〈診断〉というニーズ | ひびのおと

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メモ代わりに日々のなかで気持ちが向いたことを更新 
千葉県市川市で治療院を経営しているので健康に関する内容が多いです

『こってますか?』

 

施術をしているときにそんな質問をされることがあります

 

 

リップサービスとして・・・

「ここ最近のなかでもトップクラスにこってます」

「だいぶつらかったんじゃないですか?」

 

そして・・・

「少し間隔をつめて施術を受けると楽になるとおもいます」と営業をしたり

「なにか普段と違う過ごし方でもされたのですか?」と主訴の背景を引き出す質問をしたり

 

そんな感じでさらりと流す質問と施術側として考えがちです

 

 

 

しかし私には違和感を覚える質問

例えるなら「私は喉が渇いてますか?」と質問されている感覚

 

 

大人になってからクラシックバレエを始めた方を施術しているとき「私の肩ってこってますか?」という質問をいただきました

私の返答は「いくつか緊張している感触がありますが御自身ではどう感じますか?」

 

 

 

さて治療院に来るかたのなかには自分の身体を感じる〈体性感覚〉が弱いケースが一定数あります

その場合tは〈痛み〉は感じても〈こり〉を感じにくいので「私の肩ってこってますか?」という質問がくる理由が理解できます

 

 

しかし施術を受けている方は姿勢や動作の分析に対する反応から体性感覚は一般的なレベル

 

施術の前半で主訴(右足関節内側の痛み)と姿勢分析から影響が大きいと思われる〈右腰方形筋〉〈左外腹斜筋〉〈右後脛骨筋〉の緊張を解消

 

その施術による変化も感じ取れていて「右脚にしっかり乗れていて(右)足首の真ん中に体重が通ってすごく軽いです!」というフィードバック

 

そんな前提があったので〈御自身ではどう感じますか?〉という質問で自分の肩に意識を向けていただく意図がありました

 

 

 

ここで〈自分の肩に意識を向けていただく意図〉について説明

 

そもそも肩の凝りや痛みを解消するのは患者さまが寝ていても取り組むことができます

わざわざ〈自分の肩に意識を向けていただく〉理由は〈身体の使い方改善〉をねらっています

 

肩がこっている

肩の上のほう山でいう峰の部分がこっている

肩の峰の真ん中あたりに固い部分がある

固い部分を圧されると腕の方まで響く

 

肩に意識を向けることで情報が具体的になります

その情報から患者様自身の身体との付き合い方が変化するわけです

 

 

自分は疲労しているのか

自分は体に力がはいっているのか

動くときに不自然な身体の使い方をしていないか

 

これらを改善するには自分自身で気が付く必要があります

それを習得する過程で第三者のサポートを利用することがあっても最終的には自分自身で感じる必要があります

 

 

これが『こってますか?』という質問に私が違和感を覚える理由

 

第三者から「こってますよ」と指摘されなければ自分の身体が〈こっている状態〉と認識できない状態は生物として正常とは思えないわけです

 

現代日本では自分の身体を感じる〈体性感覚〉をそれほど意識しなくても日常生活を送ることができます

その結果として鈍麻している〈体性感覚〉に意識を向けるアプローチは自分の身体を感じる感覚を向上

 

自分で身体を意識できることで適切な力の使い方を調整できるようになるわけです

 

 

 

さて「私の肩ってこってますか?」という質問に対して
私の返答「いくつか緊張している感触がありますが御自身ではどう感じますか?」に戻ります

 

フィードバックは「私は自分の状態を知りたいんです…」でした

私が直感的に返したのは「もし『肩はそれほどこってないですよ』って言ったら肩のことは考えなくなりますよね?」でした

 

 

そう応えたあとに考えると…

「いまの場所 自分でもストレッチしたほうがいいですか?」

「私のからだ固いですか?」

「私くらい(状態が)ひどい人っていますか?」

 

今回の施術をするなかで同じような質問が部位は異なるものの繰り返されていました

 

 

そこで頭に浮かんだのは〈診断して欲しい〉ということ

これは私の考える〈健康な身体〉と方向性が異なることで気が付くのに時間がかかりました

 

 

私の施術で基本としているキーワードは〈身体を上手に使えるようにする〉

 

車の運転で例えると…

「そこでブレーキ」

「そのスピードじゃカーブ曲がり切れないよ!」

「上り坂だからアクセルもう少し踏んで」

 

同乗者からそんな指示を受けながら運転するのは不自然です

場合によっては同乗者がいなければ運転ができない状態

 

車ならまだしも誰かのアドバイス=診断を受けなければ〈自分の身体〉を適切に使えないのは正しいゴールではないように感じます

そんな背景から私はクライアントの意識を自分自身の身体に向けることが基本的なスタンスとしています

 

 

クライアントが到達するゴールを考えれば私の考えも悪くはないと思います

しかし実際に〈治療院〉に足を運ぶ方には第三者に自分の状態を判断してもらう〈診断〉に対するニーズはあります

 

 

私もそれなりに〈診断〉に対する需要は意識していたつもりです

 

右腕に痛みがあるケースでは肩甲骨周辺の緊張が神経を圧迫していることを棘下筋のアプローチによる主訴の再現と解剖学的な説明

 

患者さまが坐骨神経痛と思い込んでいたケースでは内側ハムストリングスの癒着をリリースすることによる主訴の解消と説明

 

今回のケースでも重心ラインを整えることで患部にかかる負担軽減と解剖学的な説明

 

 

施術による主訴の解消と根拠そこから考えられるセルフケアや日常生活のアドバイス

そこまで含めて〈治療〉という考え

 

しかしもう少し〈診断〉に対する幅を広げることが時代に合わせることになるように思えます

ご縁あって足を運んだかたが「来てよかった」と感じることを物差しにしなければ治療院は続かないとおもいます

 

 

ちなみに今回は一通りの施術が終わると

 

「・・・すごく体が軽くないですか!?」

「パッセってこんな感じ??」

「なんだかすごいです! これこのまま続きますか?」

  ・・・と喜んでいただけたようです

 

その状態を保つ方法は大きく分けて2つ

 

1.施術など第三者のサポートを受ける
2.自分の身体の使い方を楽しみながら試行錯誤する

 

 

どちらが正解というものではないと思います

そのときの状況で1と2の選択を使い分けることで効率的に身体との付き合い方を身に着けることができます

 

しかし現状では1しか選択肢がないことが多いのではないでしょうか

その気になって探せば〈ボディワーク〉などのキーワードで身体に対する関わり方をみつけることは難しくないと思います