デイビッド・ハルバースタム『ベスト&ブライテスト 1』 | (元)無気力東大院生の不労生活

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勤労意欲がなく、東京大学の大学院に逃げ込んだ無気力な人間の記録。
学費を捻出するために、不労所得を確保することに奮闘中。
でした。

 デイビッド・ハルバースタム『ベスト&ブライテスト 1』を読了。


 ベトナム戦争の泥沼に陥った原因を多角的に論じた作品の第1巻。

 この巻では、ケネディが大統領選に勝ち、1961年のテーラー勧告後に、ベトナムへ援助軍と軍事顧問を派遣したところまでが書かれている。

 

 ベスト&ブライテストということで、確かに優秀な人が政権内部に配置されたのだが、この本を読むと分かるように、優秀な人が集まり過ぎると、時に重要なポジションに誰を据えるべきかもめて、結局、可も不可もない凡庸な人がそのポジションに置かれることになる。

 ケネディ政権の場合、それは国務長官のラスクがそれにあたるようで、本書でも、事あるごとに国務省が機能不全に陥り、国を誤らせる政策判断がことごとく下されていく様子が書かれている。


 その他にも、「優秀」ではあるものの、盲信に囚われ、間違った判断に基づいて突き進む「残念な」高官が沢山登場する。


 結果を知っているからこそ言えることかもしれないが、もう少し疑うということをすれば、無茶な戦争に突き進まずとも済んだのにと思わざるを得ない。

 実際、この本でも再三、間違った方向に向かいそうになるところを、何とかして止めようとする人々も登場する。


 例えば、遡ること1954年、アイゼンハワード政権下、フランス軍がベトミンとの戦いに負けそうな時に、軍事的介入を主張する声が高まった。この時には、誰も責任を取らず誰も望まない戦争に突入しそうになるも、陸軍参謀総長リッジウエイ将軍がインドシナに調査団を派遣し、必要な兵力を算定させ、莫大な兵力が必要となることを明らかにし、介入に反対したために、介入に至らなかった。


 こういうことがあっても、結局は泥沼へ嵌ることを避けられなかった。

 歴史の必然と言ってしまえば簡単だが、どうにかならなかったのかと思わざるを得ない。


ベスト&ブライテスト〈上〉栄光と興奮に憑かれて (朝日文庫)/デイヴィッド ハルバースタム
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