京介

考察③