とある国の軍隊に入隊した隊見習い十数名が合宿へと赴いたのは
文字通り白い砂浜に煌く海が見渡す限り広がる美しい南国だった
バスから降りた女性隊員も普段の訓練服ではなく麦藁帽子を被った女の子らしい格好をしていた
「一ヶ月トイレには行けないからな、そのつもりで」
と着いて早々注意事項を掻い摘んで話す長官
勿論それは普段使っているようなトイレには行けないという意味で
ここにはトイレはおろかお風呂も水道すらも無かった
そして棒に糸が付いた程度の釣竿を渡され
隊員達は海に入れられる
二列に列を成して膝程まで海水に浸るのを確認すると長官は
「なんでもいいから魚が釣れるまでは戻ってくるな」
そう言ってバスに乗り込むと今ほど来た道を戻って行った
小さくなったバスから透き通る海へと視線を向ける
浅瀬には一匹も魚の姿が見当たらない
「あんた、もう少し沖へ行きなさいよ」
女性隊員が先頭に立っていた男子隊員へ半ば命令口調で言った
おずおずと前へ出る男子隊員
しかしお腹まで海水に浸ると彼の体に痺れる程度の電流が走った
海中に目をやると50センチ程もあるピラニアのような魚が海草の合間に身を隠し
海への侵入者を自身の体から放つ電流によって食い止めていた
ここで隊員達は自らに課せられた指令の難易度を思い知らされる
照りつける太陽の下で海に浸っていない半身から水分を噴出させながら
魚のいない浅瀬でエサも付いていない糸を垂らして獲物を待つ
少しでも沖へ出れば先ほどの放電するピラニアが待ち構えている
彼らは海中に潜みひたすら人の気配に神経を尖らせていた
そうしてじゃれつくように海中に垂らされた糸に勢い良く喰いつく
竿の重みを感じた女隊員が強く糸を引き獲物を海中から引き摺り出そうとするが
勿論釣られてやる気はない
糸を食い千切ると再び海草の隙間へと戻って行った
その時背後から現れた女隊員の父親がざばざばと海へ入ってきた
彼はイルカの姿をしていて
黒々とした魚体からは人間の足が生えており
ヒレには甘豆と書いてあった
そしてどこかの女芸人を彷彿とさせる
「まめよ~あまあめっ」
というフレーズをひたすら繰り返すのであった