第5回 大統領と軍隊 | 熱血講師 ショーン 近藤 Leadership & Language Boot Camp

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5回 大統領と軍隊


今回は、大統領と軍隊に関してお話を進めていきたいと思います。


皆さん、ご存じのようにアメリカの大統領は4年に1度、直接選挙で新任されるか、若しくは再任されますよね。


この際、非常に大事なのが「国民の信任」を選挙戦中に如何に勝ち得るかというのがポイントとなってきます。


時勢を知り、策を練ることが重要となってきます。


オバマ大統領誕生に際し、時勢はどうだったのか振り返ってみたいと思います。


まず、当時多くのアメリカ人が懐疑的になっていたのは、イラク戦争についてでした。


2003年、アメリカは、イラクは大量破壊兵器を破棄せず、保有しているということで国連安保理決議を根拠とし開戦したのです。


これは、テロとの戦いの一部でありアメリカは多くの兵力をイラクに展開しました。



この頃アフガニスタンでも同時並行的に軍事作戦が行われており、米軍は正規軍だけでは対応ができず、州兵も展開しなければならないような状況でした。


更には予備役の補充も非常に大きな問題となっていきました。


州兵の大多数(本部要員を除く)は職業軍人ではなく、普段は違う職業を持っています。


例えば、アメリカン・エアラインで働く人であったり、スーパーの従業員であったりと普段の生活では軍人ではなく一般市民として生きているのです。


州兵の基本的役割は、本土防衛が主たる任務となります。


よってアメリカ本土に何らかの危機が迫っている場合、彼らは招集され軍人として運用されます。


例えば、ハリケーン・カトリーナなどの自然災害が発生したときは、招集され、州兵として治安維持や災害派遣などを行うわけです。


しかし、このテロとの戦いは正規軍だけでは部隊の交代がままならず、州兵を必要とするほど大量の兵力を必要としたのです。


また予備役も多く招集され部隊に配属されていきました。


予備役も通常は、軍人ではなく、他に職業を持っています。


普段軍人ではない彼らが戦場に行かなければならないという状況がありました。


2014年までにこのテロとの戦いで戦場で亡くなった米兵は6800名を超えます。


この大きな数の正規軍兵士(職業軍人)、州兵、予備役が戦場で命を落とし、また120名弱の帰還兵が自殺又は自殺未遂している現状があります。


オバマ大統領が選挙戦に出ていた2008年の頃は、このような大きな数字ではなかったと思われますが、それでも多くの兵士が犠牲になっていました。


多くの家庭の、父であり、母であり、息子であり、娘が戦場で命を落としている現実にアメリカ人は耐えられなくなっていたのです。


その時です。


オバマ大統領候補が現れ、国民に問いかけたのです。


「過去の8年間を変えなければいけない。」「Yes, we can !」の連呼です。


国民は、若きリーダーの力強いアピールに陶酔しました。


オバマ候補は国民にこう約束したのです。


「粘り強い直接外交を復活させる。」そして「明確な使命が無い限り、軍を戦地に派遣することはしない。」と。


正規軍の家族もこの決定に喜んだのです。


また、大統領選挙期間中に「大統領就任後16カ月以内にアメリカ軍のイラクからの完全撤退を公約に掲げたのです。


これらは、実現することはありませんでした。


しかし、当時のアメリカ人からの「信頼と信任」を勝ち得るには十分でした。


そしてオバマ大統領は、国民の圧倒的支持の元、誕生したわけです。


軍の作戦、行動、問題などが選挙にも大きく影響した事例です。



では、大統領と軍はどのような関係にあるのでしょう。


大統領は軍の最高司令官Commander-in-Chiefです。


大統領が軍の行動について指揮権を有しています。


宣戦布告は議会に権限があり、軍隊を募集し統制することも議会の権限となっています。

しかし、昨今、議会の宣戦布告を待っていれば先制攻撃が不可能になってしまったり、逆に先制攻撃を受けることになってしまう恐れがあるため、大統領は、保有する指揮権を根拠に戦争を開始するのが慣例となっています。


アメリカが正式に宣戦布告した最後の戦争は第2次世界大戦です。


以降の戦争については大統領の指揮権という根拠に基づいて戦争が行われています。


しかし、ベトナム戦争(アメリカ敗戦)でのなし崩し的な戦線拡大から大統領の権限に一定の規制を設けています。


また軍の指揮権とは異なりますが、大統領は核兵器使用の権限も持っています。



大統領は、国のリーダーですから選挙公約を果たし、国益を追求すべく、国家戦略を練っていきます。


勿論、それは国益をもたらすものでなくてはなりません。


例えば、オバマ大統領は、医療保険改革(オバマケア)、環境政策(二酸化炭素削減)、外交・安全保障(テロ対策)、先住民対策等様々な問題に対し取り組むことを公約に掲げてきました。


これらを成功させ、国の舵取りを上手くこなすことで再選にもつながります。


また、大統領の仕事を国民が満足できないのであれば、再選も果たせないでしょう。


国民からの「信用・信任」が非常に重要となってくるのです。


ここで復習しておくべきことは、アメリカが国家戦略を打ち出し、国益を追求していく際に重要なことは、国力を十分に活用し国家の舵取りをしていかなければならないということです。


その国力とは、情報・経済・外交・軍事の4つです。これらの4つの力を使い国を動かします。これら4つは有機的につながっていると言えます。


今、アメリカが安全保障の分野で抱えている問題は、未だアフガニスタンを含む中東の問題です。


まだ、タリバンやアルカイダの壊滅には至っておりません。


また台頭するイスラム国への対処も大きな課題です。


依然ソマリア沖での海賊対処、更に中国の南沙諸島沖で8つの岩礁に人工島を築き軍事拠点化及び実効支配に対する対処も喫緊の課題です。


フィリピン、マレーシア及びアメリカは中国を非難していますが、中国は、自国の領土で行っていることに他国は干渉すべきではないという主張を繰り返しています。


中東問題も中国問題も外交を駆使しつつ、必要とあれば軍事力の行使を念頭に置かなければなりません。


また、ここに絡んでくるのは経済です。


世界でやり取りされている多くのガスと石油はこの海域を通過しなければならないのです。


これからイランへの経済制裁が解かれ、イランも原油産出に大きく舵を切り、原油の値段は大きく落ち込むことでしょう。


現在43ドルくらいの原油は20ドル台まで落ちるのではないかと考えられています。


この原油の下落は、アメリカの経済にどのような影響をもたらすかを考えなければなりません。


また、トルコとロシアの緊張も大きく影響してきます。


ここにも軍事的要素が多分に詰まっています。


様々な要素が複雑に絡み合う情勢に関する情報をいち早く得ることにより、経済への影響を考え、外交手段をもって懸念事項を解決し、また最終的には軍事力を行使し、国益を追求するのです。


軍事力は、大統領にとって、なくてはならない一つの力なのです。


ただし、大統領に選出されるためにも慎重に運用しなければならない組織の一つです。


兵士の命と彼らの家族の人生が大統領の決心にかかっているわけですから。