い高校野球漫画ダイヤのA(エース)をじっくり掘り下げようとする読者が書いているブログ
前回ブログ 273話 沢村のジェラシー からの続き。
青道の剛速球ピッチャー降谷、集中モードが続き絶好調で、4回の裏を終えた。
アナウンサー「この回もアウト全てが三振ーー!!4回終わって早くも三振7個」。
稲実の成宮、青道の降谷、2人の投手の熱投に、観客の歓声が地鳴りのように響く。
降谷はチームメイトに「いいぞ」と認められ、ホッとしたのか、少し嬉しそう。稲実の控えピッチャー平野と赤松も「すごい」と認めている。
その時、球場に表われた2人の大男。「すげえな、なんだこの盛り上がり」。準決勝で青道に敗れた市大三高のピッチャー天久とキャプテン安達。天久はムスッと仏頂面。彼は降谷の豪速球には興味がなさそう。ジーニアス(天才)と呼ばれる彼は、力で押す投球ではなく、魔術師のような技巧派ピッチングを求めているのかな。
稲実ピッチャー成宮、マウンドに向かいながら「燃費悪いだろ、あの投球」。青道にはまだエースの沢村、守護神の川上という、いいピッチャーが控えているから、降谷はすぐ疲れるようなペース配分なしの投球をしても大丈夫なんだろうけど、自分はそうはいかない---と思っているのだろう。成宮は、川上がケガで投げられないことは知らない。それでも青道にはまだ後ろに沢村がいる。稲実のピッチャーは、成宮だけが突出してすごい。甲子園がかかった決勝でピッチャー交代はまずなさそう。
降谷の球数は、4回までで63球。今日は100球くらいは投げられるだろうから、まだ大丈夫。キャッチャー御幸は「コントロールはいつも通り良くないけれど、全力でがんがん投げてパワーで押しまくって、バット振らせて、抑えられている」というようなことを監督にコメント。落合コーチ「まだどちらにも流れは来ていない。むしろベンチが間違えられないのは・・継投のタイミングの見極め・・」。いつ降谷を沢村に交代させるか、監督は判断が難しい。
5回表、最初のバッターは降谷。沢村はいつものように大声でうるさく応援。「打席でも剛力ブンまわしてこい。当たれば場外、特大バズーカ。当たればな。さあいけ降谷あ、反撃の時間だ!!当たれ、バットに!!」
降谷は打席に向かいながら、小声で「・・当てるよ」とひとこと。
降谷はピッチャーとしてすごい剛速球を投げるだけでなく、バッターとしてもホームランを打てる力がある。本人は、バッティングには興味がなさそうだし、細身なのにね。野球センスがいいらしい。祖父は昔の甲子園出場選手。降谷は小さい頃おじいちゃんに仕込まれたのかな。
打席に立つ降谷。目がピッチングの時と同じ。集中モードの降谷だ。打席一巡目の時とは違う。
ピッチャー成宮「すぐに返せてよかった・・さっきの三振の借りを」。降谷を三振にするつもり。
最初の2球はファール。早くもツーストライク。でも降谷の目は集中したまま。
3球目、降谷、思い切り打った。「ギイン」と鈍い大きな音。
アナウンサー「真っすぐを詰まらせたーーが、ライトの前。落ちたー!!先頭打者、降谷出塁」
このヒットに、観客の大歓声が続く。「オオオオオオ」
青道の凄腕バッターたち、由井、御幸、金丸、東条らが、対抗心を見せながらもガッツポーズ。アナウンサー「ピッチング同様、チームに勢いをつけるヒット」。全くそう。青道初ヒットを打った。素晴らしい、降谷。
一塁に到達した降谷の胸は高鳴り始める。ドッドッドッドッドッドッ
降谷「熱い・・身体中の血が暴れてる」
次のバッター東条、気勢を上げる。顔はジャニーズJr系のかわいさだけど、バットを握る腕はマッチョマン。バントの構え。応援する沢村たちチームメイト。降谷は血が暴れるという不思議な感覚に、声援が耳に入っていない様子。
胸の鼓動が止まらない降谷。入学直後に、青道正捕手の御幸に初めてボールを受けてもらった時の胸の高鳴りを思い出した。その時以来、降谷には野球でトキメク
ことはなかったんだね。なんつー冷めた奴だ。それで1年の秋大会の時からずっとエースを務めていたんだ。それじゃ、この夏大会前に沢村にエースの地位を奪われてもしかたない。まあ、これで初心を思い出したよね。
なぜそんなに冷めていたのか。
それは、降谷が、つらい中学時代をずっと引きずっていたからだと思う。ダイヤのA 3巻に描かれていた中学時代。剛速球すぎて、中学の野球部には彼の球をキャッチできる捕手がいなかった。北海道の地方都市の、普通の公立中学の野球部。降谷の野球は出来過ぎていて、落ちこぼれとは反対に「浮きこぼれ」ていた
。
「浮きこぼれ」とは、極めて優秀な生徒が、疎外感を持ったり、実際に他の生徒から疎外されたりすること。
才能なんて、はかないものなんですね。天賦の才を持って生まれてきても、そのまま順調に育つことができるとは限らない。周囲の人たちみんなで育てていかないと。
野球が突出してハイレベルすぎる降谷は、野球部の生徒たちにバケモノと呼ばれ、お前とは野球したくないと疎外された
。野球部にいられず、ひとり橋の下で投球練習をしていた。元々東京出身で、小学校で引っ越してきた土地になじむのにも苦労しただろう。幼い頃から引っ込み思案。人の輪に加わるのは苦手。自分から強く働きかけていけるような性格ではない。それを祖父も心配していた。ある日、雑誌でみかけた天才捕手、御幸の記事を読み、「この人なら自分の球を受けてくれるのでは」と降谷は思った。天才は天才を呼ぶ
。一般入試で東京の青道高校に入学した。青道野球部には寮がある。東京には祖父母もいる。そうやって入学した青道で、すぐに監督に才能を見込まれ、一軍入り。御幸にボールを初めて受けてもらった時は「久しぶりに自分のボールがキャッチャーミットに収まる音を聞いた」。パーンという気持ちのいい音。この人となら、自分はもっと高みに昇れると思ったのだろう、胸が高鳴った
・・・。(それにしても「久しぶりに聞いた」というくだり、気になる。一体、いつどこに、降谷のボールをキャッチできる人がいて、高いレベルにまで訓練してくれたのか。祖父?小学校?)
幸い降谷は青道に合格し、才能を埋もれさせずに済んだ。それでも中学時代のトラウマは相当な深さで、そこからなかなか抜け出せなかったのだろう。降谷の引っ込み思案な性格もある。「ここはあそことは違う」(青道は中学とは違う)と分かっていながらも、野球に対してどこか一歩引いていたような。1年生エースだった時、秋の大会で優勝し、甲子園(春の選抜)出場を決めたときも、大喜びで顔をくちゃくちゃにしたチームメイトに抱きつかれる降谷は、ひとりだけ無表情だった。エースの座は沢村に譲らない、と、そこだけはライバル心むき出しなんだけど。
でもこの決勝で、成宮からヒットを打った降谷、胸の高鳴りとともに、実感する。「野球に生きている」![]()
野球が楽しい。
体の中から湧きあがるワクワクする気持ち
を、初めて感じたのでしょう。もしかして、そのうち、降谷がガッツポーズしたり、大声で「よっしゃー」と叫んだりするようになるんだろうか・・・
降谷がバッティングで胸がどきどきしてきた、というのが嬉しい。ピッチングだけでなく、わりとあっさりホームランを打てるほどバッティングの方の才能もあるんだから、そっちにも意欲的になるといいな。二刀流を目指してほしい。面白くなりそう。落合コーチが言ってた、エースで四番もあり得るかも。---それだと沢村が可哀そうなんだけどね、彼にはキャプテンの道があるから。ああ、でもやっぱり沢村にエースであり続けて欲しいな。んーでも、降谷も・・・
よーく考えたら、今じゃ強豪青道のエースになってる沢村も、降谷と同じく、危うく才能を埋もれさせるところだったんだよね。中学は農村部の公立。ちゃんとした野球の指導者もなく、野球部は人数を揃えるため女子生徒までかり出されていた。沢村自身、田舎中学どうしの試合でも相手校に太刀打ちできるものではなかった。超ラッキーなことに、なぜか、たまたま試合を見に来ていた青道スカウト高島女史の目に留まり、野球推薦入学できたから、今の沢村がある、ということが「ダイヤの A」第1巻で描かれている。
もしあの時、高島女史があそこにいなかったら、沢村はどうなっていたか。地元の公立高校の野球部に入っても、「おまえ下手」と言われて終わったかも。沢村の才能は昔は今よりもっと分かりにくかった。見る目のある人が見ないと分からなかった。それでも沢村の性格なら、あきらめなかったかも。それで周囲とぶつかったとしても。騒動を起こしながらも動画などを参考に練習して少しずつ認めさせたかな。幸い今はネットで何でもある程度学べる!それがない時代には完全に諦めるしかなかったことも。自分を伸ばすチャンスが広がってきた。ありがたい時代だ。そして降谷。もし中三の時、御幸の載ってる雑誌を見ていなかったら、どうなっていたか。あれだけの才能だから、自分でそれを自覚してあきらめないで橋の下で自主練していた。だから他の強豪校を探したか、誰かに発見されていたでしょう。例えば同じ町の巨摩大藤巻高校・・・。
二人とも青道で才能を大きく開花させるチャンスを手に入れたんだ。もっともっと花開け![]()
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沢村と降谷、そして、あきらめない全ての人に、この曲を贈る。指田フミヤの弾き語り「花になれ」。圧巻の歌唱。もう感動しかない。この人も発見された才能のひとり。
「生きてゆけ」
僕らは今、風の中で
それぞれの空を見上げてる
ぶつかっていいんだ
泣いたっていいんだ
どこかに答えはあるから
「あきらめないで」
どんな明日も苦しいほど
その命は強く輝く
風に立つ一輪
僕たちも花になれる
