「こんぴらさん」で有名な香川県琴平町には、日本最古の芝居小屋として有名な「金毘羅大芝居」(通称金丸座)がある。通常は有料で中を見学できるが、昭和59年から実際に歌舞伎の公演が行われることになった。コロナ禍で4年間中断しており、久しぶりの開演だった。
私は、カジュアル丸出しの服装だったが、会場には、和服を着た女性の姿も多かった。
演目は、1幕目が沼津である。当たり前だが三味線も太鼓も全て生だ。歌舞伎は難しいと思っていたが、初心者にも分かりやすい演出を意識したのだろう。前半は、かなり笑わせる場面があった。中盤の「お米」が印籠の薬を盗むあたりからストーリーを理解するのが困難になるが、事前にガイドブックを読んでいたのでなんとかついて行けた。ラストは仇討ちに、生き別れの親子の再会と、人情ネタがてんこ盛りである。この沼津は、もともと人形浄瑠璃の作品だったらしい。他の伝統芸能も貪欲に吸収する歌舞伎の柔軟さに感心した。
幕間を挟んでの2幕は「羽衣」である。これは有名な羽衣伝説のお話だが、ストーリーは無く、舞の華麗さを楽しむ作品になっている。ラストには「宙吊り」までサービスする。この宙吊り!何やら人力で動かしているようにも見える。日本最古の芝居小屋と言いながら、セリに場面変換の「回り舞台」にと、昔ながらのシカケも披露されている。
生まれて初めて歌舞伎の舞台を生で見たというと、バカにされるかもしれませんが、伝統芸能の奥深さを感じることが出来た公演でした。