高度な教育を受けたはずの人が、なぜ愚かな決定を下し間違った行動を維持してしまうのかを考察した本。

第一章では航空事故からスライド映写まで、古今東西の「愚かな決定」の事例を紹介する。
第二章ではそうした「愚かな決定」が、4種類の過程によって目的に合わない結果を生んでいることを示す。
第三章では「愚かな決定」を生む推論形式である「へ理屈」や「暗黙の了解」について説明する。
第四章では、高い教育を受けた人の思考にも表れてしまう「幼稚な歪み」について説明する。
第五章では集団の中での3つの役割と5つの行動を紹介し、「愚かな決定」が生み出されるパターンをいくつかに分類する。
第六章では「愚かな決定」が維持されていく要因である「自称エキスパート」「説明の難しさ」「口出しは無理」について紹介する。
第七章では「沈黙」や「無秩序」について説明する。

目次
 第一章 「愚かな決定」の奇妙なプロセス
 第二章 ひと味違う事故と失敗
 第三章 「愚かな決定」の理屈―推論的分析
 第四章 稚拙な理屈の正体
 第五章 「愚かな決定」は集団のなせる業―集団分析
 第六章 間違いの気密性
 第七章 協調という罠

種々の思い込みやのパターンが紹介されており、間違いを引き起こす要因はあらゆるところにあるのだと納得させられる。

集団の中における役割や行動を分析し、間違いを生み出すパターンを「権威モデル自律タイプ」「分権モデル承認タイプ」等いくつか類型化していることは興味深い。間違いを経験すると反対のモデルに変わろうとする傾向がある、という指摘が面白い。

日本語がこなれていないのか、微妙に読みづらい。あとがきによると原書の完訳ではないそうだ。必要な部分まで省いてしまったのではないだろうか。
愚かな決定を回避する方法―何故リーダーの判断ミスは起きるのか (講談社プラスアルファ新書)/クリスチャン モレル
¥920
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犯罪捜査の証拠物件評価における科学的手法の発展について述べた本。ヨーロッパおよび日本における手法の発展や事例について解説される。

取り上げられているのは、人体測定、筆跡鑑定、指紋、重機鑑定、DNA型鑑定、毒物抽出など。

事例として挙げられる事件は、ドレフェス事件、モナリザ失踪事件、聖バレンタインデーの大虐殺、リンドバーグ愛児誘拐殺人事件、ニコライ2世DNS鑑定、ラファルジー事件など。

証拠の信頼性を維持するために、証拠物件の収集・管理手法が大切であることも繰り返し強調される。

手法開発の生々しい功名争いも面白い。

目次
 一 科学捜査の巨人ベルティヨンの権威と誤鑑定
 二 指紋が犯罪捜査の主役になるまで
 三 近代的銃器鑑定のあゆみ
 四 リンドバーグ愛児誘拐殺人事件の物証鑑定
 五 死体の身元確認と復元
 六 古典的な毒物から生物化学兵器まで

たくさんの内容が網羅的に盛り込まれている。そのためか解説の焦点が犯罪史なのか、犯罪捜査なのか、科学捜査手法なのかが分かりづらく、迫力に欠けているように感じた。
科学捜査の事件簿―証拠物件が語る犯罪の真相 (中公新書)/瀬田 季茂
¥819
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ユダヤ人の起源からの歴史を振り返り、なぜ反ユダヤ思想が誕生し育って行ったかを解説する。

この民族の古代から一貫した特徴は、独自の伝統、生活様式、信仰をかたくなに守り続け、決して他民族と同化しようとしないことである。その特徴が他の民族・文化・文明とかかわる中で次第に孤立して反感をかっていく歴史が分かる。

ディアスポラ状態のユダヤ人とヘレニズム世界の対立、ローマとの共存や抵抗、キリスト教の発展に伴う「キリスト殺し」としての反ユダヤ思想の浸透が、当時の法令と共に描かれる。このキリスト教的反ユダヤ思想は現在まで影響が及ぶ。

目次
 第1章 前史―ユダヤ民族と古代社会
 第2章 ローマ帝国への追従と抵抗
 第3章 初代教会の発展とユダヤ人
 第4章 古代末期ローマ帝国の対ユダヤ人政策
 第5章 古代における反ユダヤ思想の形成

第5章はそれまでのまとめが中心なのでこの章だけを読んでも良いかもしれない。

なぜユダヤがこれほどまでに独自の文化を守って孤立するのか不思議だし、この民族が滅亡せずに離散だけで済んだことも奇跡的な幸運に思えてくる。またキリスト教の爆発的発展も必然というより幸運だったのだろう。

現在の中東、パレスチナ問題の種はこのとき既にまかれていたと考えると、和平への道は長いのかもしれない。当時のローマ帝国との共存関係を実現した政策的手腕は、現在アメリカとの関係構築に活かされているのかもしれない。

日本人としてはローマの宗教的寛容さの方がしっくり来る気がする。
ユダヤ人とローマ帝国 (講談社現代新書)/大沢 武男
¥756
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「カード破産」をテーマにしたミステリ。しかし謎解きの面白さやサスペンスはほとんど無い。

地味な人探しの過程で浮かび上がってくる犯人とその周りの人々の人生。なぜそうしたのか、なぜそうせざるを得なかったのか。直接犯人の姿が見えることは無いが、必死に生きようとする切なさ・悲しさが浮かび上がってくる。

最後に展開が速くなるが、あまり盛り上げなくても良かったのではないだろうか。
火車 (新潮文庫)/宮部 みゆき
¥900
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会議の生産性、創造性、効率性を上げるためにしなければならないことや考えなければならないことを解説し、具体的な方法も紹介する。

目次
 序章 「会議社会」の中で
 第1章 会議を準備する
 第2章 会議をはじめる
 第3章 会議を運営する
 第4章 会議で発表する
 第5章 情報<アイディア>を共有する
 第6章 会議を終わらせる
 第7章 会議に必要なスキルを磨く
 終章 会議を変える糸口

さまざまな手法が紹介されるが決して奇をてらったものではない。極めてオーソドックスなものとなっている。参加者に参画意識を持たせ、より良い全員の合意取るための工夫に満ちている。

内容は会議のアジェンダを配布するところから、参加者の配置、記録の取り方、話し方、合意の取り方、問題解決手法など多岐にわたっている。グループKJ法に似た手法も紹介される。

これらの方法は会議のテクニックというより、会議を通して問題解決を効率的に行い、参加者のコミュニケーションを向上させることを目的としている。

第7章より抜粋
「そこで本書では、多くの人が会議への不満を抱え、そこで決まった事柄を積極的に推進できない現状から脱する方法として、みんなでいっしょにつくりだす会 議、つまりコンセンサスを基調にした意思決定ないし問題解決のアプローチを中心に据えて、それを可能にする具体的な方法を紹介してきた。」

要点を記述するところは箇条書きになっていることが多い。これは扱う内容が会議のコミュニケーションのあらゆる側面にわたり、一つ一つの内容が非常に深い ためすべてを説明しきれないという面があるのだろう。他の著者ならば本書内の箇条書き項目2~3個で1冊の本を書いてしまうのではないだろうか。

それだけ本書の中身が濃いのだと言える。
会議の技法―チームワークがひらく発想の新次元 (中公新書)/吉田 新一郎
¥777
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筆者が調査した統計データをもとにして、日本における「下流」階層の出現と階層の固定化傾向を解説する。そうした階層固定化への対処案を最後に提案している。

目次
 第1章 「中流化」から「下流化」へ
 第2章 階層化による消費者の分裂
 第3章 団塊ジュニアの「下流化」は進む!
 第4章 年収300万円では結婚できない!?
 第5章 自分らしさを求めるのは「下流」である?
 第6章 「下流」の男性はひきこもり、女性は歌って踊る
 第7章 「下流」の性格、食生活、教育観
 第8章 階層による居住地の固定化が起きている?
 おわりに 下流社会化を防ぐための「機械悪平等」

全般的に、調査集計結果の表を載せてその数値を本文中に展開する文章が多い。ほとんどの文章は「○○の調査によると○○なのは○○%、」という表現が延々と続く。そのためその調査からどのようなことが分かって何を主張したいのかが非常に分かりにくい。

「「社会調査」のウソ―リサーチ・リテラシーのすすめ (文春新書)」にもあったように、下記のような悪い調査としての傾向がありそうだ。
・そもそもどのような仮説に基づいて調査を実施したのか分からない
・調査サンプル数が少ない
   あとがきにも、「サンプル数が少なく、統計的有意性に乏しい」とある
・因果関係が不明瞭
   世代間比較はよいが、それを同じ人の時系列変化として分析している場合も多々ある。
といった傾向がみられる。

そのため主張している内容には、「そういうこともあるかもしれない」と思わされるものの、説得力があまりない。漫然と思いついた項目を並べて調査し、その結果を統計処理してみたら何となく傾向が見つかった、という経緯で進められているのではないか。

無理やり傾向を導きだして、類型的ステレオタイプを作り出しているような印象を感じる。ある一時点の統計データを並べているだけなので、なぜそうした傾向 があるのか、それによってどのような問題が起こるのか、解決するにはどうすればよいのか、といった主張が乏しいか、説得力がない。

この調査は博報堂との共同研究がベースになっているらしい。それを考えると、「○○型」のようなステレオタイプを作り出して提示する手法は広告代理店的かなと思えてくる。
下流社会 新たな階層集団の出現/三浦 展
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ミステリへの入門的内容をミステリ仕立てにした本。
目次
 第一話「本格ミステリの定義」
 第二話「トリック」
 第三話「嵐の山荘」
 第四話「密室講義」
 第五話「アリバイ講義」
 第六話「ダイイング・メッセージ講義」
 最終話「意外な犯人」
以下ネタバレ。






短編集の形を取っているが、作中作のマトリョーシカが連なり、全体として多重構造を持たせている。途中でマトリョーシカ構造が終わってしまうのは「息切れしたのではないか」という気もしてほほえましい。

最終話はメタミステリを展開しているが、あまりうまくいっているとは思えなかった。

作中で挙げられる古今東西のミステリは読書ガイドとして役立つだろう。未読のものを読もうという気になる。最後に「ミステリ度」と「論理度」を軸にした「本格ミステリ度MAP」がついているのも面白い。

この作者に濡れ場は似合わないのではないだろうか。
ミステリアス学園 (光文社文庫)/鯨統 一郎
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引きこもりや鬱病を連想してしまうのは少々短絡的だろうか。あるいは共同体からの決別を書いているのだろうか。

なぜこのような結末になっているのだろうか。何の衝撃も起こさない淡々とした彼の最後と、周りの人々の晴れ晴れとした様子に背筋が凍る。
変身 (新潮文庫)/カフカ
¥340
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社会調査には「ゴミ」が多く、それは不適切な調査方法や集計・分析によるバイアスがかかっていることを解説する。

社会科学では特に事前に理論・仮説・モデル・調査分析方法を適切に決めておく必要がある。それを怠ってバイアスが入り込んだり、意図的な結果を導くための調査・分析の事例を様々取り上げている。

そうした不適切な社会調査を見抜くための「リサーチ・リテラシー」や各種制度も提唱している。

目次
 序章 豊かさ指標はなぜ失敗したか
  「ゴミ」は「ゴミ」を呼ぶ
  「豊かさ指標」はなぜ失敗したか
 第1章 「社会調査」はごみがいっぱい
  学者が生み出すゴミ
  政府・官公庁が生み出すゴミ
  社会運動グループが生み出すゴミ
  マスコミが生み出すゴミ
 第2章 調査とマスコミ―ずさんなデータが記事になる理由
  垂れ流されるゴミ
  記事のための調査
  印象操作のテクニック
  チェック機関の必要性
 第3章 研究者と調査
  華麗なる学者の世界
  ノーデータ、ノーペーパー
  データを公開できぬわけ
  学者の論文を格付けしよう
 第4章 さまざまな「バイアス(偏向)」
  人は忘れる、ウソをつく
  「モデル構築」はバイアスの巣
  見せかけの相関
  リサーチ・デザインとは何か
  視聴率の落とし穴
  あくどい誘導的質問
  サンプリングにおけるバイアス
 第5章 リサーチ・リテラシーのすすめ
  リサーチ・リテラシー教育の必要性
  社会調査を減らすには
  あなたのリサーチ・リテラシーをテストする

時には恣意的に社会調査が行われて世の中に発表されていくことが、豊富な事例で紹介されており面白い。こうしたデータを読むには誰がどのような意図で調査したのか、調査・分析方法は適切なのかを十分注意する必要があることが良く分かる。

意図していなくても、調査方法が不適切であるためにバイアスが入り込んでしまい、善意の調査結果として提示されることも多いようだ。

全般的に、一般に出回っている社会調査に対する毒舌が多く、その矛先は特にマスコミと研究者・学者へ向かっている。その批判と提言にはうなずけるが、少しヒートアップしすぎではないだろうか。
「社会調査」のウソ―リサーチ・リテラシーのすすめ (文春新書)/谷岡 一郎
¥725
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様々なデリバティブ商品について、その基本的仕組みについて解説した本。

デリバティブを使ってどのようにリスク・ヘッジするかだけではなく、その失敗例や現物へ与える影響も考察する。

目次
 第一章 スワップ
  1.金利スワップ
  2.スワップの現在価値と失敗例
  3.金利スワップが金利に与える影響
 第二章 為替予約
 第三章 オプション
  1.通貨オプション
  2.通貨オプションの失敗例
  3.通貨オプションが為替レートに与える影響
  4.オプションによる政策介入
  5.株式オプション(ワラント)
 第四章 先物取引
  1.債券先物取引
  2.株価指数先物取引
 第五章 デリバティブと経済

デリバティブ商品の考え方だけではなく、仮想事例や過去の実例・実データを用いながら、どのようにリスク・ヘッジや投機が行われているかを解説している。簡単な式で収支計算し、リスクヘッジの効果を見せているため分かりやすい。本書執筆以降もデリバティブ商品は発達しているのだろうが、基本的なポイントはそれほど変わらないのではないかと思われる。

デリバティブを投機的に扱おうとした場合のハイリスク性や、日本での取引基盤が整備されていないことへも言及される。

筆者の意見ではデリバティブが実体経済に影響を及ぼしているためボラティリティが増大してしまい、経済全体としてのリスクは増している可能性がある、ということのようだ。

「デリバティブが行い得るのはリスクを減少させることではなく、市場に参加している投資果敢にリスクを配分する、ないしは分散させることである。」「しかし、経済全体としてみた場合、デリバティブはリスクを増幅させたと言って差し支えないだろう。」

短いページ数にもかかわらず、よくまとまっている。逆に短いページ数に詰め込みすぎているため、専門外の人間にとっては理解が追い付かないところも多かった。


デリバティブ―リスク・ヘッジが生み出すリスク (中公新書)