前回 からだいぶ経過してしまいましたが、電卓についてご紹介していきます。
 大学でHPの電卓と出会って以降、私はアメリカのヒューレットパッカード(HP)社の電卓を愛用しています。
 今回からそのHPの電卓と、同じくアメリカのメーカーのテキサスインスツルメンツ(TI)社の電卓を実機を交えてご紹介していきます。


 ここに紹介する電卓は、そのへんで売っている電卓と違い、どれも本当に数を大切に考えている電卓です。当然、電源を切っても、計算結果がクリアされたりしません。
 電源などの基本的なところから、より高度なところでも正直、日本製よりはるかに上を行っていると思います。(品質を除く)ガーン
 やるなぁ!、米国エンジニア。グッド!


1.HPとTIの違い
 この2社の電卓、似て非なるものです。表面的には次のような違いがあります。
(1)入力方式の違い
 HPは低価格路線以外は基本的にRPN入力というちょっと変わった入力方式です。別に難しいものではないのですが、電卓の操作は体が覚えてしまっているので、慣れるまでは足し算すら手間取るかもしれません。ただし、3ヶ月ぐらい我慢して使っていると、物凄く効率的に計算できるようになります。これはぜひ、買って試してください。
 対するTIは基本的に数式どおり入力、普通の表示の電卓もありますが、基本的には自然表記数式で表示されます。
(2)キータッチの違い
 伝統的にHPはクリック感が大きいです。対するTIはペタペタという感じで国産の電卓に近いです。
 なお、それぞれ低価格路線の製品は他社OEMのものが多いため、すべてのシリーズがそういうわけではありませんので。
(3)求める答えの違い
 これはシリーズによってもキャラクターが違うのですが、基本的にはHPは数値解を求める方向、TIは解析解を出来るだけ求めるような方向性を持っているような気がします。
 この部分が決定的な違いです。エンジニアにHPが好まれるのはこの辺だと思います。


2.各機種のご紹介
 ここの感想は独断ですし、私の使い方の範囲でのものですのであしからず。
(1)HP-35s

まったり☆エンジニア LIFE”

 グラフ電卓でないRPN入力の関数電卓は現在、このHP-35sのみです。その意味からありがたい存在といえます。
 これが発売される前は、製造中止となったHP-32sIIにかなりのプレミア¥がついたりしたそうです。電卓は道具であり、エンジニアにとっては消耗品でもあるので、そのような状況は好ましくありません。
 さて、この35s、従来の32sIIからの進化点は複素数を手軽に扱えるようになったところなどでしょうか。
 たとえば、次のとおり1つの数値として複素数を扱えます。3i3

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 この状態で極座標表示に切り替えるとこのとおり、4.2θ45°

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 表示桁数については以前より使いにくいような気がしますが、我慢してください。
 この機能、私には測量などに便利な機能です。複素数(座標)とベクトル(トラバース)を三角関数を意識せずにシームレスに行き来できる上、演算も出来てしまう。うふふラブラブ

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 また、「RPN入力はちょっと」という方のために普通の電卓のような入力方式に切り替えることも出来ます。このALGEBRAICモード、私は使いませんが、だれかに「電卓ちょっと貸して」などといわれたときには便利かもしれません。

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 さて、HPの電卓にはSOLVEというちょっと便利な機能がついています。私はRPNと同等にHP電卓の魅力の一つだと思っています。
 これは数式を入れてしまえば、どの変数についてもプログラムなどすることなく解くことが出来る機能です。
 たとえば簡単な例ですが、次のような数式を考えます。

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 この式について、Yを常に答えとして求める場合はこの数式のままプログラムすればよいのですが、Y(とあと1つの変数)を入力してAまたはBを求める場合は式を変形して、それぞれプログラムを作らねばなりません。
 ですが、SOLVE機能を使えば、最初の式を入れておくだけで、解く時にどの変数を解くのか聞いてきますので、いちいち数式を変形するとかプログラムを入力するなどということが必要ありません。
 違う数式での例ですが、こんな感じに聞いてくるので、

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 入力してやると最後はこんな感じに答えが出ます。

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 実はこのSOLVE機能、35sとか32sとかの関数電卓に付いているものより17Bなどの金融電卓についているもののほうが使いやすいのですが。
 過剰な期待をしなければ、便利な機能です。