夕日が氷の山に半分隠れてオレンジの光が乱反射していた

私とオレンジ色の氷山の間には湖ほどの小さな海が広がり

その海もまたオレンジ色に染まっていた

私は思わずカメラを向けると何度かシャッターを切った

目の前に聳え立つ大きな山はクリスタルかガラスで出来ているのではないかと思うほどキラキラと輝いていた

しかし望遠でズームにしてみると氷山だと思っていた山はペットボトルとアルミ缶で出来た作り物の山だった

山の中腹には新たなペットボトルを運んできたショベルカーが山をまた少し大きくしていた

 

ほどなくして日は完全に沈み 目の前にあった海は芝生に変わっていた

天井にひっついた星を見て 先ほどの夕日も今出ている月もプロジェクターに映された映像だと気が付いた

私は作り物の芝の上で作り物の夜空や山を眺めていた

 

目の前を偽物の羊が横切る

視線を近くに戻すと いつの間にかサーカスのテントが張られていた

白と赤の縞模様のテントの傍には 大きなキャラメルの箱が一つと 大きなマッチ箱が一つ

キャラメルの方の箱がゆっくりと開き 中で寝ていた男が箱から出てきた

彼はピエロの姿になる途中なのか 白粉を叩いた真っ白な顔と真っ白な服を着ていた

彼は私の方を向くと

「私の首の骨を折りなさい さもなくば私はあなたを殺してしまう」

と言って私に掴み掛かってきた

もちろん首の骨なんて折りたくなかったけれど 刃物を出してきたのが視界に入ったので

彼の足を払い芝の上に仰向けにさせると 十センチ程の高さの鉄棒が丁度彼の首のところに現れたので 梃子の原理でポキっと折った

それはお菓子を折るように簡単だった

 

安堵したのも束の間 いつの間にかマッチの箱から出てきた男が背後に立っていて両足首を掴まれて身動きがとれなくなった

 

芝の上に横たわったままのキャラメルの男がずっとこちらを見ている

 

大きな声を出して助けを呼びたいのに声が出ない

ようやく振り絞った「助けてぇ」という自分の声で目を覚ました

 

今起こった恐ろしい出来事も偽物だったと分かり

ベッドから出ていた両足を布団に仕舞うと 再び偽物の世界へ戻った