朝焼けの中を地に足が着いていないのではないかと思うほど軽い足取りで最寄りの駅を目指す
早起きな百舌たちはいつも通り囀っていたし
丁寧に植えられたビオラも昨日となんら変わらず美しく笑っていた
つま先に当たって跳ねる小石さえもどこか軽快な旋律を奏でているのではないかと思えた
色の褪せきったフェンスの間をくぐると木製の屋根を被った駅の外観が見えてくる
備え付けのカウンターに裏表の無いコインを数枚乗せるとガラス板の向こうから草臥れた切符が返ってきた
たしかに駅員の気配は感じるのだがガラスに光が反射してその姿を視認することはできなかった
閑散とした車内に身を置くと視線を窓の外に投げる
しばらくぼうっとしていたが目的の駅を二、三前にして時計を確認した
始業までにはまだ時間がある
駅から歩いて行ってもきっと間に合うだろう
そんなことを考えているうちに目的の駅に差し掛かったが電車はスピードを緩めようとしない
それどころかあっという間に通り過ぎてしまうではないか
焦燥感に駆られながらも私の脳は次の駅から目的地までのルートを割り出す作業をしていた
ここでふと言いようの無い違和感が体を駆け巡った
例年ならば溶けきれぬ雪が行き場を失って歩道の隅に申し訳なさそうに固まっているこの時期に
寒さどころか上着の重さも感じられない
辺りを見渡せば乗客はみな顔を失っている
天井から吊られたように姿勢を正し真っ直ぐにそれぞれの正面を向き
ただただ電車に揺られていた
気味の悪い空間に閉じ込められ電車は次の駅も当たり前のように通り過ぎさらにはスピードを増している
あぁこのまま途中下車することも許されず終わりの無い旅をするならば宇宙まで連れて行ってはくれないだろうかと思った