僕には妹がいたはずだ。
高校を卒業して東京の大学へ行ったきり。それ以後は親族の葬儀で顔を合わすだけ。
若いころには可愛くて、夜中によく知らない男から電話があったっけ。
死にかけたとき、決まって思い出すのは彼女のやんちゃな幼顔。そして汚い男言葉で僕を罵倒する姿。男兄弟の中で育ったせいか、内奥には荒ぶる獣を飼っているのかも。
夜の夢に彼女を観て、ふと、いろいろ思い出し、心配になる。どこで何をしているのやら。連絡先もわからない。この希薄な関係を思うとなにやら泣けてくる。
血縁という事実だけが、僕の心を僅かにも慰める。
[移植その壱]