寅さんシリーズの後に山田洋次監督がメガホンを取った「時代劇3部作」の第一作目である。最近の時代劇映画は、歴史上の英雄や剣豪を取り上げることはよりも、喜劇風であったり、全く無名の人々を描くホームドラマの様な物が多くなった。この3部作が、その流れを作った様に感じる。
主人公は剣の達人ではあるが下級武士で、労咳で死んだ妻の葬式代やら認知症の母親を抱え生活に苦労しており、仕事が終わると同僚との付き合いなど一切せずに帰宅しなければならない。その為、同僚から「たそがれ殿」とあだ名される。
身の回りのことも構うことが出来ず、ボロを着て臭い為に殿様にも注意さる有り様だ。友人の出戻りの妹「朋江」(宮沢りえ)の名誉の為に>立ち合いをし、真剣の相手を木剣で鮮やかに倒した為に、腕前が評判となる。朋江に淡い恋心を抱くが、貧乏の為に彼女との縁談をすすめられても自分から断ってしまう。
やがてお家騒動が起き、立てこもっている反逆武士の刺客に無理やりさせられるが、、、、。
東北の庄内地方がモデルの様だが、全体的にムードも暗く当時の生活振り等がリアルに描かれている。ヒロインの宮沢りえも「サンタフェ」から「貴乃花騒動」もあり個人的には良い印象を持っていなかったが、この作品では、はかなげながらも芯の強い女性を上手に演じていたと思う。
ナレーションの声が最初は誰か分からなかったが、最後に岸恵子だと分かった。
維新に取り残された東北の小藩の、下級武士のはかない人生が描かれている。ラストのナレーション通り「たそがれ殿はけっして可哀想な一生ではなかった。」が、山田監督の無名の庶民に対する暖かさだと思った。
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