ウルトラセブンは、ウルトラℚからウルトラマンと比べるとひねった作品も多く単純な怪獣モノを期待していると良い意味で裏切られることがある。
「ねらわれた街」は、そのひねった作品を生み出した最強タッグの実相寺昭雄監督と金城哲夫脚本である。ウルトラマンで変身の際ハヤタ隊員にカレーのスプーンを間違えさせたコンビだ。
あらすじは、ある街で突然意識を失って回りの人間を殺傷する事件が多発する。やがてウルトラ警備隊のフルハシ隊員やソガ隊員も原因不明で突然暴れ出す。ダン隊員は、二人が直前に吸ったタバコが怪しいとにらみアンヌ隊員と一緒に「アベック」を装い駅前の自動販売機を見張る。
やがて自動販売機に怪しげな人間がタバコを補充する。この人間が制服とかではなく、いかにもギャングの様な恰好なのが笑える!
その人間を追尾すると古いアパートに着き、ダン隊員がアパートの部屋に入ると、ちゃぶ台の向こうに落ち着いた態度の宇宙人が待っていた。普通、宇宙人の声なら意味不明の鳴き声を予想するが、この宇宙人は妙に落ち着いたナレーションの様な声なのだ。おまけに「アンヌ隊員も呼べばいいのに。」などと言う。 そして、地球征服の為には人間同士の信頼関係を失わせるのが近道だと自分の計画を得意げに話す。こうなると、その後の夕日を舞台の巨大化した宇宙人とセブンの戦いは蛇足の様なものだ。
ラストのナレーションで、「このお話は、まだまだ先のお話です。何故なら今の地球人は宇宙人にねらわれる程、お互いの信頼関係が築けていないからです。」と締めくくる。
子供に見せるには、もったい無いほど、シニカルな作品だ。
NHK4Kリマイスター版で再視聴