今回はお手持ちのPC上でRPN電卓をエミュレーションするフリーソフトをご紹介します。
大変長らくお付き合いいただきましたこのシリーズも今回でとりあえず最終回です。
EMU48
EMU48というフリーソフトを使用するとHP-48GXなどをウインドウズなどでエミュレーションすることが出来ます。
これは48GXなどのROMイメージそのままを使用して動作するため、48GXと同じものがPCに再現されます。
ROMイメージはかつてHPから公開されたものが一緒にダウンロード可能です。
(1)必要ファイルの用意
次のhpcalc.orgのサイトから、EMU48本体とROMイメージを入手します。
http://www.hpcalc.org/hp48/pc/emulators/
ダウンロードするファイルは次の2つです。
emu48v148setup.zip
gxrom-r.zip
このうち、EMU48はバージョンによってファイル名が違いますが最新のものをダウンロードして構いません。
また、ROMイメージはとりあえず最新のRバージョンにしておきます。
(2)EMU48本体のインストール
まずは2つのダウンロードした圧縮ファイルを解凍しておきます。
つづいて、EMU48の圧縮ファイルを解凍して出来たセットアップファイルを立ち上げてインストールを開始します。
インストールが開始されると、まずライセンスの確認画面が出ます。
続いて、インストール構成を選択する画面が表示されますが、ここはとりあえず「Full」を選択しておきましょう。
最後にインストールフォルダの入力画面になりますが、デフォルトでよければこのままで構いません。
以上でエミュレーター本体のインストールは完了です。
(3)ROMイメージの変換
エミュレーターをインストールしただけでは動作しません。次に本物のROMイメージをインストールしていきます。
方法はEMU48.txtというドキュメントに書いてありますが、英語なので以下、方法をご説明します。
①まずは解凍したROMイメージをエミュレーターをインストールしたフォルダ(デフォルトは"C:\Program Files\HP-Emulators\Emu48")に移動します。
②つづいてコマンドプロンプトを起動します。スタートメニューの「ファイル名を指定して実行」をクリックしてコマンドプロンプトを「ファイルおよびディレクトリ名補完機能の有効」にして立ち上げます。(名前のところにcmd /f:onと入れます)
③コマンドプロンプトが立ち上がりますが、ここでフォルダをファイルがインストールされているフォルダに移動します。(cd "C:\Program Files\HP-Emulators\Emu48"と打ち込みますが、面倒くさいのでcd まで(スペースまで)入力したらEMUをインストールしたウインドウに戻り、フォルダを一つ上に戻してからEMUのフォルダをコマンドプロンプトにドラッグ&ドロップするとパス名が自動で入力されます)
④フォルダが移動されたら、ROMイメージの変換を開始します。(convert gxrom-r ROM.48Gと打つ)
⑤変換が完了したら、exitと打ってコマンドプロンプトを終了します。
さあ、ROMイメージの変換も終わりました。以上でインストールは全て完了です。
(4)エミュレーターの起動
デフォルトだとスタートメニューとデスクトップにEMU48のショートカットが出来ていますので、これで起動します。
起動するとスキンを選択する画面が出ますので、好きなのを選びます。起動後にスキンを変えたい場合はツールバーのView-Change KML Scriptから変えられます。
このままだと、終了させるたびに状態の保存先を聞いてきて面倒なので、ツールバーのFile-SettingsでAutomatically Save Filesにチェックを入れておくとよいでしょう。
(5)エミュレーターを使う1 「行列の計算」
EMU48はエミュレーターといっても本物のROMイメージを使用するものですから、本物と全く同じ動作をします。
しかも、本物のように遅くはありません。ウインドウズに付属の電卓代わりに使えば大変便利。(だと思います)
では、早速、前回TI-89
のときの連立方程式を解いてみましょう。
本物のときは行列入力画面を使用しましたが、今回は直接入力してみましょう。
[[5,7][3,9]]と押してENTERで入力されます。
この状態で1/xボタンを押すと逆行列が得られます。
つづいて[[64][72]]と押して(ENTERは押さない)
×を押すと掛け算が行われ、結果が得られます。
(6)エミュレーターを使う2 「複利計算(TVM)」
次にHP-17BII
のときにやった複利計算(元利均等計算)をやってみましょう。
このTVMの機能は48GXにもSOLVEメニューの中に組み込まれています。
まずは「右曲がり矢印」ボタンを押してから7(SOLVE)を押します。
するとSOLVEメニューが立ち上がります。
ここで、Solve financeを選ぶとTVMになりますので、求めるものを除き数字を入れてから、求めるところを反転表示にしてファンクションキーに割り当てられたSOLVEを押します。
なお、最初にメニューを開くときに「右曲がり矢印」を押しましたが、このときに「左曲がり矢印」を使うとメニュー形式ではなく、ファンクションキーで操作するタイプのSOLVEになります。(このときに最後に答えを知るときは「左曲がり矢印」を押してから知りたい変数のファンクションキーを押します)
(最後に)
このエミュレーターは実物より高速に、全く同じことが出来ますので、私はPCで作業するときには良く使います。(じつは実物はほとんど使いません)
でも、今回、記事のために再インストールして感じたのは、インストールが少し面倒なことと、いきなり48GXを使うと挫折してしまうのではないかという懸念。
48GXは遅いことを除くと、とても良いエンジニアの道具になるものなのですが、入力はRPNだけ、機能の呼び出しは今回ご紹介のとおり行列入力も、SOLVEも複数の方法があります。その辺が面倒に感じられ、敬遠されたりすると思いますが、数値解を求める道具としては最強
の部類です。
3ヶ月くらい毎日使っていると、多分便利に使えるようになると思いますので、お試しを。
なお、マニュアルは次のヒューレットパッカードのサイトから入手できます。(英語ですが、本物にも日本語のマニュアルは無かったと思います)
http://h10025.www1.hp.com/ewfrf/wc/product?product=58443&lc=en&cc=us&dlc=en&lang=en&cc=us