『ふるさとの訛なつかし停車場の人ごみの中にそを聴きにゆく』
そう、石川啄木が故郷から東京への玄関口であった上野駅で、故郷を想って詠んだ俳句です。
私はパリのモンパルナス周辺を訪れる度に、この句を思い出すのです。
モンパルナス駅やモンパルナスタワーなど、いくつかの有名なランドマークがあるこのエリア、クレープリー(クレープ屋さん)が多い事でも知られています。地下鉄のEdgar Quinet駅を降りてすぐのモンパルナス通りには、クレープリーが左右にずらっと立ち並んでいます。
フランスのクレープリーでは、食事にはガレットと呼ばれるそば粉のクレープ、デザートには小麦粉のクレープが出されます。
もともと、ガレットはブルターニュ地方の名物。フランスの北西部、イギリスの向かいに位置するブルターニュ地方では、昔からそばの栽培が盛んだったそうです。
昔ブルターニュからパリに出てきた人達が、モンパルナス周辺に住み着いたために、この周辺にはクレープリーが多いそう。帰郷するのが大変だったその昔、故郷ブルターニュとパリを結ぶ列車が到着するモンパルナス駅の近くで、故郷を思いながらガレットを食べた人達がきっと沢山いたんだろうなあ・・・。そんな事を思い、石川啄木の句が頭の中に浮かんで来るのでした。
こちらのクレープリーの天井に飾ってある白と黒の旗が、ブルターニュの旗です。多くのクレープリーで見かける事ができます。
食事用のガレットのメニューには沢山のセレクションがありますが、一番の定番は、ハムとチーズと卵をのせたgalette complète。そしてデザートクレープの定番はバター&砂糖。どちらもシンプルで美味。そして、飲み物はワインではなく、りんごのお酒、シードル。カフェオレボウルのようなコップで飲むのが定番です。ブドウがとれないブルターニュでは、シードルが名物なのです。
パリにいながらブルターニュの風を感じる事ができるモンパルナスのクレープリー、おすすめです。