「あっと驚くギャロップダイナ」
1985年10月27日、秋の天皇賞。
1着でゴールを駆け抜けたギャロップダイナを見て、
フジテレビの堺アナウンサーはそう叫んだ。
17頭中、13番人気。
前走の条件レースも負けている。
しかも相手は、マイルG1を3勝し、短距離レースで無類の強さを誇るニホンピロウイナー。
さらには、無敗で3冠を制し、春の天皇賞に続き天皇賞春秋連覇(春と秋の天皇賞を両方勝つこと。春は3200m、秋は2000mと、距離がまったく違うため、両方勝つのは容易ではない)を狙う、皇帝シンボリルドルフ。
勝利どころか、誰一人として期待もしていなかったかもしれない。
しかし、蓋を開けてみたら、勝ったのはギャロップダイナだった。
ニホンピロウイナーと皇帝ルドルフを差し切り、レコードというオマケもつけて。
この劇的勝利は、フロックとも言われた。
でも、それはありえない。
ニホンピロウイナーも、シンボリルドルフも、フロックで勝てる相手ではない。
もともと持っていた地力に、運が味方した。
最大の敵であるルドルフは、長期休み明けで大外枠、
しかもレースは追い込み馬に有利なハイペース。(ギャロップダイナは追い込み馬)
地力ではルドルフのほうが上でも、運を引き寄せ、そのチャンスをモノにしたギャロップダイナが強いのである。
運も実力のうち、ではなく、運は実力。
地力だけではどうにもならない壁を越えるには、運を味方にするしかない。
このときの天皇賞では、ルドルフよりギャロップダイナのほうが強かった。
運も含めた総合力で優った。
だから勝った。
その証拠に、ギャロップダイナは翌年の安田記念も勝利し、G1を2勝、
その年の有馬記念を2着という成績を残している。
皇帝シンボリルドルフを差し切ったのは、唯一ギャロップダイナだけ。
ちなみに同期は、3冠馬ミスターシービー、日本初のジャパンカップ勝利馬、カツラギエース。
ギャロップダイナは、その2頭に引けを取らない実力馬。
地力だけで何かを成すには限界があり、地力がなければ運を引き寄せたとしてもモノにできない。
その両方が必要だということを、ギャロップダイナは教えてくれる。