iPad版Clipstudioを使ったデジタル動画について
アナログ(紙)動画についてはある程度書ききったと思われるので、
そろそろデジタル動画について書いていこうと思います。
デジタル動画に使われるソフトはいくつかありますが、ここで書くのは、私が実際に使っているiPad版ClipStudio EX(以下 クリスタ)によるデジタル動画についてです。
すでに、他のソフトを導入してる方には、あまり役に立つ情報はないと思います。
ご了承ください。
ちなみに、こちらの記事は「紙動画からの転向」のつもりで書いています。
「動画」をきちんと描けることが前提です。
動画未経験の人がいきなりクリスタで動画作業するということは想定されてません。
デジタルツールで楽になる部分は多いと思いますが、紙作業においてきちんと作業されたものを見る「目」が必要です。
★デジタル動画への移行を検討したいが、何から手を付けたらいいかわからない方へ
会社からはペンタブレットやPCを用意されたものの、何をどうしたらいいのかわからないことが多いと思います。
私もそうでした。
調べてみると、アニメーション作画用のソフトも色々あって、会社によって違うものを使ってたりするので、自分が何について勉強すればいいのかもわからず、用意されたPCは埃をかぶったまま。
会社所属でなければ尚更、どこから手を付けたらいいかわからないでしょう。
ざっくりと日本の商業アニメで使われてるソフトについて言うなら、数年前までは、日本のデジタル動画と言えばStylos(スタイロス)一択だったと思います。
国内での仕上げ(彩色)作業はほとんど、Paintmanというソフトが使われています。
Stylos、Paintmanともに、RETAS Studioというアニメーション用のソフトに同梱されてるものです。
Stylos(作画ソフト)
Traceman(スキャンソフト)
Paintman(彩色ソフト)
Core RETAS(撮影ソフト)
一つ一つは別のソフトですが、RETAS STUDIOというパッケージで販売されてます。
ただ、このソフトは10年以上前から開発が止まっていて、OSのバージョンアップのたびに「使えなくなるのでは?」という危険をはらんでいます。
現状、Windows11では使えるようですが、最新版のMacでは使えないとか。
今は、Stylos以外にクリスタ、TVPaint(https://www.tvpaint.com/ja/)なども使われるようになってきてます。
ToonBoom Harmony(https://toonboom.co.jp/products/harmony)というのもありますが、個人のアニメ作家さんで使ってる人はいるようですが、会社規模で使ってるところがあるかは不明です。
もともと、TVPaint(以下、TVP)もHarmonyも、一人で最終工程まで作業できるようなソフトで、日本の商業アニメのように分業して作業するのに適したような作りになってないので、「仕上げはPaintmanを使う」となるといろいろ面倒な部分があるようです。
TVPは、最も紙に近い感覚で描けるようで、原画さんで使ってる人が多そうです。
クリスタは、元々はイラストや漫画制作に使われるソフトにアニメ機能を搭載したので、アニメ機能に関しては少々物足りない点はありますが、イラストなどで慣れ親しんでいたソフトの延長線で使えるのは利点とも言えます。
また、値段的にもTVPやHarmonyとは一桁違う(安い)ので、手を出しやすいです。
仕上げと撮影は時を同じくしてデジタル化しましたが、動画がデジタル化する前に、原画が各々好きなソフトでデジタル化を始めました。
紙でないとチェックできないケースが多かったので、プリントアウトすれば済むから、書き出しサイズのみ指定されていて、その他のフォーマットは作業者次第。
ただし、動画はそうはいきません。
コピーしたものを原版と重ねたらずれてるように、プリントアウトする時にはどうしても微妙なずれが出来てしまいます。
そのため、動画は仕上げや撮影の仕様に合わせたデータで納品する必要があるので、「描ければいい」という訳には行きません。
現状、クリスタ以外のソフトはPCでないと使えません。(TVPにはandroid版もあるようですが)
私も一時はStylosでデジタル動画の勉強をしてましたが、どうしても思うような線が引けずにいたところ、見学に行った先でiPad版のクリスタに触れる機会があり、劇的に描きやすかったため、思い切ってiPad pro(12.9インチ)とApple Pencilを購入し、クリスタでデジタル動画の勉強を始めました。
PCでの勉強となると、教わりに行く先にもPCや液タブなどを用意してもらわないと勉強できませんし、こちらからPCを持ち込むのも現実的ではありませんが、iPadなので、これを持ってデジタル動画をやってる会社に修行に行ったりできたし、会社でも家でも使えるのですごく便利でした。
ざっくりいうと、iPad pro(256GB)、apple pencil、apple care、ペーパーライクフィルム、iPadケースなどで、当時(2019年)17万円くらいだったでしょうか。
キーボードは手持ちのbluetoothのがあったのでそれを活用。
PCでちょっといい液タブを買うだけでこれくらいの金額になることを思えば、iPadで一式揃える方が安上がりです。
アプリ代は買い切りではないけど、最初の半年は無料でした。(今は3か月無料かな?)
1年間のまとめ払いなら7800円なので、月額650円。
画面はもう少し大きな16インチくらいあると嬉しいですけど、現時点では12.9インチが最大。
もっと大きいのが欲しくなった時はPCに移行すればいいかと思います。
長くなりましたが、そんなわけで、私が選んだのはiPad版クリスタとなりました。
iPadであろうと、PCであろうと、アプリを開いたところで何をどうしたらいいのかわからないのは同じ。
何しろ、イラストにも漫画にも使える機能が満載で、アニメには不要なものもたくさん。
普段からイラストなどで使ってる人なら何となくわかるかもしれませんが、ずっと紙で動画を描いてた人間が初めてデジタル作画に挑戦するとなると…。
パソコンは何でもそうですが、使えれば便利だけど、便利に使うためには最初に面倒な設定を終えなくてはなりません。
日本アニメーションさんが、「動画作業」に向けてどのように設定すればいいか、便利なワークスペースや説明動画を公開してくださってます。
ワークスペースの設定は手間が掛かるかもしれませんが、テンプレートやオートアクションなどはとても便利なので、まずはこれらを見ながら頑張って設定してください。
ちなみに、日アニさんの設定の手順はiPadでもほとんど同じです。
右クリックは、Apple Pencilでは「Ctrlを押しながらタップ」ですので、それさえ覚えておけば設定できると思います。
【日本アニメーション流 デジタル動画作業の基本】
https://tips.clip-studio.com/ja-jp/series/461
【日本アニメーション デジタル作画講座 動画編】
https://www.youtube.com/watch?v=Nn0H6_-ue9I
日本アニメーション デジタル作画講座【動画編】動画・TP修正用素材集