安全だと妄信していた自宅は、知らぬ間に侵略されていた。
目を覚ますと横に夫の姿はなく、ベッドには一人分の抜け殻と寝ぼけ眼の私が横たわっているだけだった。窓から差し込む日差しがいつもより明るかったので、寝坊を瞬間的に判断して慌ててベッドを飛び降りた。時間が気になるのに、家のどこにも時計が見当たらない。
ふと、このあたり一帯が何かに音を吸い込まれているのではないかと思うほど静かだということに気が付いた。脳内で秒針が動く音がカチ、カチ、と響く。
フローリングが水溜まりのように波打ち、湧いて出たように夫が現れた。いや、夫の皮を被った何かが現れた。胴体の部分が銀河系でできている。目を凝らすと銀河系の奥に黒いスーツの集団が見えた。夫は手招きすると、私をその集団に取り込もうとしているようだった。
そこに入ってはいけないような気がして、家を飛び出す。自分の靴から発せられる足音がフィルターを被ったように遠くで聞こえた。どこまで行ってもやはり無音だ。人の気配すら感じられない。
どの道を通ろうが必死で走ろうが、夫は追ってきた。
例のごとく夢の中では早く走れないのですぐに追いつかれてしまう。捕まれば先ほど見た闇の組織に飲み込まれてしまうことは避けられない。振り返るとすぐそこまで迫っている夫。とうとう足がもつれ、尻もちをついてしまった。
あぁ、もう駄目だ。そう思った時、夫は私の前で止まった。再び銀河系の中の集団が見える。
彼らは朝早くから夜遅くまで、また休日も働くブラック企業に勤める残業推奨派の社員たちだった。
定時退社を諦めたくない気持ちで目をこじ開けると、夫が自宅でリモートワークをしている。という夢をみた。
アラームを止めたら、私は今日も定時に会社に行く。