30巻最後の274話に入ります。
身体の中から湧き上がる野球の楽しさを初めて感じ、胸を高鳴らせているホット
な降谷については、前回ブログ 273話② 野球楽しい降谷、埋もれそうだった才能 に書きました。
5回表。降谷は成宮から青道初ヒットを打ち、一塁。ノーアウト。
続くバッター東条、送りバント成功で、降谷は二塁に進んだ。ワンアウト。
沢村と小湊春市は、東条に「おっしゃあ、ナイスバント」
東条はベンチに駆け戻りながら、ふうーっと大きくため息をつく。「ああよかった~、バント成功して」
って感じ。野球が上手な人は、いとも簡単にやっているように見えるけれど、内心は、うまくできるか、どきどきしているんだろうな。それにしても、東条、顔は1年生の時と同じ童顔なのに、体はゴツくなってる。
落合コーチの効率的ウエイトトレーニングも効いているのかな。
次のバッター金丸が出てきた。観客席では市大三高のキャプテン安達とピッチャー天久が見ている。彼らは数日前の準決勝で青道に負けて、引退したばかり。急にヒマになり、魂が抜けたようになっている
。
安達は金丸を見て「しっかりバット振ってくる奴が揃ってる打線だからな・・成宮といえど、プレッシャーは感じるんじゃないか」。
天久「・・まあ、回が進めばな・・」
三高のピッチャー天久は自分の準決勝での経験をもとにそう言っているようです。しっかりバットを振って敵に圧力をかける「青道の圧」は、天久も感じてたんだ。まだ敗戦を引きずっている天久の顔は真っ暗。決勝を見に来たい気持ちはあっても足が動かなくて、安達に引っ張って連れてこられた様子。三高選手はみんな、決勝の行方が気になってる。他の三高主力選手たちはファミレスに集まって携帯で中継を見ている。去年の夏は、負けた三高の選手たちは、キャプテン大前の実家のそば屋に集まって青道対稲実の決勝をテレビで観ていた。2年連続で準決勝で敗れ、庶民的食事処で集まって暗ーい顔で決勝観戦という、可哀そうな役回りの市大三高チーム。皆いかつい大男で、イケメンが一人もいなくて、地味なんだけど、選手の間に結束感があって、屈強なマッチョマンが心を寄せ合っているのが、私は好きだった。準決勝では田原利彦監督も選手と一体になって、ベンチから戦っていた。
金丸は、打席に入る前、片岡監督にアドバイスを受けていた。「お前がストレートに強いことは、向こうも分かっているだろう。狙うなら変化球。内に入ってくる球だけに狙いを絞って叩け」
稲実の外野はほぼ定位置。浅くはない。金丸のバッティング力は警戒されているのだ。
金丸は普段の練習で、日本一の速球ピッチャー降谷の球をがんがん打ち返すほど、ストレートにはめっぽう強い。しかし、そのことは相手チームも知っている。なので成宮と捕手の多田野は、変化球で攻めるだろう。だから監督はインコースの変化球だけに絞って、狙い打てと助言した。金丸は、変化球は苦手なのでしょう。でも監督は、変化球に絞った方が金丸が打てる確率が高いと考えた。数日前、金丸は三高戦で、天久のカーブをツーベースヒットにしていた!
で、ほんとに成宮の変化球を打っちゃったんですよ、金丸は。
残念ながらボールが飛んで行った先は、センターの方。走るのが異常に速いカルロスがシャシャーっと走って、追いついて、ぎりぎりキャッチ。アウト。金丸もチームメイトも悔しい。降谷は二塁から動けないまま。金丸~、残念だったけど、よく思い切って打った。変化球もいけると自信をつけて、直球以外にも強いバッターになり、次のステージに上ることを祈るよ
。
稲実ピッチャー成宮、またガッツポーズ。普段はそんなことしない成宮が、この試合2度目のガッツポーズ。しかも雄叫びを上げて。キャッチャー多田野にいたっては、立ち上がって両腕を突き上げてガッツポーズ。危機から救われた喜び。お手柄カルロスは指でツーアウト
のサインを作って成宮達に突き出した。あれー、なんか珍しい。稲実3年生スター選手たちは、熱くなったりせず、いつもクール。自分は自分の仕事をすればいいっていう個人主義で、互いを応援したりしなかったのに。今までそんなシーン皆無でしたよね。そういや272話の4回表でも、三塁手の矢部が成宮と視線を合わせながらグローブの陰で遠慮がちに小さいガッツポーズしてたっけ。稲実の3年生スター選手たち、これが高校最後の試合になるかもしれないって時になって、雰囲気変わってきたのかな。やっと互いを支えあう一体感が芽生えてきたか?
次のバッターは麻生。
麻生、バッターボックスで思う。「ここまでチェンジアップを投げたのは御幸にだけ。俺に投げるわけがねえ」
速球が来ると思って「ここで成宮打ったら俺がヒーロー」と自分で盛り上げてバットを振ったら、スロー――なチェンジアップが来てしまった。タイミングを外され、体勢を崩してズッコケる麻生。空振り。顔真っ赤。プライドがずたずた。
麻生よー、お前はそこまで稲実に侮られていない。成宮が球速150キロの大台に乗せたのは、麻生の前の打席だった。9番バッターとはいえ、強豪校青道のバッターだ。もっと自信を持て。自分を卑下しすぎて、チームに迷惑かけてるよ。つーか、むしろ、自信のなさからくる油断かな。「俺に投げるわけがねえ」と、チェンジアップが来る予想確率をいきなり0%にするのは、安易すぎる。降水確率
だって、0%と5%と10%では心構えが随分と違ってくる。・・・ま、マンガのキャラにあれこれ言うのは簡単だよね。キャラの振り見て、わが振り直せ。
9番バッターの次は1番バッターだ。そこからクリーンナップへ続いていく。9番は大事な位置。だからこそ、稲実バッテリーはここで麻生をズッコケさせ、青道の勢いを断ち切ろうと、いきなりチェンジアップを投げてきた。稲実の思惑通りの結果になった。
この球種はここぞという時に使うもの。もし、9番打者が麻生でなく、沢村だったら、成宮はチェンジアップを投げなかっただろう。沢村、打つの下手だし。仮にチェンジアップを投げ、沢村が豪快に空振りしてズッコケたとしても、沢村はかえって喜んでしまい、かえって青道の士気を盛り上げてしまったかも。そういうところが恐ろしいんだ、沢村は。ネガティブなものもポジティブなパワーに変えてしまうから。
おおっと、ところが、成宮さん、意図せずして、二塁にいる降谷に「お土産」をあげてしまった。二塁はピッチャーとキャッチャーを結ぶ線の延長線上。ピッチャーが投げたボールの軌道が良く見える。降谷はピッチャーだ。成宮のチェンジアップを観察するチャンスが得られたのは、嬉しいプレゼントだろう。降谷感動「今のがチェンジアップの軌道?あんなに変化するんだ
・・すごい」
降谷はこの打席、成宮からチーム初のヒットを打ったことで、野球が楽しいと、初めて感じることができていた。胸が高鳴るほどに
。(これは前回ブログ 273話② 野球楽しい降谷、埋もれそうだった才能 で書きました。)そして二塁に進んだら、成宮のウィニングショット「チェンジアップ」の軌道を見る
ことができた。・・・もしかして、降谷はこの試合で、成宮のチェンジアップを打つんじゃ?
チェンジアップに気を取られた降谷、背後で稲実のショート白川が二塁ベースの方に移動した
のに気づかなかった。キャッチャー多田野は膝で合図をピッチャー成宮に送る。降谷が気が付くと、成宮が自分の方に牽制球を投げようとしていた。が、降谷は二塁に飛び込んで戻り、ぎりぎりセーフ。
観客「危ねえ!狙ってやがった」
成宮「はりつけの刑じゃ」と、ベロを出す
のがキュート。成宮らしい。
降谷を二塁にはりつけておきたい。二塁ランナーのリードが小さくなれば、1回のヒットでランナーがホームに帰ってくる確率が下がる。万に一つの可能性も潰しに来る徹底ぶり。それを最初に仕掛けたのはショートの白河かキャッチャー多田野かよくわかりませんが(ピッチャー成宮は左投げでショートの方向が見えないので、キャッチャーが合図を送る必要がある)いずれにしろ、「多田野はよく見ていた」と、青道OBから褒められた。・・・この間まで多田野は、技術のなさを成宮に見下されていたのに、随分と成長した。
麻生を三振に打ち取った成宮。ちょうどその時、雲の切れ目から、陽の光が成宮の背後から差し、成宮に後光が差したようになった。きらめく成宮。高校生ナンバーワンピッチャー。天は彼に味方するのだろうか。
ベンチの稲実選手の応援はとても熱い。グラウンドに出ている下級生の多田野、江崎も「しゃあ」「おお!」と大きな声を出して、盛り上げている。3年生スター選手たちは相変わらず無言
なんだけど・・・大声で応援とか、ガッツポーズとか、苦手なんだね彼ら。野球能力は凄いけど、人とのかかわりが苦手な、似た者同士が集まった稲実。それが、この決勝、負ければ高校最後の試合になってしまうこの試合で、自分の殻をつき破るんだろうか。それで遂にチームに一体感が生まれれば、今まで以上の強さを見せ、決勝の行方は分からなくなるかもしれない。
しっかしですよ、チームの一体感という点では、青道はずっとずっと先を行っている
。昨日今日生まれたもんじゃない。色々乗り越えながら、時間をかけて育ててきた。稲実に一体感がようやく出てきたとしても、急ごしらえ。それに負けないと思う。野球の実力だって負けていないんだし。むしろ投手力は青道の方が上でしょ、たぶん。少なくとも降谷はこれまで成宮と互角に投げている。で、沢村にピッチャー交代した時どうなるか。・・・沢村は準決勝で完投した疲れが残っているかもしれない、それが心配。昨日まで下半身が張っていたというし・・・筆者は、青道が勝つと信じながらも負けちゃうんじゃないかとハラハラ
しながら読んでいるんです。稲実敗戦フラグについては以前ブログ 272話② バッター成宮ショータイム、稲実敗戦フラグ に書きました。
一体感とは何か・・・それは他人事か、自分事かの境目がなくなること、かもしれないな。心の中で思ってるだけでは足りなくて、行動で外に表すことによって、相乗効果でどんどん大きくなっていく、のかもしれない。
30巻最後のページには、いつものように青道の主力選手どうしが支えあう
シーンが描かれています。二塁から戻った降谷をエース沢村が出迎えた。これからピッチャーマウンドに向かわなければならない降谷に渡すため、グローブとキャップを持って。そして声をかける。「慌てなくていいぞ。息整えてからマウンド行けばいい」。キャプテン御幸も声をかけ、「汗も拭いとけよ」と、まるでお母さん。この人、キャプテンになる前の1年前はおちゃらけた、自分中心タイプだった。1年で人は大きく変われる。降谷と寮で同室の由井、同学年の東条もお出迎え。これだけの愛で迎えられて、降谷は安心だろうね。
ベンチに戻った降谷、沢村の出迎えを受け、二塁から見た成宮のチェンジアップのことを伝えたいようで「やっぱすごいね、あの人」と言ったけど、それ以上の言葉は、口下手なせいか、出てこない。沢村「ん・・ああ。まあ、わかってたけどな」。そして降谷にタオルを渡しながら元気な声で「心配すんな。お前も負けてねえ」と励まし、ニヤっ
。--- いいぞ沢村、そういうとこ、カッコイイぞ!![]()
出迎えてくれたチームメイトに自分のヘルメットやグローブを投げてよこす成宮がエースの稲実とは、随分と雰囲気が違う。沢村はこれでも青道のエースなんですよ。背番号1のエース様が自ら率先して背番号11のピッチャーの世話をしているんです、心からそうしたくて。これは、友情とリーダーシップの表われだと思う。降谷を、チームを、盛り立てていきたい。そうやって他者をポジティブに引っ張っていく沢村は、次期キャプテンにふさわしいと思う
。
「一体感」とは何か、なんですけど、沢村と青道チームに贈りたい『威風堂々』という、テレビやイベントで使われる誰でも知ってる曲の動画を下に貼りました。一体感ってこういうことだろうと思う。しょっぱなから何千、何万もの人が同時に雄叫び
あげちゃって。青道の「王者の掛け声」を思い出したよ。これ、サッカーの試合でも、ロックコンサートでもなく、BBCプロムというクラシックのコンサートなんだけど、クラシックのコンサートに対する先入観をひっくり返された。聴く側も合唱団と一緒に歌ってる。曲に合わせてみんなシンクして踊ってる。演奏する人と聴く人とが本当に「一体」になって、ひとつのものを作ってる。そこから湧き上がる膨大な
エネルギー![]()
その場にいたらどれだけスゴイんだろう。それぞれ自国の旗![]()
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を振って、互いの出身国の自由と栄光を応援してる。
日の丸も!
今回で30巻を読み終わりました。次回 決勝前の選手の様子を振り返る。国友監督辞任フラグ に続きます。
