線合成と面合成 その2 | 一本のネジ(アナログからデジタルへ〜手描き動画部)

一本のネジ(アナログからデジタルへ〜手描き動画部)

どの作品にも共通してる「動画作業において気をつけて欲しいこと」を書いてます。
動画をきちんと教えてもらってない人も増えてるようなので、参考にして頂けたらと思ってます。
今は、iPad版クリスタを使った動画作業の流れについて書き加えてるところです。

前回は、線合成と面合成について書いてみましたが、仕上げさんに聞いてみると、「線合成とか面合成なんて言葉を知らない」とか「どっちも同じ」というような話を聞きます。
アナログ(セル画)からデジタル仕上げに移行した際に、仕上げサイドからの要請で「線合成と面合成」というものが出来たのだと思っていた私としては不思議な話でした。
現時点(2018年)、多くのアニメスタジオで仕上げ作業に使われてる彩色用のソフトはRETASですが、あいにく、デジタル仕上げに移行した時期に私が所属していた所では違うソフトを使っていたので、どのような検証がなされて、今のような形になったのかわかりません。
 
ただ、デジタル黎明期は複数のソフトが使われ、各会社、各ソフトによってルールが定められ、同じ会社の作品だからとか、同じ動画チェックさんだから…という形で前作のルールが引き継がれていったように思えます。
そのため、同じ言葉でも微妙に意味合いが違うのではないかと。
 
例えば、線合成。
 
下記の図でいうと、動画としてはA,B,Cがいずれも線合成で、Dは面合成。
でも、仕上げからすると、線の途中で繋げているAだけが線合成で、BもCも面合成と変わらないのではないか。
もしかしたら、動かない部分を同トレスしているBも線合成に含まれるかもしれないけれど。
 
イメージ 1
 
明らかに肌の途中に塗り分け線があるDはともかく、A,B,Cの違いは分かりにくいですね。
 
Aの子の拡大図はこちら
イメージ 2
 
 
 
 
 
 
 
Aは、顔の奥の髪の毛の動かない部分は親に描きこみで、開き口で隠れている部分(髪の毛)を、閉じ口に足してます。(顎の下の髭っぽい線がそれです。)
Bは、顔の奥の髪の毛を全て子に描きこんでいています。同トレスなので微妙にブレが生じてます。
Cは、動かない部分は親に多めに描きこんでいて、不要な部分は仕上げ時に消してもらいます。
 
セル画時代の合成といえば、AかBでした。
静物などは極力ブレさせたくないのでAパターン、髪の毛のように多少ぶれても不自然でないものはBパターンでしょうか。
 
それがデジタル彩色になり、上に被せれば自動的に余分な線を消せるようになったり(Cパターン)、肌の途中からでも合成が出来る(Dパターン)ようになった事で、アナログ時代の「線を繋いでから塗る」のではなく、「塗ってから重ねる」事も出来るんだよ、という説明の過程で「線合成」「面合成」という言葉が出来たように思えます。
(デジタル初期の作品の注意事項を読むと、線合成、面合成の名前が使われてなかったりするので。)
 
アナログ時代に近いやり方の「線合成」と、別セルのようなやり方の「面合成」。
ベテランになると、それまでのやり方とは明らかに違う面合成は理解しづらく、昔ながらのやり方が、「線合成」という形で残ってるのかと。
 
どのように彩色が行われてるかを知らない作画にはその説明が一番わかりやすいでしょう。
でも実際は、前にも説明した通り、動画の言う「線合成」であっても、クミを必要とする部分以外は「塗ってから重ねている」わけです。
そして、面合成であっても、クミを必要とするところは、「絵を重ねてから塗っている」ので、線も面も、作業工程に大きな違いは無いようです。
 
複雑な絵の場合は、面合成の方が「どちらの線を生かすのか」「どちらの物体が手前なのか」がわかりやすいとは思いますが。
 
作画注意事項に「同一セル内での線と面の混合は避けてください」との記述があり、それが何故ダメなのかは、いまだにわかりません。
自分で作業してみても問題なかったし、仕上げさんに聞いてもわからないので、うちではその文言は削除しようかと思いましたが、まだ各仕上げ会社に確認は取れてないので、一応、残してあります。
(2019年現在、「混在不可」の文言は削除してます。)
 
違う会社からでも同じ仕上げ会社に仕事が回ることを考えると、「会社によってやり方が違う」という言葉だけでは語れない気がします。
 
正解はわかりませんが、同じ言葉でも立場によって違う意味にとらえてる事がありそう、とだけでも意識しておくと良いのかもしれません。