川崎の会合のA氏からの思いがけない誘いは、ミャンマーへの企業進出の会合でA氏が電動自転車の工場設立・販売のプレゼンを行うので参加して様々な企業の社長さんと交流してみないか?というものでした。
私は、工業系の学校を卒業していたものの、専攻は土木工学で、機械工学ではないし、機械製作・販売なんて自分には縁遠いものだと感じていましたが、せっかくの機会なので参加し様々な人々と交流してみようと考えたのです。
A氏と数回面会し、彼の今までのお話を伺って分かったのですが、彼は中国で電動自転車を制作・販売していた実績があるし、中国の部品マーケットにも多くの知り合いがいるということでした。
つまり、格安で部品を仕入れることが出来る。
現在、ミャンマーの経済は火が点いてきたと言ってもアジアではかなり低いレベルにあるため人件費も安い。そこで、軽易に組み立て出来る電動自転車であればミャンマー人工員でもすぐに作業を覚えられるし、早い段階で事業を軌道に乗せることが出来るであろうと考えていたのです。
そこで、そのプレゼンに参加し、この事業に興味のある中小企業の社長達とお話し、定期的に会議を開くことになったのです。
しかし、私は心の中で大きな疑問を抱えていました。「私がどのようにこの事業に関われるのかわからない。A氏はどのように考えておられるのか?私が、ただ困っているから巻き込みたいだけなのか?」ということを本人に訊いてみることにしました。
答えは「やっぱり教育は重要だし、我々は英語を話すことが出来ないから君がいれば助かる。だから携わってくれ。」と言ったものでした。
腑に落ちないところはありましたが、少し様子を見ていくことにしました。そして電動自転車会議を重ねていくと、他の社長達からミャンマーに関する有用な情報が集まり始めました。
「ミャンマー最大の都市、ヤンゴンではモーターバイクや電動機付き自転車などの運行は禁止されている。」
「ヤンゴンは地価が非常に高騰し、外国人が起業するのであれば多くの資金を必要とする。」
「ミャンマー国内で需要が見込めないのであれば近隣諸国に輸出する手もあるが、近隣の中国やタイでは既に電動自転車は飽和状態で、電動自転車より普通の自転車の方の売り上げが上がっているようだ。」などのです。
結局、この電動自転車事業部会は数回の会議を経たところでA氏からのメールで事業計画中止が伝えられました。私は、計画とん挫に落胆しましたし、自衛隊であれば決してこのような計画の進行は無いだろうなと思いました。参加者の足並みの不揃いさにも驚きました。結局、面白そうだな、金になるのかな、とりあえず首突っ込んでみるか位の感じなのにはびっくりです。
私が今まで経験したことがない感覚であったので新鮮ではありましたし、日本人の商いを考えれば、一旦スタートしたらバリバリ進行するのであろう勢いは感じました。
結局、A氏との縁はここで切れてしまいます。彼は、現在でも川崎のとある中小企業の会合の理事としてご活躍されていると思いますが、以降、会う機会を失してしまいました。ご健勝を祈念致しております。続く