テレビ東京の寅さんシリーズ全作放映の企画も最終回である。
事実上、主演の渥美清の死去によって48作で幕を閉じた同シリーズだが、49作目の「ハイビスカスの花特別編」同様、この50作目も満男が回想しながら過去シーンを振り返るという総集編という色合いが濃い作品となっている。
大きく違うのは、やっぱり49作目から22年が経過したことだろう。満男が中年に差し掛かったのはもちろんだが、倍賞千恵子や前田吟の父母が、いい感じで老けたのに感激してしまう。
この様な、ロングシリーズは観客も俳優と一緒に歳をとり、回想シーンがあると、「ああ、この人も若い時代があったのだ!」
と感傷にひたることができる。
それに花を添えるのが、今作限りで女優にカンバックした美少女から美魔女になった「ゴクミ」だろう。ヨーロッパの叔母さんのところに行ったという実生活を連想させる設定で、国連の職員として英語やフランス語が話せるところを披露している。
ストーリーは、満男とゴクミが偶然再会する3日間と、その別れを中心に回想シーンを織り交ぜて描いている。
「男はつらいよ」とは、よく出来たタイトルだ。シリーズ全てに共通するのは、好きな女性の前でやせ我慢をする寅次郎の矜持である。今の日本には「顔で笑って、腹で泣く。」男性は少なくなったのかもしれない。