ダイヤのA(エース)をじっくり掘り下げようとする読者が書いているブログ。

 

272話に入ります。

決勝戦、4回表。0対0。ワンアウト二塁白洲。

稲実ピッチャー成宮。

青道の御幸に対して、この試合初めてのチェンジアップをついに投げた。御幸はこれを待ち望んでいた。去年よりさらに進化して、日米親善野球で米国チームがお手上げだったチェンジアップ。御幸は、自分が打つと決めていた。

 

予期していたチェンジアップが来た。

御幸「ここで叩いておけばーー」

ボールをよく見る目。バットがボールの方に伸びる。が、ボールは「ヂッ」という音を立ててバットをかすり、真下の地面に叩きつけられ、ファール。

 

老若男女の観客は息を止めて見守っていたので「・・ぶはっ、息ができねえ・・」「なんだこの勝負!」

御幸は悔しそうな顔。

チェンジアップが来ると読んでいたので、タイミングはバッチリだったけど。

 

成宮は心の中で「・・・・前に飛ばせると思ってた?一度バッテリー組んだぐらいでさ」

 

バッテリーを組んだのは日米親善野球の時。ほんの2-3イニングだったけれど。その時、成宮の進化したチェンジアップを御幸は受けた。

 

成宮のセリフ冒頭の長い「・・・・」のところに、何かがある。長年のライバルとの勝負だから、というのが1つ。もうライバル歴6年目?成宮も御幸もまだ高校3年生、18歳なので、人生の3分の1を互いのライバル関係に費やしてきた

 

 

キャッチャー多田野はチェンジアップ対決の余韻に浸ることなく、さっさと切り替えて次の投球のことを考えて、サインを出した。あっさりした性格が多田野の強みか?単に成宮と御幸の因縁をよく知らないからなのか。

 

成宮「そんなに俺ーー安くないよ」と思いつつ強いストレートを投げこんた。さすがの御幸でもこれはきつく、振り遅れたようで、三塁へ小フライ。キャッチされツーアウト。

アナウンサー「エースと4番の第2ラウンドも成宮に軍配ーー」

 

成宮はこぶしを横に突き出すと、上に持ち上げてガッツポーズ!青道の前園が言う。「成宮がガッツポーズをするなんて、珍しい」。それだけ御幸を打ち取りたかった

 

 

え? と思ったのは、成宮の言った「そんなに俺、安くないよ」・・・それって、男女の関係で使われるセリフだよね。特に女性が「私、そんなに安い女じゃない」とか言う。ああ、成宮の本音がこんなところで出たのか。

 

そう、成宮は御幸に「フラれた」ことがある。といっても、BLではない。

二人が中学3年の時、成宮は自分が進学するつもりの稲城実業高校(稲実)で最強のチームを作ろうと、同学年で自分が気に入った強い選手を他のシニアチームから集めていた。4人集まったところで、成宮は彼らを引き連れて、御幸を公園に呼び出した。そして一緒に稲実で野球をやろうと、誘った。でも御幸はその場ですぐに断った。(ダイヤのA 18巻)

 

恐らく、ピッチャーの成宮が一番欲しかったのは、キャッチャーの御幸。同学年では東京で一二を争う実力捕手。しかも勝ち気でわがままな自分をコントロールできる強い性格を持っている。バッテリーを組むのに最高の相手だと成宮は思っていただろう。

 

そして成宮はおそらく、御幸に気を許していた。自分が相手を思うのと同じように、相手も自分のことを思ってくれていると、自己中心に考えていた。当然、自分のキャッチャーになってくれるだろうと。だから、御幸を一番最初に誘うのではなく、一番最後に誘ったのではないか。・・・いや待てよ~、よーく考えてみると、その逆かも。ピッチャーにとって一番大事なキャッチャーを最初に誘わなかった。それは、断られるかもしれないと心の片隅で思っていたからかも。他のスター選手を集めておいて、それから誘った方が、御幸もその気になるんじゃないかと思ったかな?断られるのが怖くて、御幸に話すのは一番最後になったとか。うーん。どっちにしろ、成宮は集まったスター選手たちに、キャッチャーはどうしても御幸がいいと告げていた。御幸一択、それは確か。

 

演歌の歌詞にありそな「あなた、あなただけなのぉ~~」

 

で、速攻で断られたんだ、御幸に。説得しようとしたけど、ダメだった。成宮、ハートが壊れたハートブレイク

 

ハートを、プライドを、メンツを潰されたのは、成宮だけでなく、他の4人のスター選手も同じ。湧いてきたのは、恨みムキー

 

自分たちを振った御幸が憎い。青道の野球部なんて、若い片岡監督になってから甲子園に行けてないのにー。それに比べて稲実は監督も設備も東京で一番。なのに、御幸め!

 

御幸に対する恨み節。「このこと、ずっと後悔させてやる。稲実に来なかったこと、10年後も20年後もずっと・・・」オオオオーーードロドロ~~~

 

つまり青道の甲子園出場を絶対阻止するつもり。

 

まるで男女の関係と同じ。同性同士で相手を好きになる感情って、男女間と似てる。性的なものがない、その点が違うだけで。同性間の、片思いとか、振られたとかって、異性間と同じくらい強い感情なのだということを、このマンガが思い起こさせてくれる。むろん異性間でも、生殖要素のない、好き嫌いという感情あると思う。

 

 

こじれるまでは成宮と御幸の関係は深かったようだ。中学時代、二人は野球の話で盛り上がり、何時間も話し込むことがあった。野球のベストフレンドラブラブ。だから、成宮が御幸に期待しちゃっても無理ないか。御幸が淡泊すぎるような気もする。自分が御幸を思うように御幸が自分を思ってくれない。切ない、成宮泣

 

成宮vs御幸の対決シーンには、美しく切ないBGMが似合う。ダバダー。

 

 

 御幸と成宮の中学時代の出会いについては、前回ブログ 271話 白洲の一撃。御幸チェンジアップ狙う で書きました。

 

 

それでも御幸が青道を選んだ理由は何か。本人が成宮達に伝えたのは2つ。

第1の理由は、中学1年のころから青道に誘われていたから。母親のいない汗御幸にとって、女性スカウト高島に早くから認められ、対話してきたのは、心の大きな支えになってきただろうほんわか

第2の理由は、これだけのスター選手がそろった強い稲実と戦う方を選びたいから。成宮によると、御幸は弱いチームにいて強い相手を倒すことに燃えるタイプ。

 

他に考えられる理由あと2つ。

① 元メジャーリーガーの父を持つサラブレッド天才捕手、滝川クリス優が青道の1学年上にいるから。彼の技を学びたかった。クリスがなぜ青道を選んだのかは描かれてないけど、これも恐らくスカウト高島の力。

② 御幸は成宮と出会った頃から、成宮はこれからずっとライバルだと決めていた、かもしれない。御幸はあくまでバッターとして成宮にチャレンジし続けたかった。・・しかし御幸はキャッチャーだ。成宮とバッテリーを組みたいと思ったことはないのか。そのヒントはマンガに出てきてないと思う。これから出てくる?

 

まだ中学生ピッチャーだった成宮はそういう捕手の二面性に気付いてなかったのかも。捕手には、投手の良さを引き出すキャッチャーとしての面と、バッターとして相手投手を打ち砕こうとする面がある。そういえば、青道ピッチャー沢村もずっとそのことに気づいてなくて、ある日、御幸にボールを受けてもらおうと探して、見つけた御幸がバッティング練習に集中していたので、ハッとして、声をかけられなかったっけ。・・・御幸はずっとバッターとして成宮を見てきた。でも成宮は御幸のことをバッターとしてよりも捕手として見てきたのかもしれない。すれ違い。

 

 

その後も、御幸が稲実チームに接するたびに、稲実スター軍団から恨みがましいドクロセリフがチラチラ出てきた。・・・それでも彼らは御幸の青道での実績を内心は認めるようになったんじゃないか。彼が青道キャプテンとして率いてきたチームは、とても強くなった。御幸が手をかけてきた下級生投手の沢村と降谷、同学年投手の川上もぐんと伸びて、いまや稲実にとって、脅威

 

 

御幸は稲実に来なかったけれど、幸い、稲実には1年上に原田というプロ注目のキャッチャーがいた。長打力があり4番。見かけはゴツイが穏やかで頼れる面倒見のよい性格。成宮はその下で成長してきた。

 

原田達が卒業して、成宮たちが最高学年3年生になると、上からの抑えが無くなり、精神的ほころびが出た。予選で負けて国友監督のカミナリが落ちた。その後良くなったけど、根本的なところは変わっていないような。監督はそれでもいいのか?勝ちさえすれば?さじを投げた?

 

御幸の「代わり」に1学年下の多田野が成宮とバッテリーを組んだ。同学年にはいいキャッチャーがいなかったんだ。多田野は原田や御幸と比べられただろうと思う。つらい仕打ちに耐えて、多田野は技術を身に着けた。そして、今、青道との決勝戦で成宮とバッテリーを組んでいる。成宮も多田野を頼りにしている様子。よかったな、多田野。

 

多田野のつらい道のりについては、以前ブログ 第268話 その3 成宮と多田野の危ない関係に書きました。(大事なところが消えていたので書き直しました)

 

次回ブログ 272話② バッター成宮ショータイム、稲実敗戦フラグ に続きます。

 

 

272話は30巻。

 

昨年の青道vs稲実決勝。この表紙も成宮だ。成宮たちが御幸を誘ったシーンも。