会議室の窓がわずかに開いていた。
ビルの六階、鍵の閉まった扉を使わず、彼らは風のように忍び込んできた。
まるで猫の目のように、暗闇の中で光を反射させながら。
遺体は冷たく、まるでこの部屋にいた時間すら否定しているかのようだった。
机の上には印鑑と資料。
生きていた証と、死を証明するものが混在していた。
青いジャージを着た三人以上の影が、無言のままそれらを手際よく集める。
小さな印鑑も、分厚い紙束も、すべてひとつ残らずバイクの後部に積み込まれていった。
その一連の動きに迷いはない。計画され、繰り返された動作だった。
遠くでパトカーのサイレンが鳴る。
廃ビルの壁に反射したその音が、かえって夜の静寂を際立たせた。
やがて捨てられたアジトへ、捜査員たちが乗り込んでくる。
埃の積もった棚、乾きかけたペン、冷めきったカップ。
何もかもが空虚で、それでも“そこにいた気配”だけが残されていた。
私はただ、その光景を見つめていた。
ガラス越しの世界のように、手を伸ばしても何も触れられなかった。
あの夜、青いジャージを着ていた三人の女。
今思えば、私は彼女たちを知っていた気がする。
もしかすると四人目の影は、私自身でもあったことに、まだ気づいていないのかもしれない。
猫の目は、見たいものだけを映す。