青々とした葉を付けた大きな木々が見渡す限り密集して生えていた。
少し高度を上げようと頭で考えるか考えないかのうちに、ふわりと体が上昇し視点が滑らかに移動する。どこまでも続いている森を上空から見下ろすと、川の流れている部分と小道の通る部分だけ樹木の支配を逃れていたが、それ以外は力強い緑色が広がっていた。
目をつぶって雲一つない青空と緑の交わる地平線をいつまでも感じていたいと思ったが、萎んだ風船のように体がゆっくりと下降し始めたので、力を抜いて高度を落とすと背の高い木の頭に足が届くほどのところで止まった。
肌にまとわりつく暑く湿った空気のせいで、先ほど森と呼んだ木々の塊はジャングルと呼ぶ方がしっくりくる気がした。
そんな熱帯樹林の中で巨大なゴキブリや空飛ぶダンゴムシたちが蠢いている。彼らは皆腹を上にしていた。ひっくり返っていても、大きさや形が常識から外れていようとも、それがゴキブリやダンゴムシだと迷わずに認識することができた。
ここにいる生物たちは皆、実験的に退化させられ、もうすぐ恐竜の生きた中生代がこの森の中で再現されそうなところまできていた。その技術は驚くべきものだったが、その過程で仰向けでしか生活できない体になってしまっていた。
姿の見えないイタチの鳴き声が、悲しく響いた。
私は浮いたままの体を急速度で後ろに下げると、入り口にでかでかと建てられたアーチ型の看板を見付けた。どこかの国の言葉で「昔ランド」と書かれているのを見て、心無い人が科学者や生物学者と組んで金儲けのために神に逆らったのだと思った。
きっとこのジャングルのような森自体も人工的に造られた施設なのだろう。
天を仰ぐ豚の蹄をぼんやりと眺める。息苦しく感じるのは高めに設定されたこの森の温度と湿度のせいだろうか、などと頭の片隅で考えていると、目の前を大きなダンゴムシがゆっくりと仰向けに飛んでいった。トンボの羽に似た半透明の薄く美しい四枚の羽を、規則的に動かしながら横切っていく。二メートルほどある体の中心に、自然界に似つかわしくないものが見えた。やや丸まった腹の上にベッドやバケツが置かれていたのだ。湾曲した体のせいで、荷を積んだ小舟のようだった。よく見るとバケツに貼られた黄色いガムテープに、マジックでE-3という文字が書かれている。
他の生物に目を移すと、どの動物や昆虫の腹にも施設に必要なものや従業員が使用していそうな備品が置かれていた。
私の頭の中に一つの仮説が浮かんだ。
ここにある全てが人工的に造られており、至って健全なテーマパークなのではないか。もしそうならまんまと騙された私は良い客のうちの一人でしかない。
枝についた無数の葉が、私の中でペンキの緑に変わった。
仰向けの彼らの中にはネジが仕込まれているのではないかと、耳を澄まして機械仕掛けの音を探す。
遠くから、眠る前にセットしたアラーム音が聞こえた。