ブチ切れたお話からのつづきです。
第10話。『ふと感じた違和感』
坂本さん、マネージャー、僕の
3人で話し合いを始める時の話です。
坂本さんとしばらく睨み合いが続いた後、
根負けした坂本さんがマネージャーに
「話がないようなら帰っていい?」と話を振った
ところから、ようやく話が進み始めました。
僕を睨みつける行為といい、マネージャーに言った
言葉といい、まるで自分の置かれた状況が
わかっていないんだなと思いました。
話をし始めてから、この話し合いのやりとりを録音しておく
ことを忘れていたのに気づき、スマホのアプリを使って
録音の準備を始めました。
僕がスマホを手に取って録音の準備を始めた途端、
坂本さんはしゃべるのを突然やめました。
操作をしながら、なんで話すのをやめたんだろう?
と不思議に思っていました。
録音の準備が終わり、スマホを机の上に静かに置くと、
「あんた、録音するなら、前もってやっておいてくれ。」
と坂本さんが言いました。
あれ?なんで僕が録音してるってわかったんだろう?
と思いました。
でもその時は不思議に思いながらも、
話を続けていきました。
しかし事情聴取が終わり家に帰ってひと息ついた時、
そのことをふと思い出したのです。
あの状況でスマホをいじっていて、
それを録音だと気づくだろうか?
少なくとも僕が坂本さんの立場だったら、LINEやネットで
何かを確認しているとしか考えないでしょう。
つまり、こういうことではないのか?
坂本さんは、こういった人間関係の
トラブルをしょっちゅう抱えている。
そして、相手側が会話を録音していることが多いのではないか。
だから僕が録音しているのもすぐにわかった。
この考えだと、一連の流れに感じていた違和感が払拭され、
全てに辻褄が合います。
また、警察官と坂本さんとのやりとりでも
違和感を感じていました。
警察官から事情聴取を受けているのにも関わらず、
坂本さんは雑談とかしてて、何か楽しそうだったのです。
その時は、問題をはぐらかそうとしている。
または、自分の印象を少しでもよくしようとしている
姑息な手段だと思っていました。
しかしこのことについても、家に帰ってひと息ついた時、
全く別の見方が頭に浮かんできたのです。
本来警察から事情聴取を受けることになれば、
自分は警察に捕まってしまうかもしれない
という考えが頭をよぎり、
緊張してくるんじゃないかと思います。
でも事情聴取に慣れていたら?
このくらいでは捕まらないと
多くの経験からわかっているとしたら?
また、別の見方も浮かんできました。
人間関係でトラブルばかり、事情聴取を受けるのもお手の物。
そんな人に人は寄ってくるだろうか?
たぶん離れていくばかりだと思います。
いつも孤独。
だから、自分自身が人に迷惑をかけて
事情聴取を受けているのに、
その迷惑行為をやめるように警察官から説得されているのに、
そんな状況ですら人と話せていることが嬉しい、楽しい。
のではないか?
もしも自分が坂本さんの立場であったならば、
そういった立場を客観的に、俯瞰的に見てしまったら、
なんともいたたまれない、
自分がみじめでみじめでしょうがない。
そんな気分に僕はなると思います。
そう考えると、彼が僕にした行為は
簡単に許せるものではないけれど、
「今までのことは、大目にみてあげるか」
という気分に傾いてきました。
なんと慈悲深い錦ちゃんであることよ。
上の「錦ちゃん」という文字から
後光が差し込んで見えてきませんか?

つづく。
次回「サイコパス」