◎狛犬(こまいぬ)
神社の参道の両脇、あるいは拝殿(はいでん)の前や本殿の内外に対になって据えられている像が、狛犬(こまいぬ)です。起源については諸説あるものの、エジプト、ペルシャ、インドのライオン像が、中国などを経て日本にもたらされたとおおむね考えられています。朝鮮半島のことを古くは高麗(こうらい・こま)とよんだことから、「高麗犬」とよばれましたが、特に朝鮮半島をさすわけではなく外来の犬というぐらいの意味と考えられます、はじめは、天皇や貴族の住まいにおいて、間仕切りとして垂らされた布のすそをおさえるために使用されました。のちには魔除とも考えられるようになり、社寺にも守護と装飾の意味で用いられるようになったといわれます。なお、狛犬といっても、実は向かって左にいるのは獅子で、右が狛犬とされます。京都の護王(ごおう)神社の猪、東京の日枝(ひえ)神社の猿のように、狛犬の役割を他の動物の像が果たす場合もあります。
【参考文献】
「狛犬・高麗犬・胡麻犬」(宮地直一・佐伯有義監修『神道大辞典』平凡社、昭和十二年)
中山郁「狛犬」(國學院大學日本文化研究所編『神道事典』弘文堂、平成六年)
上杉千郷『狛犬事典』(戎光祥出版、平成十三年)
川勝政太郎「狛犬」(薗田稔・橋本政宣編『神道史大辞典』吉川弘文館、平成十六年)
上杉千郷『日本全国獅子・狛犬ものがたり』(戎光祥出版、平成二十年)