(杏子/井川遥)
人って 幸せになろうと思って
なれるもんじゃないんだね
誰かを幸せにしてあげたいって
思って初めて
幸せになれんのかもしれんね
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[黒板の文字]
世にしたがへば
身くるし
(笛子/寺島しのぶ)
“人をはぐくめば心恩愛につかはる
世にしたがへば身くるし
したがはねば狂せるに似たり”
人間の自然な感情が抑圧される世の中で
人を思いやること 人を愛すること
人との別れを悲しむこと
そんな当たり前のことが許されないとしたら
どうしますか
自分を偽って世の中に
世の中のいがたに合わせようとしても
心はきしんで悲鳴をあげるんです
ですから これが
私の最後の授業です
いいですか 皆さんはできるだけ
自分を偽らずに生きていってください
どんな世の中になっても どうか
自分の心だけは裏切らないでください
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(笛子)
しぼんだ風船みたい
身軽だけど フワフワして
頼りない
もう私は 頼りになる先生でも
姉さんでもない
ただの女 なっちゃった
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(桜子/宮﨑あおい)
明日のことなんて
考えとられん
それよりも 一日一日
今の一瞬一瞬を大切に
生きたいの
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(桜子たちのお祖父ちゃん)
この世の中っちゅうのは
刻々と 移り変わっていくんだ
今 お先真っ暗に見えても
必ず 夜明けは来るで
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(桜子)
どんな世の中だって
人は生きとるんです
新しい命だって
生まれてくるんです
中略
諦めたり くじけたりするのは
簡単ですよね
世の中は今 そんなんばっかりだもんね
中略
ほいでも私 希望は捨ててません
諦めんでおれば 必ずいつか
また会えるような気がするんです
人が歌ったり 絵を描いたりするのは
何かのためじゃないと思う
そうしたいから
歌ったり 絵を描いたりしとる間は
希望を感じてられるから
諦めたら お終いじゃないですか
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(杏子)
夫婦ってね 一個一個
形が違うものなの
ちょっと いびつでも
それでうまくやってけるのが
夫婦なの
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(西園寺先生)
戦争はいつか終わる日が来ます
その時まで 決して
希望を捨てないように
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(桜子)
いつか冬の時代が来るって
言っとった
絵描きも音楽家も
首を縮めてじっとしとらんと
いかん時が来るって
ほいでも
冬はいつか終わるんだよ
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(杏子)
ひとりなのは あなただけじゃありません
ひとりで生きている人なんて
あなた以外にも いくらでもいます
そんな風に 自分を憐れまないで下さい
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(冬吾/画家/西島秀俊)
俺は今まで 怖えもんがねがった
絵筆1本あれば
自分1人高みに立って
人を上から見下していられたんだな
人の悲しみも 歓びも
人の生き死にもな
だども その時 絵筆が何になるんだ
初めて思った 誰も助けられねえ
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(桜子)
亨ちゃんは笑っとるよ
亨ちゃんは
今生きとることだけを感じて笑っとる
未来のことや 世の中のこと
目がよく見えんことを 悲しんだりしとらんよね
冬吾さんも そうなれないかな?
中略
今は 生きとる私を見て
生きとる亨ちゃんを見て
すぐに元気になれんでも しょうがないよ
ほいでも そのうちきっと力が湧いてくる
ほいだって 冬吾さんの目には
人や物の中に 命を見る力があるんだもん
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(桜子)
今まで私 色んな人と別れてきた
好きになった人 一番大事な人と別れていく
私の人生はそういうふうになっとるんだね
ほいでも構わん
私の心の中に 大事な人は皆
ちゃんと生きとる
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(桜子先生)
きつい思いをしたからって
人を憎んだり恨んだりしても
何も始まらんと 先生は思う
先生の好きなジャズの曲に
「陽のあたる街角で」っていう曲があるの
物事に いい面と悪い面があったら
いい面を見なさい そうすれば
心が明るくなってくる
陽のあたる街角を選んで歩きなさい
っていう曲なんだ
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(杏子)
幸せってね
そんなに難しいもんじゃないの
自分の手で 拾おうと思えば
そこにあるもんなの
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(桜子)
分からないけど 生きてるからだよ
生きてる人間は 絶望なんかしてられん
前を向いて歩いて行かなくちゃいかん
なんで笑うかって
笑って幸せになりたいからだよ
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(杏子)
夫婦だからって
相手の過去も未来も
ぜんぶ独り占めしようなんて
無理な話だもん
相手の過去も 受け入れられる
ケンカしたり たまにヒビが入ったりしても
一緒におって 何度でもやり直せる
それが 夫婦っちゅうもんじゃないの?
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(桜子)
命って どっから来ると思う?
私はね
空から来るような気がしてならんの
太陽や 月や星が輝いてるところから
(連続テレビ小説『純情きらり』2006年度)