人生初の通訳!ほろ苦いデビュー! | 熱血講師 ショーン 近藤 Leadership & Language Boot Camp

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初通訳!

日米共同指揮所演習YSの事前訓練も終盤に差し掛かった頃、我が空域統制調整所(A2C2)の米軍のカウンターパートが仙台に到着しました。

その名もG3Airです。

なんか、格好良くないですか?A2C2だのG3Airだの。

名前は格好いいんです。

因みにA2C2とは、Army Airspace Command and controlの訳です。

直訳すると陸軍空域指揮統制となります。

つまりその任務をになっている部署は私が所属していた部署です。

そのため、空域統制調整所はA2C2と呼ばれています。

そして我々のカウンターパート(対応する部署)がG3Airとなります。

この説明は軍事的に複雑なため、簡略化して説明しますと、軍団作戦部の中にある航空部門です。

軍団には、人事、軍事情報、作戦、兵站、計画、通信情報管理、通報・影響行動、資源管理、軍民統一作戦に関する大きな部門が存在し、その中の作戦部の航空に関することを一手に引き受ける部署が存在するわけです。

ここは、平素のパイロット、整備、気象、及び航空管制に関する教育・訓練を担当し、有事の際は、航空幕僚として軍団が行う作戦に関し、当該作戦における航空部隊の運用について担任するのです。

従って、その部署には空域の統制・調整を担当する部署があります。

それが、我々のカウンターパートとなります。

以上が、ざっくりとした説明になります。

そのG3Airの兵士が仙台駐屯地に到着し演習本番のために様々な調整・準備に入っていました。

その頃、我が管制隊長は「士気を上げ、また団結を高めるためにも一回、懇親会を開くべきではないか。」とA2C2長に具申しておりました。

そこで、長は米軍のG3Airの都合を聞いて、駐屯地近傍の居酒屋かどっかで団結会を開くこと決定したのです。

長(○○2佐)は、「管制隊長、米側の長は少佐なので、彼に聞いて演習本番前に団結会をやってしまおう。それがいいだろう。」と言われ、「分かりました。団結会の段取りは陸曹にやらせます。

では、長の少佐に可能な時期をいくつか提示してもらい決めたいと思います。」と管制隊長。

その時、彼は私に目配せしていました。

その意味するところは、「通訳、よろしく頼むよ。今から、米G3Airにいくからついてこい。」というものでした。

私は、「げっ、心の準備も何もしていないのに、団結会実行可能時期を聞き出しに行くのか!やばいぞ!」と思っていました

今なら、そんなのなんちゅう事ないんですけど、当時、まだなんの英語教育も受けていなかったため、それはそれは恐ろしい状況だと思っていたのです。

「大体、米軍と面と向かって話もほとんどしたことないのに、こりゃまずいでしょ。業務じゃないけど業務調整みたいなもんじゃん。」と自分の頭の中は、通訳する前から、「言い訳」作りに勤しんでいたのです。

「隊長、自分できないです。無理です。うまく話せないと思います。」と言うと、隊長は「大丈夫、大丈夫。失敗してもいいから。これ仕事じゃないし。挨拶に行くようなものだと思って付いてくればいいから。」と私の心配は軽く一蹴されたのでした。

「なんてこった。とりあえず行くしかないか。失敗しても大丈夫って言ったし。ま、英語教育にも参加してないからダメ元だな。もし、うまくいったら自信つくかもしれないし、とりあえず行ってみよう。」ってなわけで隊長に同行したのです。

前にも説明しましたが、演習規模が大きいため仙台駐屯地グランドが指揮所として使用されていました。

野球場2面取れる程度の広さです。

そこに指揮所の天幕(テント)群があるわけです。

そこには、自衛隊側指揮所と米軍指揮所の二つが隣接しており、様々なところに共同調整所なるものや会議室が設けられているわけです。

私たちは、方面指揮所内のA2C2から、米軍指揮所のG3Airまで天幕から天幕を通り抜けて進んで行きました。

「陸曹になる前は、このグランドで散々訓練してたから狭いと思っていたんだけど、今日は米軍のところまで行くのにも凄い遠いなぁ。」というのが実感でした。

実際、私は、陸曹教育隊前期課程に入校し、ここ仙台駐屯地で3ヶ月訓練していたのでした。

さて米軍指揮所までには、様々な部署、人が目に飛び込んできたのでした。

全てが新鮮に感じられました。

そしてG3Airに到着したのです。

先ず、管制隊長が、長の陸軍少佐の人を探し始めました。

隊長は、その人の名前を知っているらしく、また、G3Airが入るであろう指揮所内の位置も既に確認していたようで直ぐに少佐を見つけたのです。

そして隊長が「おい、通訳頼むぞ。」と言ってきたのです。

「えっ、もうなの?マジ!」状態です。

頭の中は真っ白。

「失敗、隊長にどう話を切り出して、どう話を展開するのか聞いとけばよかった。」と思いましたが、後悔先に立たず。

南無三。

以下、通訳実況中継です。

隊長:「初めまして。日側のA2C2の管制幹部の○○1尉です。宜しくお願いいたします。」→握手を始める。

隊長、私を一瞥し、早く通訳しろという合図をする。

私:「えっ、え~無理でしょ。っていうかよろしくお願いしますって何?何?無理!」って心の中で叫び、 “Hello, nice to meet you. I am CPT ○○, Japanese A2C2.”と通訳。「やばい、おわってる。既に俺は死んでいる。」と思いつつ、隊長の言葉にものすごい神経を集中させて聞いていた。すると、

隊長:「お前さぁ、相手は階級上なんだからよ、サー付けなきゃダメだろ。サーだよ。」って言い始めたのです。

私:(サー?サーって何?何?何?無理じゃん。あ~、引き受けなきゃよかった。っていうか、なんでうちの部署、通訳頼んでないんだろ。最悪でしょ。)と思っていたのでした。

隊長:「あのさ、最後にサー付けるの。よくイエッサーって言ってるじゃん。」

私:「あー、それっすね。了解です。次から行きます。」と、なんともしょうもない状況です。

米少佐:“Pleasure to meet you, too. I am MAJ ○○. How are you?”

私:「会えて嬉しく思います。私は、○○少佐です。お元気ですか?」おっ、ここは上手くいけた!

隊長:「はい、元気です。ありがとうございましす。えー、我々日側で、今回の訓練を開始するにあたって米側のカウンターパートを呼んで団結会を実施して相互理解を深め、円滑な調整業務を実施できるようにしたいのですが、いかがでしょうか?」

私:(無理!長すぎる!日本語の意味もわからない!とりあえず、団結会のことだけ伝えよう!) “Ah, we would like to have a party before the training. Is it O.K.?”

隊長:「サー、付けろって言ってるじゃん。」

私:「あっ、すいません。次は必ず付けます!」(急に言われてもつけれないし)

少佐: “Oh, sounds good! We can take part in it but we need to check our schedule, first. I think we are going to have a lot of briefing before the training.”

私:「ん!えーっと、それはいいと言ってます。とりあえず、スケジュールをチェックしないとダメらしいです。」

隊長:「分かりました。チェックし終わって参加できる日にちがわかったら教えてください。宜しくお願いいたします。」

私: “He said, he understands. Ah, please tell us the date.”(また、宜しくお願いいたしますって訳せないし)

少佐: “O.K. I’ll let you know the date. Maybe tomorrow, you’ll be able to know! Good?”

私:「ん?えー、とりあえず、明日にはわかるようです。」

隊長:「了解しました。では、明日お待ちしております。」と言って握手をしました。

私: “Thank you, We will wait tomorrow.”(えっ、これって大分間違ってるけど、通じたみたいだ。よかった。)

と胸をなで下ろしたのです。

これが、自衛隊入隊しての初の通訳だったのです。はっきり言って惨敗です。なんとなく通じたものの、通訳としてやってはいけないことばかりでした。しかし、隊長は、なんとなくご機嫌で、A2C2長に報告していたのです。「向こうも乗り気みたいなので、多分団結会行けますよ。」「了解、そうか。じゃ、団結会の手配よろしく頼むよ。」ということで、その任務が私に回ってきたのです。そして、隊長が「結構、通訳いけるじゃん。これから会議とかいっぱいあるけどよろしく。」と、さらって言って仕事に向かって行きました。

次回、今回の反省からお話を続けていきたいと思います。そして更なる醜態を晒すことになるのです。

続く