深く考えずに勢いだけを楽しめるライトミステリ。

タイムスリップした森鴎外があまりにも簡単に現代に適応していくのは拍子抜け。犯人を導き出す根拠として、各種文献の記述から大量のこじつけを展開してくれた方が楽しめるが、この点は少々物足らない。

黒幕の二人の名前から大仕掛けがあるのかと期待したが、これは次作以降に持ち越しなのだろうか。
タイムスリップ森鴎外 (講談社文庫)/鯨 統一郎
¥730
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科学理論を例に、仮説や常識をに捕らわれず、疑うことの大切さを説く。科学理論の多くが「定説」ではなく「仮説」と呼ぶべきものであり、そうした仮説を適切に受け止めて、価値観の相対化や新しい仮説の創出が重要であることを説明する。

例に挙げられる「科学」は飛行機が飛ぶ仕組みからロボトミー手術、冥王星、宇宙定数、進化論、ビッグバン、相対性理論など。

冥王星の例は、惑星から小惑星に格下げになる前の記述であり、まさに仮説が180度くつがえった例になっている。

科学の事例は適切だが、政治や宗教など一般社会の事例は首をかしげる。よく聞く科学エピソードを並べているので、もう一歩踏み込みが欲しい。また、こうした科学の話から価値観や意思疎通の問題にまで広げるのは、飛躍しすぎではないか。

噛み砕いて説明してくれるのは嬉しいが、噛み砕きすぎではないか?太字による強調が頻出するのも煩わしい。
99・9%は仮説 思いこみで判断しないための考え方/竹内 薫
¥735
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「理系ミステリ」らしく、理系ならではの価値観や世界観をエキセントリックに描写しようとしている。しかしどうもそれが空回りしている感がある。「理系」 を表現するのに多桁掛算の暗算を持ち出されても迫力が伝わってこない。また、情報工学と機械工学の才能はまったく別なのではないだろうか。「天才」「理 系」に迫力やリアリティが無いためか、犯人の動機が今ひとつ伝わって来なくて腑に落ちない。

メイントリックも頭の体操を読んでいるようでもの足らない。もっと伏線とそれを使ったロジックが欲しいところだ。最後のコンゲームのような組み立てが本筋全体にわたって展開されてくれればよいのではないか。

キャラクター立ちはしっかりしていて、楽しめる。
すべてがFになる―THE PERFECT INSIDER (講談社文庫)/森 博嗣
¥770
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汎ヨーロッパ的性格と重要性を持っていたハプスブルク家を書く。歴史的事象よりも人物像に焦点をあて、その性格、信条、信念を通して歴史の流れを追う。

神聖ローマ帝国皇帝となって歴史の表舞台に現れてから、結婚政策による勢力拡大、イスラム圏のトルコとの争い、多民族を抱えることによる内乱を経て崩壊に至るまでを書く。

中心となって取り上げられているのはマクシミリアン一世、カール五世、マリア・テレジア、フランツ・ヨーゼフ。「ハプスブルク家はキリスト教の守護者であり、神の加護を受けているからこそ王位を授かり、これが後々までも継承されたのだ」という信念が、歴史を紡いでいく。

目次
 序章 ハプスブルクの揺籃期―ルードルフ一世からマクシミリアン帝へ
 第1章 マクシミリアン一世―華麗なるブルゴーニュ文化のさなかで
 第2章 カール五世とその時代―太陽の没することなき帝国
 第3章 ウィーンとマドリッド―ハプスブルクの枢軸
 第4章 マリア・テレジア女帝―恵み豊かな治世
 第5章 会議は踊る―三月革命の前夜
 終章 民族主義の嵐のなかで―ハプスブルク帝国の落日

短いページ数に多くの内容が教科書的に詰め込まれているが、人物像から記述されているためか飽きさせない。

対抗していたプロイセン、ブルボン、トルコの側の歴史も調べてみたくなる。まとめの年表、地図、家系図が欲しいところだ。
ハプスブルク家 (講談社現代新書)/江村 洋
¥777
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「ゴールデンボーイ」はナチズムの問題になじみがないため、どれほどの犯罪や負い目として機能しているのかピンとこなかった。しかし少年の無邪気な好奇心 がその後の人生を縛り始める心理的推移には背筋が寒くなる。隠遁していた元犯罪者の孤独と矜持と狂気を味わうのも面白い。

「刑務所のリタ・ヘイワース」は30年かけて脱獄した男の話。極限状態でも希望を失わずに努力を続けた話というわけではなさそうだ。環境になじめなかった 男が、ふと脱獄を試みたところ、様々な幸運が積み重なって大きな目標を達成した、という印象が残る。強い個性を持っていたことは確かなようだ。思いもかけ ないことを達成するのはその人の個性か、努力か、環境か、運か。
ゴールデンボーイ―恐怖の四季 春夏編 (新潮文庫)/スティーヴン キング
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「はじめに」にあるように、「数式を使わないゲーム理論への入門書」。

第1章で戦略を「戦略的環境において、自分が自分の自由意志のもとにとりうる行動を、その将来にわたる予定を含めて記述したもの」と定義する。続く章でさ まざまなゲーム理論や経済学の用語を解説し、その用語を使ってビジネスや日常生活での意思決定がどのように解釈できるかを説明する。

目次
Ⅰ 戦略的思考のススメ―戦略的思考の基礎
 第1章 戦略
 第2章 先読みと均衡
 第3章 リスクと不確実性
Ⅱ 考えるヒント―戦略的経済分析のキーワード
 第4章 インセンティブ
 第5章 コミットメント
 第6章 ロック・イン
 第7章 シグナリング
 第8章 スクリーニングと逆選択
 第9章 モラル・ハザード
Ⅲ 戦略的に解く身のまわりの経済学
 第10章 値引き競争
 第11章 オークション

言葉の定義の問題かもしれないが、これは「戦略」というよりも「戦術」と呼ぶべきではないのか。「戦略」という言葉からは、どのような競争にどのような条 件で参加するかの策定方法をイメージするが、ゲーム理論の解説では、意思決定を選択する手法に焦点が当たっているように読めた。これは本書が入門書である せいなのかもしれない。

第4章以降は用語を使って定性的に解説される。「○○だったが、△△を変えることによってこのような効果があった」という、意思決定にかかわる記述があまり見られないので少々物足りなかった。

「モラル・ハザード」のという用語は道徳や倫理を表したものではない、という解説は初めて聞いて勉強になった。
戦略的思考の技術―ゲーム理論を実践する (中公新書)/梶井 厚志
¥798
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マクタガートの論文「時間の非実在性」を丁寧に追いかけ、その論証をたどるとともに証明の失敗も解説する。筆者が哲学科以外の学生へ講義した内容が活かされている。

第1章ではゼノン、アリストテレス、アウグスティヌス、ナーガールジュナ、山田孝雄など、歴史上「時間」がどのようにとらえられてきたかを振り返る。

第2章~第3章ではマクタガートの論証をたどる。「時間」の捉え方にはA系列とB系列とがあると考え、その関係と本質を考察し、A系列に矛盾があることから時間は実在しないと証明する。

第4章ではその証明の失敗を解説する。「実在」の意味を明確にし、矛盾を導き出す論法に不備があることを説明する。

第5章では筆者の持論を説明し、「時間は実在するかという問いは、失効する」ことを述べる。

目次
第一章 「時間の非実在性」はどう考えられてきたか
第二章 「時間の非実在性」の証明(1)-証明の前半
第三章 「時間の非実在性」の証明(2)-証明の後半
第四章 証明は成功したのか
第五章 もう一つ別の時間論―第四の形而上学的な立場

哲学的な内容の本では用語や表現が分かりにくいものが多いが、これは分かりやすかった。一つの要点を易しくかみ砕いたり、様々なレベルで言い換えたりして繰り返し説明するので、どれかの表現で理解できるだろう。

要点をくどいほど振り返って言及してくれるのもありがたい。概念図を頻繁に挙げて思考を図示してくれるのもうれしい。哲学にあまりなじみがない人にとっての良書だろう。

ただ第5章は非常に分かりにくい。「そのつど性」「とりあえず性」「無関係としての時間」などの用語が導入され、他の章と比べると抽象化されたままの説明が高速に通り過ぎてゆく。まだ筆者の中でも十分に消化しきれていないのではないかという気がする。

「時間は実在する」と考えた哲学者はいないのであろうか。
時間は実在するか (講談社現代新書)/入不二 基義
¥819
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フォトリーディングの本。高速にページをめくって潜在意識に全情報を送り込む。

目次
第1部 選択肢を広げる
 第1章 フォトリーディングはこうして生まれた。
 第2章 古い読書法に固執するか?それとも…
第2部 フォトリーディング・ホール・マインド・システムを学ぶ
 第3章 ステップ1-準備
 第4章 ステップ2-プレビュー
 第5章 ステップ3-フォトリーディング
 第6章 ステップ4-アクティベーション
 第7章 ステップ5-高速リーディング
第3部 スキルを活用し、マスターしよう
 第8章 フォトリーディング・ホール・マインド・システムを生活の一部に
 第9章 グループ・アクティベーションで情報を共有する
 第10章 シントピック・リーディングで生涯学習
 第11章 ダイレクト・ラーニングで、あなたの才能を発見しよう
 第12章 フォトリーディング・ホール・マインド・システムの極意

速読法のジャンルとして扱われているようだが、これは読書法ではないか?「本を読む本」をもとに構築されているということも本書中に書かれている。

全体を通して、読まなければならない文書の要点をすばやく探し出し、「目を通す」という作業の効率化に主眼が置かれているように感じる。「プレビュー」 「フォトリーディング」「アクティベーション」という手順を行うことにより、結果として文書を何度も目を通すことが効果を上げているのではないだろうか。 フォトリーディングによる無意識での脳の働きについては話半分で良いだろう。

効果を発揮する分野は実用書、ハウツーもの、ビジネス文書などだろう。なじみの無い分野の記述については速度を落として読む、ということは本書内にも明記されている。難解な物理学や哲学の本がフォトリーディングで読めるかという批評を目にしたが、それは的外れだろう。

要点にマークがついており、飛ばし読みできるようにしてある試みが面白い。ただ、本書には体験談やたとえ話が多く、もともと精読には向いていないようだ。

本書でのテクニック的な解説は「フォトリーディング」での「フォトフォーカス」だけだが、このやり方は良く分からなかった。
あなたもいままでの10倍速く本が読める/ポール・R・シーリィ
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ちょっと前の流行書。

男と女の行動や考え方は根本的に異なっている。それは数百万年前からの生活様式によって培われてきたもので、それぞれ違った目的に適合するよう進化してきたホルモンの働きによるものだとする。実際にありそうな生活シーンを交えながらユーモアたっぷりに解説する。

目次
第1章 同じ種なのにここまで違う?
第2章 そうだったのか!
第3章 すべては頭のなかに
第4章 話すこと、聞くこと
第5章 空間能力
第6章 思考、態度、感情
第7章 不思議な化学変化
第8章 男は男、でも……
第9章 男と女とセックスと
第10章 結婚、愛、ロマンス
第11章 新しい未来へ

ここで解説されている統計データや科学的根拠がどこまで正しいのかは疑問。しかし何らかの生物学的根拠によって男女の行動様式の違いや得意・不得意があるのは納得できる。

あまりシリアスすぎず軽く受け止め、どこか本質を突いた指摘を楽しむべき。

最も気に入ったフレーズ。
  どうしてモーゼは四〇年も荒野をさまよいつづけたのか?
  人に道を聞かなかったから。
話を聞かない男、地図が読めない女―男脳・女脳が「謎」を解く/アラン ピーズ
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統計を読むときは、それがどのようにして集計されどのような誤差を含みやすいかを理解しておかなければ、適切に解釈できない、ということを事例を交えて解説する。

第1章では算術平均、幾何平均など様々な平均の求め方を紹介し、「平均」をどのように読み取るべきかを解説する。事例として平均貯蓄残高、東証株価指数、豊かさ指標、平均寿命、初婚年齢などがあげられる。

第2章では統計の裏付けがあるかのように語られる様々な通説を疑う。みせかけの相関に騙されないために、その統計の持つ意味をとらえることが重要だとする。事例として割れ窓理論、有効求人倍率、検挙率、年末商戦、サービス残業、所得格差、デフレなどがあげられる。

第3章では「○○の経済効果」がどのように算出され、どの程度意味があるのかを解説する。一次効果を推計して、「産業関連表」を使って機械的に算出する過程を解説し、それがいかにあてにならないかも述べる。

第4章ではGDPなどの経済統計の算出方法や、そのブレの傾向を解説し、ブレの傾向を把握しておかないと誤った経済政策を導きかねないことを述べる。

第5章では地下経済について。GDPには表れない経済が、決して無視できない大きさのものであることを推計する。

目次
 第一章 「平均」に秘められた謎
 第二章 通説を疑う
 第三章 経済効果を疑う
 第四章 もう統計に騙されない -統計のクセ、バイアスを理解する
 第五章 公式統計には表れない地下経済

一~二章で統計の集計方法とそのクセを理解しておくことの大切さが繰り返されるが、統計を疑うために別の裏付けある資料・統計を持ってくるのではなく、定性的な意見が述べられるだけなので、少々説得力にかける。

三~四章は筆者の専門分野。各産業間の関連性が指標として算出されており、それを使えば経済効果が半自動的に搬出されるという種明かしは特に興味深かった。

最後の「地下経済」とは、犯罪の他にも脱税があげられる。推計される脱税やそれによる隠し資産の規模が、意外と大きなものであることに驚かされた。

全般に統計一般というよりも、経済統計・指標を通して社会を読むためにはどのようなことを考慮しなければならないか、という点が主眼であるようだ。
統計数字を疑う なぜ実感とズレるのか?/門倉 貴史
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