◎日本の神話・黄泉の国(よみのくに)
伊弉冉(いざなみ)の神は、日本列島を生み出したのに続き、岩、土、砂、海、山、河、家、船、食料などの神様を次々にお生みになりました。しかし、火の神様を生んだときに、伊弉冉の神は体をこわし亡くなってしまいました。夫である伊弉諾(いざなき)の神はかなしみ、死者が行く黄泉の国(よみのくに)に向かい伊弉冉の神に地上に戻るように説得しました。伊弉冉の神は「私は黄泉の国で食事をしたので、この国を離れることはできません。とにかくこの国の神様と相談します。私の姿を決して見てはいけませんよ。」と返事しました。しかし伊弉諾の神は待ちきれず見てしまいました。伊弉冉の神の体はウジ虫が集まり、雷の神様が出現しつつありました。びっくりして逃げようとする伊弉諾に対して、伊弉冉の神は「私に恥をかかせましたね」といって恐ろしい鬼女、豫母都志許賣(よもつしこめ)に追っかけさせました。やっとのことで伊弉諾の神は逃げ切り、境目に大きな石を置いて伊弉冉の神に離婚を告げました。伊弉冉の神は「離婚するなら、お前の国の人を一日に千人殺す」といいました。対して伊弉諾の神は「それなら、私は一日に千五百の産屋(うぶや)を立てよう」といいました。
【参考文献】
「黄泉国・夜見国」(宮地直一・佐伯有義監修『神道大辞典』平凡社、昭和十二年)
西岡和彦「黄泉」(國學院大學日本文化研究所編『神道事典』弘文堂、平成六年)
西宮一民校注『新潮日本古典集成 古事記』(新潮社、昭和五十四年)
山口佳紀・神野志隆光編『新編日本古典文学全集(1)古事記』(小学館、平成九年)
小島憲之・西宮一民・毛利正守・直木孝次郎・蔵中進編『新編日本古典文学全集(2)日本書紀1』(小学館、平成六年)
出雲井昌『にっぽんのかみさまのおなはし』(産経新聞社、平成十一年)
鈴木三重吉『古事記物語』(角川ソフィア文庫、平成十五年)
本澤雅史「神話を語る」(『鎮守の森を保育の庭に』上巻、株式会社学習研究社、平成十三年)