セル画時代の合成 | 一本のネジ(アナログからデジタルへ〜手描き動画部)

一本のネジ(アナログからデジタルへ〜手描き動画部)

どの作品にも共通してる「動画作業において気をつけて欲しいこと」を書いてます。
動画をきちんと教えてもらってない人も増えてるようなので、参考にして頂けたらと思ってます。
今は、iPad版クリスタを使った動画作業の流れについて書き加えてるところです。

今、この話を書いても意味ないとは思いますが、セル画時代の合成の仕方について書いてみようと思います。

 
セル画時代、実線部分はトレスマシンという機械を使って、カーボンで複写してました。
鉛筆のタッチが活かされるので、迫力のある画面を作ることができました。
色トレスはアニメ用の絵の具を使って、ペンで手描きです。
間違って線を引いたらセルに傷が付いてしまうので、長い線を引くのにはかなりの技量を必要とします。
 
 
★トレスマシンで実線を複写する。
 
<手順1>
イメージ 1
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
まず、合成親アを合成の枚数分、トレスマシンに掛けます。
これで出来たものを「☆1」とします。
 
<手順2>
イメージ 2
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「☆1」に合成子(A-1’)のマシンをかけます。完成したセルの番号は「A-1」になります。
 
<手順3>
 
イメージ 3
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
同じく、「☆1」にA-2’を合成して「A-2」を作ります。
 
<手順4>
 
イメージ 4
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
同じく、「☆1」にA-3’を合成して「A-3」を作ります。
 
これで、実線部分のマシン掛けは終わり。
次は色トレスです。
(実線部分がかすれて薄い部分も、色トレス同様、手作業で修正します。)
 
★トレスのやり方
 
イメージ 5
色トレスはまず、合成アからA-1へトレスします。
 
 
 
 
 
次に、A-1’の動画からA-1へトレス。
これでA-1の色トレスは完了。
 
 
 
A-2の合成部分の色トレスは、合成アからではなく、トレスを完了したA-1からトレスします。
残りの色トレス部分はA-2’からトレス。
 
A-3も同様に、合成部分はA-1から、残りはA-3’からトレスします。
 
 
あとは、それぞれ普通に塗るだけ。
 
 
このように、セル画時代の合成は、完全に「線を繋いでから塗る」という方式でした。
合成親に関しては、動画は1枚の作画で済みますが、仕上げは枚数分 塗らなくてはなりません。
「動いてはいけない」ものですから、通常のトレスよりはるかに気を使うのに、別セル作画より枚数が減るという理不尽極まりない作業でした。
 
デジタル彩色になった事で、合成親はコピペ出来るようになったので、その点はずいぶん楽になったとは思いますが、別セルよりも、請求できる作業枚数が減る点では変わりません。
 
いつかは原画も動画も完全にデジタルになる日が来るかと思いますが、多重クミなどのセル重ねのミスは、アナログ的な組み立て方が頭の片隅に入っていると、多少は回避できるかもしれません。
 
動画の絵は、線だけで構成されてるのではなく、色を塗られた面が重なっているのだという事を理解して作画してほしいです。
 
---
セル画時代も、原画さんには、動画以降の作業工程のことを考えて組み立てて欲しいと思ってました。
枚数を抑えるためなのか、勲章をいっぱいつけた服なのに体ごとセリフ合成してるとか、勘弁してほしいと。
顎が動くから合成にしなくてはならないなら、せめて体は別セルで、頭だけを合成にしてほしいのに。
 
デジタルになった今でももちろん、動画以降の作業工程を理解して原画を描いてもらえるとすごく助かりますし、アナログ時代の用語が残ってたりします。
アナログ時代の事を勉強するのも、多少は役に立つかと。
 
最近は、動画経験がないまま原画を描かされる事もあるようですが、できれば、動画時にいろんなカットを体験して、効率よく作業できるよう組み立てられる原画マンになってほしいです。