米軍 その4
オバマ大統領は、穏健派で知られていることは有名です。
彼は、ソフト外交路線を貫く姿勢を見せ、「核なき世界」の構築に向け世界に働きかける姿勢が評価されてノーベル賞も受賞しています。
彼は、大統領選挙の予備選以降、国民との公約として掲げていたのが、イラク戦争の終結とアフガニスタンでのWOTに目処をつけるというものでした。
しかし、この問題は、想像していたものより複雑で、簡単に終わらせることができなかったのです。
アフガニスタンには現在でも1万人近くの米軍が展開しています。
彼は、2016年までに駐留米軍の数を1000名位まで削減させる予定ではありましたが、方針を転換し、2017年以降もアフガニスタンに一定の数の米軍を駐留させる考えです。
その理由としては、米軍はアフガニスタン軍を教育・訓練をし、タリバンやアルカイダに対し、対テロ作戦を実行できるようにしているがまだ練度が上がっていないということと、イスラム国が拠点を固めつつあるため、米軍の拠点を確保しておく、ということが挙げられます。
さて、アメリカとイスラエルの関係は特別である、ということは皆さんご存知のところだと思います。
イスラエルは、政界・財界を始めとしたアメリカ社会にユダヤ系アメリカ人が多いこともあって、イスラエル系のロビー活動がアメリカの政策決定や経済活動に多大な影響力を持っています。
オバマ政権となってからイスラエルとアメリカの関係は冷え込んでいますが、イスラエルの影響はアメリカでは依然として大きいのです。
この関係でひとつ明確に言えることは、中東におけるアメリカの最も重要な同盟国はイスラエルであり、イスラエルはアメリカの軍事力に大きく依存しています。
アメリカの中東における重要同盟国に敵対しているのが現シリアの「アサド政権」です。
この「アサド政権」に対抗しているのがISISであるイスラム国なのです。
ですからアメリカはイスラム国叩きには本腰を入れておりませんでした。
ここで、ヨーロッパにシリア難民が多く流入してきました。
これに混じってテロリストもヨーロッパに入りパリ同時多発テロを引き起こしたのです。
フランスの大統領は「非常事態宣言」を発し、イスラム国と戦闘状態に入ったのです。
こうなっては、アメリカもイスラム国に対する攻撃を本気でやらなくてはならなくなりました。
また、ロシアの旅客機もテロで爆破されました。
プーチン大統領とオバマ大統領は話し合い、対イスラム国攻撃を本格的に実施することで一致しました。
ここで、米軍はイスラム国への攻撃を効果的に実施するためイラクへ地上部隊を送り込むことを考えているのです。
中東は、アメリカにとって資源を抱える重要な地域でした。
そのため、過去、アメリカは中東情勢にコミットしてきたわけです。
これからもコミットしていくのは変わらないと考えられますが、ポイントは資源というよりテロやイスラム国にシフトしていくと考えたほうが良いでしょう。
今、アメリカは、シェール石油を得ることができ、世界一の産油国・エネルギー資源国となる可能性が高いため、中東の石油に依存する必要がないのです。
実際、世界一の産油国であるサウジアラビア等産油国が加盟しているOPECが月初めに開催されましたが、減産をして石油価格の下落を抑制することもできなくなり組織としての体をなさない状態です。
このままでは、1バレル40ドル前後で取引されている石油は20ドルまで最悪下落するのではないかという見方まで出ております。
その理由としてインドネシアがOPECに加盟することで更に全体的な産油量が更に増加するという見通しがあることです。
もう一点は、イランなのです。
イランに対する経済制裁が来年解かれるという見通しです。
そもそもアメリカが旗頭となってイランを目の敵にしてきた理由はイスラエルです。
イスラエルはあの地域で唯一のユダヤ教国家です。
周りはイスラム国家で睨まれている状態です。
中でも最大の仮想敵国として考えられているのがイランなわけです。
ここで問題なのが、イランは一度も核兵器のために核開発をしているとは発言していません。
これは、全て原発用であると宣言しています。
実際IAEAが査察を行った時も核兵器開発に関する証拠は何もないと明言しております。
よって、経済制裁が解かれるのは時間の問題なのです。
ここで、アメリカとイランが仲良くなってしまうと困ると考えているのがイスラエルなんです。
非常に複雑です。
この様に国の方針によって戦略が決められ、その戦略を達成するため、国力の一つである軍隊が動かされるわけです。
今は、世界の世論は打倒テロに動いています。
アメリカは、当然対テロの先頭に立って動かなければなりません。
シリアにおけるイスラム国空爆の頻度は増し、地上戦が行われる可能性があります。
イラクでの占領政策の失敗から米軍は多くの教訓を得ています。
それらをこれからのイスラム国との戦いにどういかされていくのでしょうか。
続く