私が覚えているのは、昨夜起こった出来事のほんの一部で、全てを思い出すことは出来ないだろうが、断片的な記憶を辿ってみるとする。

 

絵の具で塗ったような紫の空に、絵本に出てくるような梟が妖艶な夜を演出する。森の中を進むと、巨大組織のアジトが電飾を纏いながら佇んでいた。

目的地を観取した私は本部から送られてきた地図の入った指令書を丸めると、インカムのボリュームを落とした。

私たちのチームは四人編成で、敵のアジトへはいつも通り難なく侵入できた。最短で任務を遂行する為に、今回は四方から侵入し、中枢部で落ち合う作戦だ。

私はすぐにシステム室に侵入する。巨大モニターには監視カメラから飛ばされてきた幾つもの映像が映し出されており、それを三人の男たちが事務的に眺めていた。私は彼らを少しの間天井から見ていたが、タイミングを見計らって三人ほぼ同時に仕留める事に成功した。

システム室を出ると、敵と接戦している仲間を見付けた。後ろ姿から川上だとすぐに分かった。川上は、戦闘で銃を使わない。私はその場から狙いを定めると、敵の腹部に銃弾をねじ込んだ。川上から体が離れた所で、もう一度引き金を引く。今度は左胸部に命中した。彼女は私を見据えたまま息を引き取った。私の心にまた一つ黒く、重いものが沈んだ気がしたが、立ち止まっている時間はない。川上を連れて先を急ぐ。

少し進んだところで我が隊の増田が流血戦を繰り広げていた。だが、銃を使用した痕跡は見当たらなかった。両者共、発砲に抵抗があるようだった。私はすぐに応戦体制に入り、敵を仕留められる位置に着くと、引き金を引いた。弾はやはり敵の腹部に吸い込まれた。一度で急所に命中しないところが悪い癖のようだ。決して相手を苦しませたい訳ではないのに。そして、二度目の銃弾を送る。頭部を貫かれた女の子は、まだ二十代前半だろうか。黒髪を靡かせて床に倒れた。彼女もまた、最期まで私から目を逸らすことはなかった。

彼女は自らの夢の為、この組織に属していた。いつかテレビか何かで見た、彼女を応援する者の姿、声援が自然と想起された。私は思ってはいけないことを思った。なぜ彼女の夢を絶たねばならなかったのかと。私はなぜこんなことをしているのかと。

私たちはお互い、上層部の命に従っていただけで、闘う理由も分からぬまま敵対していたのかもしれない。

 

何か大事なものから目を背け、それでも任務遂行を目指す。

私たちは栗原のいる中枢部へ向かうのであった…。