悪事ばかり働く三人組がいた。


夜は深く、闇の底に月だけが浮かんでいる。

その光に照らされて、はじめてここが墓地だとわかった。石の列が規則正しく並び、名も読めない文字を抱えて黙っている。


蝋燭に火を点すと、炎は風もないのに不安定に揺れた。

二人の男がしゃがみ込み、墓前に置かれた小銭を拾いはじめる。指先に垂らした蝋で、金属を器用に絡め取っていく。音を立てないためのやり方だ。

それを、私は少し離れたところから見ていた。


二人が“仕事”に出ているあいだに、私は残った一人を始末した。

そうしなければならない気がした。


仕事を終えた男たちは、夜空へ跳び上がった。

重力を忘れたように、高く、高く。街はみるみる小さくなり、灯りはほとんど見えない。


「ほら、みんな寝ている」


男の声は、星のない空に吸い込まれた。


再び降り立ったのは、アジトの屋上だった。

闇に足をつけた瞬間、リーダー格の男が立ち止まり、周囲を見回した。何かがおかしい、と空気が告げている。


そのころ私は、ベッドの上にいた。

気配を感じ、ゆっくりと目を開ける。


ズボンのポケットに片手を突っ込んだ男が、私の足元に立っている。

薄暗い部屋の中で、刃物だけが冷たく光った。


私は指を揃え、銃の形をつくる。

「ばん。お終い」

そこにないはずのものを、あるように仄めかした。


強がってはいたが、体は鉛のように重かった。眠気が骨まで染み込んでいて、逃げることも、立ち上がることもできない。


「今日のところは、両成敗でいいじゃない」


だめ元で言った言葉が、闇に落ちる。


そのとき、私は気づいた。

男の顔が、見えない。


目を凝らす。

黒いタンクトップから覗く細い首。その先が、途中で途切れている。頭が、ない。


「ひっく、ひっく」


顔の無い男から、声が漏れる。


次の瞬間、胸のあたりが波打ち、そこに大きな顔が浮かび上がった。

見覚えのある、面のような顔だ。


隣に寝ていたもう一人の男が目を覚まし、闇の中で叫ぶ。


「こいつ、カオナシになりかけてる!」


その声に引きずられるように、私は無理やり瞼をこじ開けた。


夕べ干した洗濯物の、黒いタンクトップが、

壁際でこちらを見ていた。