航空管制官への道
前回、管制官は国土交通省に属する管制官と防衛省に属する管制官の2通りがあると紹介しました。
実際、航空機の航行に関し指示を発出する権限は国土交通大臣に属するものです。
そのため、航空法の定めるところで職権の委任という条項があります。この職権の委任の条項において国土交通大臣の職権を防衛大臣に委任すると定められております。
これが根拠となって我々、自衛官が航空交通に対し、指示等を発出出来るわけです。
では、実際、防衛省の中で、如何に航空管制官が選抜されて航空管制業務に従事するのかについて少し触れておきたいと思います。
まず、自衛官は組織の指揮系統のため、幹部自衛官と陸曹自衛官という大きく2つにわけられます。
私は、幹部自衛官ではなく陸曹自衛官でしたので陸曹陸士の航空管制官選抜試験について説明したいと思います。
階級としては、1等陸士、陸士長、そして3等陸曹たる自衛官が受験できます。試験の内容は、陸士が陸曹になるために受験する陸曹候補生筆記試験とほぼ同じです(この試験内容は紹介できません)。
更に体力検定(当時の検定は、現在自衛隊内で実施されている検定とは種目が異なります。)と航空身体検査というものをパスしなければなりません。
この中で一番手強いのがこの身体検査です。特に目の検査が大変です。
遠視力・近視力は勿論のこと目に関するあらゆる検査を実施します。
次に結構うるさいのが歯の検査です。
パイロットの航空身体検査は管制官の身体検査より格段に厳しいのですが、この目と歯の検査に関しては同等レベルとなっています。
歯は非常に大切で、特に戦闘機に搭乗する場合は、Gがかかることによって歯にも大きな負担がかかるため虫歯などあれば割れてしまう可能性があります。
航空機を操縦している場面でそのようなアクシデントが生起することは航行上非常に危険です。
ですから歯の検査にも厳しい基準が設定されているわけです。
これらの試験を合格すると、1等陸士及び陸士長は陸曹教育隊という教育隊に教育入隊し3等陸曹になるための教育訓練を受けます。
すでに3等陸曹に昇任している隊員は既に卒業しているので入校する必要はありません。
多くの管制官試験合格者は陸士ですので陸曹教育隊に入校します。
そこで3カ月の教育訓練を終了すると次に航空自衛隊の第5術科学校(愛知県・小牧基地)に教育入校します。
そこには管制官になるための教育訓練コースが設定されています。
そこで15カ月に及ぶ教育を受け卒業と同時に航空管制業務を実施する飛行場を有する基地若しくは駐屯地に配置されます。
そこでOJTとして訓練し、最終的に国土交通省の試験官による航空管制技能試験を合格してはじめて航空交通管制官となります。
このOJTの期間は飛行場や本人の技術向上のレベルにもよります。
例えば、三沢基地の場合は、航空自衛隊の航空機のみならず、米空軍、海軍の航空機、そして民間機も就航しているため、管制業務は複雑になります。
新千歳の様に滑走路が4本もある場合と違い三沢は1本しか有していないため非常に難しいと思います。
私の場合は、陸上自衛官だったため、陸上自衛隊の飛行場勤務となりOJTを1年間実施し試験合格。
晴れて航空交通管制官となりました。
その後実務経験を積みながら様々なポジションで管制業務の技術を磨いていきます。
防衛省の管制官は前述した職権の委任により、飛行場管制業務、着陸誘導管制業務、進入管制業務、及びターミナルレーダー管制業務を実施します。
国土交通省の管制官は、前述の業務のほか航空路管制業務も担任します。
それぞれの免許を取得するためにはそれぞれの管制業務でOJTを実施していかなければなりません。
またそのOJTの期間は約1年を要します。大変です。
容易に想像できるとかと思いますが、航空業界は、かなり専門性の高い分野です。
このように一人前の管制官になるためにはそれなりの費用と年月が必要となります。
では、この管制官であった私が何故、真剣に英語の習得に努力を傾注するようになったのか、という話をしたいと思います。