『でぃすぺる』

今村 昌弘 著 文芸春秋

 

 

『屍人荘の殺人』の著者が仕掛ける

ジュブナイル×オカルト×本格ミステリ

誰も読んだことがない怪異と謎

 

 

【内容】

小学校6年生の木島祐介(ユースケ)が主人公で、「おれ」の一人称で物語が進んでいく。

夏休みが終わり、卒業まであと半年。

ユースケは〝掲示係〟に立候補して、オカルト趣味の壁新聞の制作に意欲を燃やした。

ユースケのほか学級委員長だった波多野沙月(サツキ)と、どの係にも入りきれなかった転校生の畑美奈(ミナ)も加わって3人で新聞づくりをすることになった。

 

サツキの従姉のマリ姉は一年前の奥神祭りの前日、運動公園のグラウンドで死んでいた

自殺の可能性はなく、マリ姉を殺した犯人は雪が積もる前に凶器を持ち去っていて、積もった雪には第一発見者以外の足跡は残されていなかった。犯人はまだ捕まっていない

 

サツキはマリ姉の遺品のパソコンの中に『奥郷町の七不思議』のファイルを見つける。

それは一見地元に伝わる怪談話を集めたもののようだったが、どれも微妙に変更が加えられている。しかも、『七不思議』のはずなのに六つしかない

なぜ肝心の七つ目の不思議話がないのか、それは7つ目の話を知るとその人物は死ぬと言われているのだ。

そして3人は、この謎を解こうと調査を始める。

 

でぃすぺる

 

 

面白いという評判の小説。まだ文庫になっていない。

 

まず物語が始まるタイトルの裏に、「でぃすぺる」の意味が書いてある。

dispelとは、追い散らす、(心配などを)払い去る、(闇などを)晴らす、一掃する

この言葉を頭に入れながら読み進める。

 

小学6年生が活躍するストーリーなので、ジュブナイル小説とも言える。

ユースケ「おれ」で語られる物語は、6年生とは思えない大人じみた語りとなっていて、

ハードボイルドタッチに違和感があったが、気にしないようにした。

オカルトや怪談めいた話は、この年頃の子にとっては、とても興味を呼び起こされるものなので、特にユースケの興奮ぶりはよくわかる。

 

『奥郷町の七不思議』とは

① Sトンネルの同乗者

② 永遠の命研究所

③ 三笹通下の首あり地蔵

④ 自殺ダムの子ども

⑤ 山姥村

⑥ 井戸の家

 

そして7番目が分からない。

その7番目の話を知るとその人は死ぬという。

でも、この3人の子どもたちは7番目の話を知りたいと思う。

上記内容にあるように、サツキの従姉のマリ姉の死が、この七不思議とどのような関係があるのが、子どもたちの調査は本格的で読者も引き込まれる。

 

さて、どういう展開になっていくのか楽しみだ。

 

読了。

この著者の『屍人荘の殺人』を読んだときに感じたことと同じ感想を抱いた。

つまり荒唐無稽であること。

オカルトかミステリかとの問いもうなずける。

確かにページターナーで、結末を知りたくて読み進める本ではあった。

それを気に入った読者は高評価になると思う。

わたしはというと、好みではないかな…

小学6年生が主人公で、会話や発想が大人顔負けで不自然に思う。

ただ3人の個性がしっかりと描かれていて、これは評価できる。

流れが都合よくこじつけていくのも気になる。

また、第一章から五章まであるが、章が終わるまで文章が途切れないのは、一息つく区切りがないので、ちょっとしんどい。

今日はこの辺でやめようと思っても、区切りがないので中途半端なところで中断することになる。

 

ただ再度言いますが、読む手が止まらない本であることは保証します。

興味のある方は読んでみてね。