俺の妹がこんなに可愛いわけがない 考察② 桐乃と京介 | 概部記録送致

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俺妹 考察①

俺妹 考察③

 

この記事はアニメ版(+特典映像)の情報のみで考察されたものです。

 

ブルーレイディスクの最終巻の特典映像が桐乃を攻略する感じのエロゲー形式になっているんですが、そこでよりはっきり、京介が桐乃とどうするつもりなのか書かれてますね。

アニメのラストだけでは伝わり難かったので、書き足したのかもしれません。(ブルーレイ最終巻はアニメ放映時から半年近く経っている)

 

しかし、あのラストは結果的に論争を巻き起こして元々の人気に加えて更に話題を提供してしまったので、商業的には大成功かも。

もしこれが狙って行われた事だったとしたら・・・。

プロ恐るべし。

 

 

これは特典映像のキャプチャです。

バレンタインデーの出来事で、クリスマスから卒業(大体3月半ば~後半)までの限定で恋人になっている最中の桐乃と京介のやり取りですね。

ここから、桐乃から京介への心情を考察してみたいと思います。

 

「あたし、もう一生分しあわせをもらったから」

「だから、きっと大丈夫だよ」

なんのことだ?なんて聞く必要はなかった。

約束のことを、口にするわけもなかった。

 

約束というのはいわゆる「聖夜の約束」、クリスマスに桐乃が提案した、期間限定で恋人になって、その後普通の兄妹に戻るという約束の事です。

なぜ普通の兄妹に戻るのかというと、京介の事を考えたからだと考えられます。
 

13話を見る限り、兄妹愛がどのような結果を生むか、桐乃自身が最もよく分かっていたと思われます。

行動力があり頭も良い桐乃は、小さい頃から兄の事が好きだったため、兄妹の恋愛について、世間がどう考えているか、法的にどうなのか等、詳しく調べていたと考えられます。

そして、調べれば調べるほど絶望していった。

その根底があるから、本編であれほど「兄妹で恋愛なんて気持ち悪いだけ」と連呼し、兄の事を異性として意識しないように努めていたのでしょう。

 

事あるごとに桐乃が留学しようとするのも、傍にいたら意識してしまう事を止められないからだと思われます。
桐乃が留学を切り出すのは1期2期ともにどちらも京介との距離が急激に縮まった時です。
これ以上一緒にいたら、自分の感情を抑えられない。
そう判断して京介から離れようとしたのではないでしょうか。

 

 

京介の事を考えたというのは、「自分(桐乃)さえいなくなれば、京介は他の女性と一緒になって不幸にならずに済む」という事です。
この俺妹という物語は、キモイキモイと言いながら桐乃から京介へのラブ行動は多数見受けられるものの、実は京介から桐乃へのラブ行動はほとんどありません。(アニメ版では意図的にカットされているものと思われます)
2期13話ではっきり語られるように、桐乃が京介を好きになった事で始まった物語です。

 

そのため、桐乃は、「京介は自分を「妹だから大切」以上の感情は持っていない」と考えています。
その証拠に、様々なイベントを経由した最後の最後、2期最終話のクリスマスデートの時でさえ、京介の「好きな人がいるんだ」を聞いて、自分ではないと思って逃げています。
(京介の方も当初は桐乃への異性としての愛情はなく、描写はありませんが作中の中で徐々に芽生え、自身ではっきり気付いたのは2期9-10話辺りだと思われます)

 

「お前がいないと死ぬかもしれない」 (アメリカ留学から連れ戻す時)
「お前に彼氏が出来たら嫌だ」 (偽彼氏事件の時)
「お前が嫌だって言うなら、彼女は作らない」 (黒猫と別れた後)

 

ここまで踏み込んでも、京介は(異性として)「好きだ」とは言っていないため、桐乃は京介が自分を異性として見ているのか、仲の良い妹として見ているのか、判断出来ていません。
しかし、好きな人に上のような事を言われ、京介への思いは大きくなる一方で、自分の感情をコントロール出来なくなりそうだったので留学して離れる、一線を超えると世間から断罪され京介が不幸になるため自分の気持ちを押さえ込む=その結果ツンツンする、イライラするといった行動に至ったのではないかと思います。

 

妹(桐乃)が兄(京介)と結ばれる妹物のエロゲーが感情の抑圧の捌け口だったとしたら、アメリカ留学後に爆買いしていた事も納得できます。
桐乃にとって留学の時の出来事は、それが異性ではなく妹として見られたものであっても、兄が日本に連れ戻しにアメリカまで来てくれたこと、「お前がいないと死ぬかもしれない」と言われたことを非常に大きな思い出となって残っています。
それはこの動画(ブルーレイ12話特典)で「兄が自分にしてくれたこと」の中で最後のとっておきとして語っていたり、2期15話で兄と一緒に恋人として付き合っている事を初めて友人に打ち明ける場で留学の時と同じ服を着ている事から分かります。

 

 

桐乃は兄から貰ったヘアピンを大切にしていたり、写真や録音を保存したり、とにかく京介とまつわる物や思い出を大事にする傾向がありますが、これは正面きって兄に思いを伝えられない裏返しに、せめて物や思い出を大切にしているという事でしょう。
 

2期開始後は1期初期と同じようにツンツン全開で始まりますが、エロゲーを抑圧の捌け口として見ると、(1期~留学事件で兄ラブ度が急上昇してしまい)爆買いという行為によって実はデレにデレていたという、2期1話はまさに桐乃というキャラクターを物語っている話なのです。


これは、2期から俺妹を見始めた視聴者に、桐乃というキャラはかわいくない妹だという事を説明しなければならないため、1期初期のようなツンツン具合を表現しなければならないという制作側の事情に、原作で作者が行ったような「行間にデレを詰め込む」という手法で対処したような感じにも見えます。

 

また、留学事件(アメリカでの京介の発言)の前に、11話で京介が流した涙を見て勘違いしてしまったか、もしくはそれまでのイベントで好感度が振り切れていたためか、12&12.5話で桐乃は京介に京介の子供の頃の写真が詰まったアルバムを見せようとします。

このアルバムを見せる、という事は言い逃れが出来ない状況になるわけで、これはつまり「異性としての告白」と同義です。

作中で桐乃自身迷いに迷っている事からもそれが伺えます。

もしここでアルバムを見せていた場合、告白へと至っていたと思われます。

 

正史となる12.5話では結局見ない事になるのですが、その際「俺はお前の兄貴だからな」の言葉に対し、桐乃が一瞬意外そうな表情を浮かべる事から、この時点では桐乃は京介が自分の事を異性として見てくれているのかも、という期待があったようです。

続く、「もういいのか?最後の人生相談」の言葉にぼんやり相槌を打つ様子から、最後の人生相談とは、ずばり「異性としての告白」だったのでしょう。

その後桐乃は晴れ晴れした顔で「大丈夫。なんかすっきりした」と言ってアメリカに旅立つ事になります。

 

桐乃は、やはり妹としてしか見て貰えていなかったという事実はショックだったものの、それなら普通の妹として兄を忘れて陸上に打ち込もう、と決心します。

結局はアメリカで兄が忘れられず、メールを打って助けを求めてしまい、その結果、兄から「お前がいないと死ぬかもしれない」と言われる大きな思い出の一つを得るのですが・・・。

 

しかし、1期のラストは、兄は自分を妹として見ている、という現実を再確認してしまった事件でもあったのです。
それを踏まえて2期を見ると、やたらツンツンしている理由が分かります。

また、5話で彼氏役に嘆いた京介に過剰反応する所もこれが原因でしょう。



さて、1期を通して兄への恋愛感情が高まった後、やはり自分は異性として見られていないという現実を知って桐乃は振り出しに戻ります。

 

2期15話で小6の桐乃が、「どうすればずっと一緒にいられるのか」と語っている答えが、「兄に好きになってもらう事を諦め、普通の妹でいること」です。

これは小6から現在に至るまで、桐乃が取り続けてきた選択肢です。


しかし、同じく語られている「どうすればあたしの事を好きになってもらえるのか?」の答えとして、兄の得意だった運動(陸上)や、容姿(モデル)を磨き続けている事から、完全に異性としての兄を諦めていた訳では無かった事も分かります。
桐乃というキャラクターはこういう二律背反を抱えているのです。

 

妹物エロゲーという存在を知って、自分の感情を発散する術を知った桐乃は、これ以上兄への想いが強くなる事がないよう、兄と距離を取り2年間を過ごした(冷戦状態)。
しかし、1期1話で兄にオタク趣味を知られたのをきっかけに様々な事件が起こり、兄への想いが強まってしまい我慢できなくなっていく。
これが、桐乃にとっての俺妹という物語になります。

 

兄に想いを伝えたいが、兄は自分を異性として認めてくれるか?

仮に認めて一緒になれたとしても、兄は人道を踏み外した者とされて不幸になる。

自分が我慢して普通の兄妹でいるべきではないか?

このジレンマが高坂桐乃の行動原理の全てとなっています。

 

 

そのため、桐乃はクリスマスに普通の兄妹に戻る事を提案したのです。

「兄の幸せを一番に考えること」

この考えは桐乃の根底にあり、大事な場面では徹底しています。

特に顕著に見られるのが、2期7~9話の京介と黒猫が付き合う話でしょう。

 

黒猫から、京介に告白してもいいかという電話を受けた桐乃は、一瞬固まった後OKします。

これは上で述べてきた通り、自分は兄から異性としては見られていないということがはっきりしていること、兄が他の女性と一緒になれば幸せになれる(もし自分が選ばれて兄が一緒になったら兄は世間から断罪される)から、という理由からです。

 

また、黒猫から本心を見透かされて告白するよう諭された際も、「兄貴に彼女が出来るなんて絶対嫌。あたしが一番でなくちゃ嫌!」という言葉で告白し、「好き」とは一言も言っていません。

つまり、あくまで「兄を慕う普通の妹」以上の感情は無いように取れる言葉しか使っていないのです。

それは、1期12.5話で自分は妹としてしか見られていないことが分かっているのに対し、黒猫に対しては9話で京介がはっきり(振られた後でも)「好きだ」と言っているからでしょう。

 

自分がここで異性として好きだと告白すれば、兄が白い目で見られかねないし、そもそも自分は相手にされていない。

自分が出しゃばらなければ、相思相愛の二人は結ばれて幸せになる。

桐乃はこう考えたのだと思われます。

 

それでもどうしても思いを伝えられずにはいられなかったのは、6話の偽彼氏事件で、またも兄ラブ度が沸騰してしまったからだと思われます。

 

桐乃からすると、

 

1期各話で兄ラブ度上昇、12話で告白を決意

兄が自分を異性としては見ていない事を知り落胆

アメリカで「お前がいないと死ぬかもしれない」

2期各話、6話偽彼氏事件で「(俺は誰よりも)桐乃を大切にする。絶対だ!」

兄ラブ度さらに上昇

2期9話「黒猫と付き合う事にした」「黒猫が好きだ」

 

と、自分の心情を(兄に無自覚に)ジェットコースター並に翻弄されていることになります。(そりゃ兄に対してツンツンイライラするのも仕方ない)

まぁ、その心情は自分の一方的なものであり、普通妹が兄の事を異性として好きだという発想は出てこないと思われるので、京介に非は無いのですが。

 

ともかく、桐乃は9話では異性としての告白は行いませんでした。

(黒猫は11話で「桐乃が兄を異性として愛してしまっても」とはっきり口にしており、ディスティニーレコードの件もあり、この9話以前に既に気付いていたと思われます)

 

しかし、京介の気持ちは、この9話で大きく変化したと考えられます。

また、そのためか、「お前が嫌だってんなら、彼女なんて作れねえだろ」と再度の黒猫の告白を保留にします。

 

では、次は京介から桐乃への心情を考察してみます。

 

 

そしてなにより、俺は桐乃と違って、感傷に浸る必要性すら感じていなかった。

なぜなら、

「なーに言ってんだよ」

「まだ二ヶ月しか経ってねぇぞ。これで一生分なら、おまえはどんだけ幸せになるつもりだ?」

「へへ……わかんない」

「……人生二回分くらいかな」

違うよ。そんなもんじゃない。

もっと、もっと、数え切れないくらいたくさんだ。

いまは、言ってやらねえけど。

「約束」を、果たすまでは。

妹のお願いは、聞いてやらなくっちゃあな。

俺はこいつの、兄貴なんだから。

 

さて、実は京介の心情がどのような経緯を辿ったかは非常に難しくなっています。

というのも、京介が誰を好きであるか明確に描かれている描写が極端に少ないからです。

 

まぁ、この作品はラブコメなので仕方ないと思います。

ラブコメにハーレム展開は付き物ですし、主人公が誰を好きか言ってしまうとそこで物語が終わってしまうからです。

アニメでは特に徹底して京介が誰に気を持っているかカットされているように思います。

 

まず1期ですが、1期は特に京介発信の恋愛描写が少ないです。

まず、4話で初めて見たあやせに対しては、「かわいい子だった」と思わせるような回想が入ります。

また、桐乃が、京介があやせにデレデレしていたと言及しているシーンがあります。

6話では煮え切らないながらも麻奈実に気があるかも、と考えられます。

最終話である15話は、黒猫に「一緒にいてくれて嬉しかった」と言われた時の笑顔とキスにドキッとしている描写があります。

 

 

しかし、2期に入ると、それまでとは別人のように早々に2話であやせに猛アタックを行います(笑)

というか、あやせについて深掘りしておくと、京介が作中で自分から積極的に好意を伝えている相手は、告白を除くとあやせしかいません。

京介はメガネっ娘好きという設定がありますが、その属性を満たす麻奈実が霞んでしまう勢いで、あやせは京介の好みにドハマリしていると思われます。

 

「あやせ、結婚してくれーっ!」

「俺がセクハラするのはお前だけだぜ」

「ラブリーマイエンジェル、あやせたん♪」

「かわいいかわいい美少女が・・・」(12話モノローグ)

 

まさに別人と思しきセリフの数々をあやせにぶつけます。

ちなみに2期に入ってからの京介の携帯のあやせの登録名は、「ラブリーマイエンジェルあやせたん」。

1期最終話時点では、非常に見にくいものの「あやせ」であることが確認できます。

 

まぁ、アタックは冗談なのですが、あやせからの呼び出しを告白と勘違いしたり、顔を近づけたあやせに赤面したり、かわいい、美人とはっきり断言するなど、他のキャラとは別格の態度です。

 

実は、あやせの容姿は桐乃そっくりとなっています。

特に前髪は左右対称なだけでほぼ完全に同じです。

顔もまつ毛の長さ以外はかなり似ています。

さらに、髪や瞳の色が京介と非常に似せてあり(つまり血の繋がった妹っぽい)、初めから桐乃と対照させて、「可愛い妹」と「可愛くない妹」を浮き彫りにさせる、といった狙いがあったのではと考えられます。

そう考えると、京介が求める理想の「可愛い妹」(容姿がドストライク)なので、最初からゾッコンであった事の説明が付くのです。

(ちなみに1期1話最初にかわいい妹の夢を見ているが、それも黒髪)

 

それはつまり、あやせとそっくりである、桐乃の容姿も京介のストライクである、と暗に伝えている事になります。

 

ちなみに、1期4話で初めてあやせと加奈子が高坂家に遊びに来る時、桐乃は京介に友人達を絶対見るな、しゃべるなと釘を刺しますが、あやせ達の容姿が優れているため、兄を取られないようにしていたのでしょう。

当たってますね。

また、兄にベタ惚れの桐乃は、京介が友人から惚れられるのではないかという心配もしていたとも考えられます。

実際、アニメ版の京介は特技こそありませんが、容姿も性格も超イケメンといって差し支えないレベルです。

二人とも結果的に京介に惚れてしまったので、これも当たっていたと言えます。

 

逆にあやせの方はというと、2期2話の時点で京介にデレている所から、1期~2期の間に何かがあったのではと考えられますが、12話の告白で最初から京介の事が気になっていたと答えています。

また、1期5話で桐乃と絶交した際に、京介が嘘を付いて自分が泥を被り二人を仲直りさせた事をずっと感謝しており、京介にお礼を言いたかったが甘えて今まで言葉にできなかったこと、嘘を付かれる事を最も嫌うあやせが、「あんなに優しい嘘があるんですね」と、1期4-5話(まさしく出会った最初)から好きだったことを吐露しています。

 

 

2話以降はあやせを除いて特に京介からの好意を感じるシーンは無く、上述の通り、6-7話で黒猫から告白され、付き合う事となります。

 

あやせにセクハラしているのに黒猫に告白されたら黒猫と付き合う、というのは少し軽薄のような気もしますが、まぁ男というものは容姿が合格ラインを超えている相手に言い寄られれば断る事は難しいし、実際好きになってしまうものです。

そういう意味では、健常な男子高校生として正常であると言えなくもありません。

 

黒猫との恋人関係は、黒猫が桐乃から京介に対する本音を引き出すためだったので、結果的に振られてしまいますが、その後も(異性として)「好きだ」とはっきり言い切っているのがポイントです。

実は、あやせに好意を持ってはいたものも、京介が「好き」とはっきり口にしたのは黒猫以外にいません。

また、それを聞いたのは桐乃です。

つまり、桐乃は本人達から、相手の事が好きだという言葉を聞いているのです。

 

桐乃の本音を聞いた京介は黒猫と付き合う事を保留にしますが、桐乃は二人がそれぞれお互い好いている事を聞いているため、最後まで京介が好きなのは黒猫だと考えています。

 

9話の後、京介は今まで立ててきたフラグを片っ端から叩き折ります。

12話であやせを、14話で黒猫を、15話で加奈子をはっきりと振り、14話で桐乃に告白する事になります。

 

 

さて、ここで疑問なのが、「京介はどうやって桐乃が自分を異性として愛している事に気付いたのか?」という事です。

 

上で述べた通り、桐乃は9話の告白においても「好き」(異性として好きである)とは伝えていません。

「一番でなければ嫌」というのは、兄を独占したいブラコン気味の妹(異性としてではなく)のセリフであるとも受け取れます。

 

結論から言うと、正直分からないというのが率直な意見です。

前回記事で書いた通り、10話以降京介の桐乃に対する態度は吹っ切れた所があるため、また、9話のサブタイトルが「俺の妹がこんなに可愛いわけがない!」と俺妹のまんまで特別な印象を与えることから、気付いた時期としてはやはり9話の事件だと思われます。

ただ、想像するなら、直接的な言葉がなくても今までの桐乃の言動に思い当たる節が多く、それで察したという事だと思います。

 

デートをしたがる、彼氏になって貰いたがる、アクセサリを買って貰いたがる、他の女性と話していると不機嫌になる、妹物のエロゲの主人公に兄の名前を付ける、自分が一番でないと嫌、兄に彼女が出来るのが嫌、過去を振り返れば枚挙に暇がありません。

特に1期4話ラストで「彼氏になってよ」と言われて京介が戸惑った後、6話で「自分は地味子とか黒いのとはイチャイチャしてるくせに!」「あの時は気持ち悪いみたいな顔したくせに!」と泣かれたのは、お互い好きだと知った二人を案じた、一歩引いた告白だった2期9話より、むしろ分かり易かったように思います。

 

普通兄妹と言えば、ウェスターマーク効果でお互いを異性として意識しないようになりますが、そうならず恋人になったり事実婚している人達もいます。

桐乃と京介も恐らくそうだったのではと思われます。

2期2話で京介が桐乃からラブタッチのゲームを教えて貰っている時、顔を近づけてしゃべる桐乃に赤面するシーンがある事から、あやせと同じく容姿的にはストライクであり、かつウェスターマーク効果による嫌悪感が無いとすれば、異性として認識する可能性はあります。

 

 

しかし、桐乃がいくら京介を異性として好きであっても、京介が桐乃をそう思っているかは別の問題です。

京介がシスコン気味である事は作中の言動から分かりますが、それは「家族を思って、妹を思ってのもの」の域を出ない印象です。

9話で桐乃の恋愛感情に気付いたとしても、すぐにその人を好きになるものでしょうか?

考察するなら、一応二つの答えが考えられます。

 

一つは、すぐにその人を好きになってしまったのだ、という身も蓋も無いもの。

しかし、黒猫と付き合う事を決めた時の京介も、それまで特に黒猫とロマンスがあった訳では無かったことを考えると、上述のようにフリーの男なら合格ラインの容姿(俺妹のヒロインは全員非常に可愛い)を持った女性に迫られれば、特に断る理由が無ければ付き合う確率は高いと思われるし、キスに固まるなど女性に耐性が無い男子高校生の京介であれば、よりその確率は高くなるとも思えます。

まして、上の通り、桐乃は黒髪ではないもののあやせと同じく京介の好みの容姿を持った美少女なので、筋は通ります。

 

が、そうではなく、恐らく「最初から京介は桐乃を異性として意識していた」というのが正しいのではないでしょうか。

 

そう考えると、「なぜ京介は桐乃を異性として見た言動が無かったのか」という矛盾が発生します。

もし京介が初めから桐乃を異性として見ていたなら、あやせに対してそうだったようにもう少しデレデレする様子があってもおかしくありません。

例えば、京介は2期4話で桐乃の裸やパンツ姿を至近距離で目撃しますが、赤面はおろか慌てた素振りの一欠片すら見せていません。

 

その答えは、「京介自身が無自覚だったから」ではないかと考えています。

深層意識では異性として認識しているものの、自我の内ではあくまで普通の妹として見ているから、裸を見ても何とも思わなかったのではないかと思います。

まぁ、心情描写が語られないアニメでは、表面上の表情や言動からしか推察できないため、こういう考察は邪道です。

が、この考察に至った論拠が一つだけあるのです。

 

 

それは、黒猫の「そう、最初から・・・こんな結末なんて・・・分かって・・・」というセリフです。

これは14話で、黒猫と付き合うかどうか保留にしていた京介が、「妹が好きだ」と告白した後に言った言葉です。

つまり、黒猫は最初から京介が桐乃を異性として意識していたこと、京介自身すら気付いていなかったことに気付いていたのです。

 

黒猫の考える「理想の世界」を作るための儀式を記したものが、黒猫がディスティニーレコードと呼んでいるノートです。

その最後は黒猫と高坂兄妹が幸せそうにしている絵で締め括られています。

黒猫にとっては桐乃も京介も大事であり、京介が桐乃・黒猫のどちらを選んだとしても、三人が仲良く存在している、という世界こそが「理想の世界」なのです。

 

つまり、高坂兄妹を最もよく見ていたのが黒猫という人物なのです。

 

それは11話であやせとのバトルでぶつけた、

「よく聞きなさい。私は京介が実の妹とセッ〇スしていても構わないわ。私はあの女の親友よ。あの女の望みを最もよく知る、一番の味方よ。私は京介が近親〇姦上等の鬼畜だったとしても何ら問題なく愛せるし、桐乃が望むなら一番など喜んでくれてやるわ。あなたはどう?桐乃が兄を異性として愛してしまった時、受け入れてあげることができる?」

という名言にも表れています。

 

9話で桐乃がわざわざ「(異性として)好き」という言葉を使わなかったにもかかわらず、桐乃が兄を愛している事を理解している上、京介が実の妹とセッ〇スしていても京介が近親〇姦上等の鬼畜だったとしても、と京介の事まで言及しているのです。

黒猫だけが、「本人に自覚は無いものの、京介も桐乃を異性として好きである」ことに気付いていたのです。

それはやはり、「理想の世界」を築くためだけではなく、想い人だからよく見ていた、という事なのでしょう。

 

 

果たして、14話で黒猫は京介に振られます。

桐乃の想いに京介が気付けばこうなる事は「最初から」分かっていたはずです。

その時京介も、自覚していなかった自身の桐乃への想いに気付く、と。

 

分かっていても、「理想の世界」のためには桐乃に本心を告げさせなければならなかった。

自分が道化となってでも・・・。

これが黒猫が行った9話の「儀式」の真実でしょう。

 

 

壮大に回り道をしましたが、上で貼った特典映像の考察に戻ります。

 

感傷に浸る必要性すらない。もっともっと数え切れないくらいたくさん。

 

つまり、京介はこの時(クリスマス~卒業式までの間)すでに普通の兄妹に戻るつもりは無いと考えていました。

卒業式が終わっても恋人でいる。

たとえ世間から祝福されなくても、一生妹を愛し続ける。

だからもっともっと数え切れないくらいたくさんの思い出が出来ると。

 

いまは、言ってやらねえけど。
「約束」を、果たすまでは。
妹のお願いは、聞いてやらなくっちゃあな。
俺はこいつの、兄貴なんだから。

 

ただ、この「聖夜の約束」は妹が兄のために考えた「お願い」であったので、兄貴としては叶えてやりたい。
だから、形の上では卒業式で普通の兄妹に戻ったという事だったのです。

 

そして、アニメ最後のシーン、「普通の兄妹」であるはずの兄が妹にキスをする事によって、桐乃に自分の想いを伝えた。

つまり、俺は普通の兄妹に戻るつもりはないと。

あのキスはそういう事だったのです。

 

桐乃が驚いたのも無理はありません。

兄とはこれで終わりと覚悟していたのだから。

 

「帰ったら、人生相談だからね!」

悪態を付いた後、桐乃は幸せそうに笑って、この兄妹の物語は終わります。