2015年の暮れ、多くの企業にリーダーシップ研修の営業をかけていた時期ですが、どうも芳しい営業成果が出なかった時期です。多くの企業の研修担当者や社長、また人事担当者とお話をさせていただいたのですが、ほとんどの方々は「非常に素晴らしい研修内容ですが、うちとしては営業成績・結果・利益に繋がるものが欲しい。また多くの時間を人材育成に使えない台所事情があるので短期、早い話、2日間位で済ませたい。」など、結果、なかなか契約に繋がらない苦しい時期が続いていたときのことです。
私の本音から言わせていただければ、「勿論、多くの時間を人材育成に使えないという事情は理解できる。しかし、ノウハウだけでリーダーシップの本質は理解できないし、ある程度の期間を頂きながら、共に歩きながら改善を見ていかなければ企業・組織の強化は難しい。研修期間内に最低2回くらい圧力をかけて困難な状況を作為し、その中で実地で人を率いていくこと、従うこと、そして団結心の醸成を図ることが望ましい。」と考えていますから、「リーダーシップで重要なのは次の3つの項目です」、なんていってそれを字面で学んでも具現化出来るわけがないのです。
肚で読み、肚で理解していかなければ難しいと思っているのです。これは、私が自衛官時代、500人を超える自衛官を育成してきた経験から感じていることです。それでも感化出来ない自衛官もいました。多くの国民の皆様が期待するような自衛官ばかりが自衛隊にいるわけではありません。練度不足な自衛官もいますし、士気の低い者や問題を抱えている自衛官もいます。又は、流石、自衛官やミスター自衛官、国防に燃える自衛官、本当に任務を肚で理解し実践している素晴らしい自衛官も勿論沢山います。私が携わってきたのは陸曹と言われる下士官に対する英語教育でした。勿論、ここでも識能(英語・日本語教育、日本の伝統・文化・歴史、米軍の作戦や戦術に関する英語教育、通訳・翻訳技術)のみならず言葉を操って任務を遂行する兵士として資質の向上も必須でしたのでリーダーシップ教育を基礎とし、部隊行動、起居容儀に関する事項についても徹底的に教育を行ってきました。
当時は、朝は7時には事務室におり、そこから夜の9時、10時まで学生と共に過ごし、まさに全身全霊で隊員教育に当たっていました。それでも彼らを感化しリーダーにするためには半年かかるのです。毎日やってもその位かかります。多くの隊員は、半年後、精悍で凛とした顔つきになります。使命感を胸に刻み、事に臨む気構えを持って任務に向き合えるようになります。この現実を知っているため、多くの企業の担当者の返答に落胆し、どのようにしていけばいいのだろうかと途方に暮れていました。
そんな時、川崎でとある会合があるというのを知り、川崎の中小企業の社長が集まって情報交換、ビジネスマッチング、各種講習の機会があるということでそこに顔を出すようになったのです。そこで出会ったのが会合の理事の面々でした。その理事のA氏に窮状について相談し、何とか突破口を見つけようとしたのです。そこでA氏から思いがけないお誘いを受けたのです。
続く。