ブチ切れたお話からのつづきです。
第13話(最終話)
俺は坂本さんから暴言を吐かれるようになって、
3回目の時、3ヶ月ほど軽いパニック障害になった。
4回目の時、2週間以上眠れぬ夜が続いた。
食欲がなくなり、体はこわばり、
疲れが抜けなくなった。
10日ほどで体重が一気に3kgも落ちてしまった。
それに伴い、体力も筋力も落ちてしまった。
警察沙汰になったことで、
まわりの俺を見る目も変わった。
また、俺の知っている限りに於いて、
10年以上に渡り、俺以外の人も多く傷つけられてきた。
俺が知っているだけでも、延べ100人以上。
警察の事情聴取があった翌日、
警察からジムへ来る時間をできるだけズラすように
言われていたのにも関わらず、
全く同じ時間に坂本さんは現れた。その翌日もまた。
そのことをマネージャーに報告した。
事情聴取後4日目。
トレーニングを終えロッカールームへ戻ると、
坂本さんがいて、これから風呂に入ろうとしていた。
またいるよと思った。
無視してストレッチへ向かう。
20分後ストレッチから戻ってくると、
もう風呂から上がっていた。
坂本包囲網が、ようやく効力を発揮し始めたようだ。
風呂が生きがいの彼にとっては、
かなりの制限がつくことになる。
それでも彼は、ここを辞めないだろう。
他に行くところがないから。
風呂に入る準備をしていたら、
彼とスタッフとのやりとりが聞こえてきた。
スタッフにクレームを言っても、彼は強制退会となる。
なんとなく聞いていただけだが、
彼とスタッフとの会話が、
わけのわからん内容になっていた。
本来なら
「風呂場にある燃えないゴミのゴミ箱を撤去しろ」
とクレームを言いたかったのだろう。
でもそれができないから、
「カミソリは、燃えるゴミ燃えないゴミどっち?」
というどうでもいいような質問が、
会話の最後の締めくくりとなっていた。
よっぽど人と話をしたいんだろう。
でも他の人の粗探しをして指摘したり、
クレームを言うという方法でしか、
人との会話のやり方を知らないのだろう。
本当に憐れな男だ。
勝利。
したのだろうか。
勝利と呼べるのだろうか。
勝利はしたものの、こころに刻み込まれた傷を
全くなかったことにできるわけではない。
言葉として実ることを許されず、
泣き寝入りをせざるを得なかった多くの人々への、
せめてものはなむけとならんことを。


了